第百六十四話 幻獣都市散策と、自由すぎる理
リリスの衝撃的な告白の夜が明けた。
夢幻都市アヴァロンの宿屋の一室。ユウマは、いつもより少し早く目を覚ました。隣では、チビすけが穏やかな虹色の光を放っている。昨夜の重い話が、嘘のように静かな朝だった。
他の仲間たちも、ユウマのただならぬ雰囲気を察してか、どこかぎこちない様子で朝食のテーブルについていた。
「…さて」
最初に口を開いたのは、ユウマだった。
「…行こうか」
「え?」
「『空間の宝玉』を探しに」
ユウマは、静かに、しかし、はっきりと告げた。その瞳には、迷いはなかった。
「フェンリルさんは言ってた。『この街の一部となり、宝玉自身に認められる必要がある』って。…だったら、まずは、この街を知ることからだ」
その、あまりにも、真っ当で、前向きな提案に、仲間たちは、一瞬、驚きの表情を浮かべた。
「おお! ユウマ様! さすがですぞ!」
ガガルが、真っ先に、立ち上がった。
「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず! まずは、この、奇妙な街の、地理と、文化を、把握する! これぞ、攻略の、第一歩!」
彼は、完全に、ダンジョン探索のノリだった。
「ええ! 街の、人々(?)と、交流し、彼らの、心に寄り添うことで、きっと、宝玉へと続く、道が、開けるはずですわ!」
アリアは、すでに、聖なる、布教活動を、始める気、満々だった。
「てか、街ブラ!? やったー! 美味しいお店とか、あるかなー!?」
アイは、完全に、観光気分だった。
リリスだけが、静かに、ユウマの顔を、見つめていた。
(…吹っ切れた、みたいね)
彼女は、小さく、微笑んだ。
こうして、ユウマ一行の、本格的な、アヴァロン探索が、始まった。
しかし、そこは、幻獣界。常識など、通用しない。
まず、一行は、広場のような場所に出た。そこでは、様々な種族が、露店を開き、賑わいを見せている。
「おお! 活気があるな!」
ガガルが、目を輝かせた、その瞬間。
彼の**『活気』**という、思考に、周囲の空間が、反応した!
露店の商品が、ひとりでに、踊りだし、地面から、陽気な音楽を奏でる、キノコが生え、空には、祝福するかのように、紙吹雪(ただし、生きた蝶々)が舞い始めた!
広場は、一瞬にして、カーニバルのような、お祭り騒ぎに!
「な、なんだこれは!?」
ガガルが、困惑する。
次に、アリアが、道端で、怪我をして、うずくまっている、小さな幻獣を見つけた。
「まあ、お可哀想に…」
彼女が、**『癒やし』**の祈りを込めて、手をかざした、瞬間。
幻獣の傷は、癒えた。しかし、それだけでは、終わらない。
彼女の、あまりにも、強力な、慈愛の心が、暴走したのか、幻獣は、ムキムキの、マッチョな姿へと、超回復してしまった!
「(…き、筋肉…?)」
アリアは、自分の、祈りの結果に、絶句していた。
「あー! あそこのカフェ、ちょーオシャレじゃん!」
アイが、水晶でできた、カフェを指さし、**『可愛い!』**と、強く、思った、瞬間。
カフェの、壁や、テーブルが、ピンク色の、フリルと、リボンで、過剰に、装飾され始め、店員たちが、強制的に、メイド服(しかも、ミニスカート)に、着替えさせられていた!
「(…カワイイ…のか…?)」
アイも、自分の、センスに、少し、疑問を感じ始めていた。
「(…やばい…この街、やっぱり、やばい…!)」
ユウマは、仲間たちの、思考が、次々と、現実を、カオスに、書き換えていく、光景を目の当たりにして、戦慄していた。
(俺も、気をつけないと…! 下手なこと、考えたら…!)
彼は、必死に、心を、『無』にしようとした。
しかし、その時、彼の、空腹を、刺激する、いい匂いが、漂ってきた。
近くの屋台で、串焼きが、売られている。
(…あ、うまそう…)
彼が、そう思った、瞬間。
屋台の、串焼きが、ひとりでに、宙に浮き上がり、ユウマの、口元へと、親切に、飛んできたのだ! しかも、絶妙な、焼き加減で!
「「「「「……………」」」」」
ユウマと、仲間たちの、動きが、止まった。
屋台の、店主(一つ目のタコ)が、怒りの形相で、こちらを、睨んでいる。
「おい! 勝手に、商品、持ってくんじゃねえ!」
ユウマは、口元で、ホバリングしている、熱々の、串焼きを、見つめながら。
静かに、思った。
(…この街、便利かもしれない…)
彼の、順応性の高さが、図らずも、この、混沌とした世界で、生き抜くための、鍵となるのかもしれない。
もちろん、その、便利さが、さらなる、面倒事を、引き寄せる、原因になることも、忘れずに。
一行の、アヴァロン探索は、始まったばかりだった。




