第百八十三話 忘れられた塔と鋼鉄の番人
一行は夜の闇に紛れ王城の敷地を目指した
ヴァロリア城は巨大だ
未来的な城壁が月明かりを反射し威圧感を放つ
白銀の騎士団が厳重な警備を敷いていた
「…あそこだわ」
リリスが指さしたのは城壁の最も古い一角
そこだけ周囲の近代的な建築から取り残されたように
古びた石造りの塔がひっそりと佇んでいた
忘れられた『星見の塔』
ロデリックの塔とは違う
もっと古く崩れかけた遺跡
しかし情報屋の言う通りそこだけ警備の結界が明らかに薄い
「行くぞ!」
ガガルが先陣を切る
一行は影から影へと音もなく移動し塔の麓へたどり着いた
入り口は分厚い鉄の扉で閉ざされていたが
ガガルが力を込めると錆びついた蝶番が悲鳴を上げて壊れた
塔の内部は埃っぽくひどく荒廃していた
螺旋階段が上へと続いているが所々崩落している
壁にはかつて星図が描かれていたであろうフレスコ画の残骸が見えた
「マジでボロボロじゃん…ユウマっち大丈夫かな」
アイがユウマを案じ呟く
「静かに」
リリスが制止した
「気配がするわ上からよ」
カツンカツン
金属質な足音が螺旋階段の上から聞こえてくる
警備兵か?
いや違うもっと規則的で冷たい音だ
現れたのは一体のオートマタだった
全身を鈍色の金属で覆われ赤い単眼が不気味に光っている
旧時代の警備用ゴーレムだろうか
「侵入者発見排除スル」
オートマタが合成音声を発し腕を変形させた
鋭い刃が飛び出す
「チッ面倒ね!」
リリスが闇の魔法を放とうとした瞬間
ガガルが前に飛び出した
「ここは俺に任せろ! ユウマ様救出の露払いだ!」
ガガルの戦斧とオートマタの刃が激突する
火花が散る
金属ゴーレムは頑丈だガガルの怪力でも一撃では砕けない
「アイ殿援護を!」
「OK!」
アイが矢をつがえる狙うは赤い単眼だ
しかしオートマタの動きは正確無比だった
ガガルの攻撃をいなしながらアイの矢を的確に弾き返す
その動きには一切の無駄がない
「まずい強いぞこいつ!」
ガガルが押し込まれ始めた
「お下がりください!」
アリアが前に出る
「聖なる光よこの機械の魂なき身体を砕きたまえ!」
彼女が放ったのは浄化ではなく純粋な破魔の光
オートマタの装甲に光が当たり激しく火花を散らす
動きが一瞬鈍る
その隙をアイは見逃さなかった
「そこっ!」
放たれた矢は一直線にオートマタの単眼へと吸い込まれた!
ギャリッ!
鈍い音と共に単眼が砕け散る
オートマタは短いノイズを発すると完全に動きを止めた
「ふぅ…危なかったぜ」
ガガルが息をつく
「ナイスアイっち!」
アイは得意げにピースサインを作った
「急ぎましょう先はまだ長そうですわ」
アリアが促す
一行は動かなくなったオートマタを乗り越えさらに上階を目指す
ユウマの安否は
そしてこの塔の先に何が待つのか
彼らの危険な潜入作戦はまだ始まったばかりだった




