表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神と魔神のギフトより勘違い特性が最強のスキルだった件~神魔覆滅させるもの~  作者: まん丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

176/193

第百七十六話 聖魔の調和と、閉じられた傷痕


瘴気の魔物を退け、残る脅威は目の前で不気味に揺らめく魔界への裂け目のみ。

鉱山の最深部は、依然として異界の気配に満ちていた。

「さて、と」

リリスは疲れたように息をつき、裂け目を睨んだ。

「こいつをどうやって塞いだものかしらね。ただの穴じゃないわ。無理に閉じようとすれば、下手をすればこの鉱山ごと吹き飛びかねない」

「聖なる力で空間の歪みを修復できるかもしれません」

アリアが杖を構え、裂け目に向かって浄化の光を放った。

しかし、光は裂け目の闇に飲み込まれるだけで、何の反応もない。それどころか、裂け目がわずかに広がり、より濃密な瘴気が溢れ出す気配すらあった。

「ほらね。言わんこっちゃない」

リリスもまた、闇の魔力を裂け目に向けて放つ。闇は闇を打ち消すかと思われたが、これもまた、裂け目の持つ根源的な混沌の前には無力だった。

「…どうすれば…」

アリアが焦りの色を見せる。

「…さっきの、アレよ」

リリスが、ふと呟いた。

「…あんたが歌って、私が縛った、アレじゃないわよ。最後の、浄化の時」

「…?」

「あんたの光と、私の闇。ぶつかり合って、消滅するはずだった。でも、そうならなかった」

リリスは、アリアの目を真っ直ぐに見据えた。

「…あの時、二つの力が、拮抗して、一つの『場』を作り出した。…もしかしたら、あれと同じことを、この裂け目にできれば…」

それは、あまりにも危険な賭けだった。聖と魔の力を、寸分の狂いもなく調和させ、空間の傷口そのものを『縫合』する。理論上は可能かもしれないが、一歩間違えれば、先ほど以上の大惨事を引き起こしかねない。

しかし、アリアは、リリスの提案に、静かに頷いた。

「…分かりました。やってみましょう。…賢者様なら、きっと、こうおっしゃるはずです。『やってみなきゃ、分からない』と」

アリアの口から出た、あまりにもユウマらしい、無責任な(しかし、核心を突いた)言葉に、リリスは、思わず吹き出した。

「…ふふ。本当に、あんたたち、あの子に毒されてるわね」

二人は、再び、向き合った。

今度は、敵意ではなく、絶対的な信頼を、互いの瞳に映して。

「―――闇よ、淀め。混沌を、その内に、封じ込めよ」

リリスが、静かに詠唱を始める。彼女の足元から、深淵の闇が広がり、裂け目から溢れ出す瘴気の奔流を、まるでダムのように、堰き止め始めた。裂け目の拡大が、ぴたりと止まる。

「―――光よ、紡げ。裂かれたる理を、その輝きで、繋ぎ合わせよ」

アリアもまた、祈りを捧げる。彼女の杖から放たれたのは、破壊の光ではない。傷を癒やし、失われたものを修復する、創造の光。その光が、裂け目の縁に、まるで金継ぎのように、ゆっくりと、浸透していく。

闇が、混沌を抑え込み、光が、秩序を、再構築する。

聖と魔。二つの、対極にある力が、互いを打ち消すことなく、互いを補い合いながら、一つの、奇跡を、織り成していく。

裂け目が、ゆっくりと、その口を、閉じていく。

禍々しい魔界の風景が、徐々に、見えなくなっていく。

鉱山全体が、安堵のため息をついているかのようだった。

そして、裂け目が、完全に、塞がる、まさに、その寸前。

闇に閉ざされる、最後の、一瞬の隙間から。

コロリ。

何か、小さな、黒いものが、滑り落ちてきた。

それは、まるで、磨かれた黒曜石のような、小さな、石だった。何の変哲もないように見えるが、リリスだけが、その石が放つ、微かな、しかし、無視できない、異質な気配を、感じ取っていた。

―――完全に、裂け目は、塞がった。

鉱山の最深部に、静寂が戻った。

瘴気の気配は、完全に消え失せ、代わりに、本来の、鉱石と土の匂いが、満ちている。

「…やった…!」

「…ええ…!」

リリスとアリアは、互いに顔を見合わせ、安堵の笑みを浮かべた。疲労困憊だったが、確かな達成感が、そこにはあった。

リリスは、何気ない素振りで、足元に転がっていた、その黒い石を、そっと拾い上げ、懐にしまい込んだ。アリアは、そのことに気づいていないようだった。

「さあ、帰りましょうか」

リリスが言う。

「あの、お人好しの賢者様が、心配してるでしょうしね」

二人は、もと来た道を、戻り始めた。

鉱山の闇の中、二つの、対極の光は、確かに、一つになっていた。

しかし、リリスの懐に隠された、小さな黒い石は、これから始まる、新たなる波乱の、予兆なのかもしれなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ