第百八十二話 裏路地の情報屋と城への道
ヴァロリアの裏社会
そこは未来都市の輝かしい光が届かない場所だった
狭く入り組んだ路地薄汚れた建物怪しげな薬草や魔道具を売る露店
行き交う人々の目もどこか荒んでいる
「…こっちよ」
リリスは慣れた様子で迷宮のような路地を進む
彼女の顔を知る者もいるのか時折闇の中から会釈する影もあった
やがて一行はひときわ怪しげな酒場の前にたどり着いた
看板には『囁きの酒杯』とだけ記されている
リリスは躊躇なくその扉を開けた
酒場の中は紫煙と安い酒の匂いで満ちていた
客は一癖も二癖もありそうな情報屋や賞金稼ぎばかり
彼らは見慣れぬ一行特にアリアの放つ清らかな気配に一瞬警戒の色を見せた
しかしリリスの顔を見るとすぐに興味を失ったように視線を逸らした
「あらリリス様お久しぶりね」
カウンターの奥から現れたのは猫のような耳と尻尾を持つ獣人の女主人だった
その目は鋭く全てを見透かすようだ
「ちょっと情報を聞きに来たわクロエ」
リリスはカウンターに金貨を数枚置いた
「王城の様子はどう? 特にあの『鳳凰の間』あたり」
女主人のクロエは金貨を素早くしまうと低い声で答えた
「…キナ臭いよリリス様騎士団の動きが異常だ鳳凰の間は完全に封鎖されてる高位の魔術師たちが何人も詰めてるって噂さ」
彼女は声をさらに潜めた
「…ウィルナス王ご執心の『客人』何かあったらしいね下手に首を突っ込まない方がいい」
「(ユウマ様…!)」
アリアが息を呑む
「やっぱりね」
リリスはため息をついた
「城への侵入経路は? 地下? それとも屋上から?」
クロエは首を横に振った
「今のヴァロリア城は鉄壁だよ空も地下も最新の魔術結界で守られてる正面突破は不可能さ」
彼女は少し考え込むと付け加えた
「…ただ一つだけ抜け道があるとしたら…古い『星見の塔』の遺跡かなあそこだけはなぜか結界が薄いんだ」
「星見の塔…!」
ガガルの目が光る
情報を得た一行は酒場を後にした
鳳凰の間は封鎖されているユウマの安否は不明
侵入経路は古い遺跡のみ
「行くしかないわね」
リリスは決意を固めた
一行は再びヴァロリアの闇へと足を踏み出す
目指すは王城の片隅忘れられた遺跡『星見の塔』
そこがユウマへと続く唯一の道だと信じて
彼らの危険な潜入作戦が今始まろうとしていた




