第百七十八話 祭りの後始末と四者四様の言い訳
北の古の森
そこには静寂があった
ただしそれは平和な静寂ではない
完全な破壊の後の一時的な沈黙だ
地面には巨大なクレーターがいくつも空き
木々は薙ぎ倒され一部は黒焦げになっている
そして森中に散らばるのは夥しい数のグリフォンの羽毛となぜか粉々になった骨の欠片
風のシルフィードと炎のサラマンダーによるオーバーキルの爪痕はあまりにも酷かった
「…………」
「…………」
ガガルとアイはその惨状を前にただ呆然と立ち尽くしていた
自分たちが苦戦した相手とはいえこれはやりすぎだ
「ふんまあこんなもんね」
シルフィードは満足げに腕を組む
「あたしの風の前では鳥なんてただの綿毛よ」
「はっ! あたしの炎の方が効率的だったでしょ!」
サラマンダーも負けじと胸を張る
「一瞬で灰にしてやったわよ!」
二柱の精霊は自分たちの力の誇示に夢中で後片付けのことなど全く考えていない
「…いやあのさ」
アイがおそるおそる口を開いた
「これ…どうすんの? このメチャクチャな状況」
「あ?」
シルフィードとサラマンダーが同時にアイを睨む
「片付け? なんであたしたちが?」
「戦いに勝ったんだから終わりでしょ?」
彼女たちにとって後始末という概念は存在しないらしい
「そういうわけにはいかん!」
ガガルが叫んだ
「このままでは村の者たちに我らが強大すぎる力を見せつけてしまう! 証拠は隠滅せねば!」
彼の思考回路はどこかズレている
「よし!」
ガガルは名案を思いついたとばかりに拳を打った
「この惨状全てを巨大な穴を掘って埋めてしまえば完璧だ!」
彼は戦斧ではなく自らの拳を地面に叩きつけた!
ドゴオオオオオン!!!
凄まじい轟音と共に地面が陥没し深さ数十メートルの巨大なクレーターが出現した!土砂が舞い上がり周囲の木々がさらに薙ぎ倒される
「ちょ! 穴デカすぎだって! 埋める土どこにあんのよ!?」
アイがツッコむ
「だったら吹き飛ばせばいいじゃない!」
シルフィードが指を鳴らす
「あたしの風でこのゴミぜーんぶ森の奥まで吹き飛ばしてあげるわ!」
彼女が風を操ると散らばっていた羽毛や骨の欠片灰などが竜巻のように舞い上がった!
しかし風向きが悪かったのかそれらは森の奥ではなく村の方角へと猛スピードで飛んでいく!
「あー! 村にゴミ飛ばしてどーすんのよ!」
アイが絶叫する
「はっ! そんなチマチマしたことやってるから!」
サラマンダーが炎を両手に宿す
「あたしの炎で全部燃やし尽くせば一瞬で終わるでしょ!」
彼女が巨大な火球を放とうとした瞬間
「「「やめろおおおおおっ!!!」」」
ガガルとアイの必死の制止が間に合った
これ以上被害を拡大させるわけにはいかない
結局クレーターは埋まらずゴミは村の方へ飛び散り森の一部は燃えかけた
後片付けどころか状況はさらに悪化しただけだった
遠くの村からは村人たちが恐る恐るこちらを窺っているのが見えた
「…なんか…森が大変なことになってる…」
「…神々の…怒りか…?」
ガガルとアイは顔を見合わせた
「…よしアイ殿!」
「…うんガガルっち!」
二人は何事もなかったかのように森に背を向け村へと歩き出した
そして村人たちに満面の笑みで報告した
「グリフォンは退治したぞ!」
「あとは森の精霊さんがキレイにしといてくれるって!」
もちろんそんな事実は一切ない
彼らは全ての責任を森の精霊(?)に押し付けそそくさとその場を立ち去ったのだった
ユウマ不在のパーティはやはりどこか締まらない




