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女神と魔神のギフトより勘違い特性が最強のスキルだった件~神魔覆滅させるもの~  作者: まん丸


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第百六十二話 三者の対話と、蘇りし魔姫


幻獣界 夢幻都市アヴァロン 綿毛の宿屋の一室

夜は更け、仲間たちはそれぞれの寝床で眠りについていた。

ユウマだけが眠れずにいた。黒い羊皮紙の内容が頭から離れない。

彼はそっと部屋を抜け出し、宿屋の屋上へと出た。紫とオレンジ色の不思議な空の下で、混沌とした街の灯りが遠くに見える。腕の中のチビすけだけが穏やかな光を放っていた。

「…眠れないのかしら?」

静かな声と共にリリスが隣に現れた。その手には温かいミルクの入ったマグカップが二つ。

「リリスさん…」

ユウマはマグカップを受け取った。温かい。

「あんたも大概お人好しよね。あんなもの読んだ後で平気でいられる方がおかしいわ」

リリスは夜空を見上げながら言った。

ユウマは黙っていた。そして意を決して尋ねた。

「…あの羊皮紙に書かれていたこと…本当なんですか? 魔王に娘がいて…魔神に殺されたって…」

リリスは答えなかった。ただ静かにミルクを飲んでいる。

その時、ユウマの胸元で冥王の宝珠が静かに光った。

『…魔神だと?』エンマの冷徹な声が響く。『リリス、貴様まさかあの時の…いや世界の理に反する邪神どものことか? 秩序を乱す不確定要素め、詳細を報告しろ』

エンマの介入にリリスは初めて苛立ったような表情を見せた。

「…あんたは黙ってなさいよ委員長。盗み聞きとは悪趣味ね」

『監視対象の不穏な会話を記録するのは保護観察指導員の当然の責務である!』

エンマは全く悪びれない。

そのやり取りを見てユウマは確信した。リリスは何かを知っている。

「教えてくださいリリスさん」ユウマは真っ直ぐにリリスを見つめた。「貴方は…何を知ってるんですか? あの羊皮紙に書かれた娘って…もしかして…」

リリスは深くため息をついた。そして諦めたように笑った。

「…聡い子は嫌いよ」

彼女はマグカップを置くとユウマに向き直った。その瞳にはいつもの妖艶さではなく、深い悲しみと怒りの色が宿っていた。

「そうよ…あの羊皮紙に書かれていたのは私のこと」

「「!?」」

ユウマとエンマ(宝珠)の気配が同時に揺らぐ。

「私は魔王の娘…そして」リリスは自嘲するように続けた。「…ある魔神の愛人だった女よ」

『なっ…!? 魔王の娘が魔神の…!? 風紀の乱れ極まれり! 断じて認められん!』

エンマが絶叫する。

「うるさいって言ってんでしょ!」リリスはエンマを一喝するとユウマに語り始めた。

「父…魔王はね、あまりにも強大すぎた。そして孤独だったわ。私はそんな父に反発して、家を出てある魔神の元へ行ったの。若かったのよ…利用されてるなんて気づきもしなかった」

彼女の顔が苦痛に歪む。

「そして、羊皮紙の通り、私は一度死んだわ…あの魔神の手によってね。裏切られて、簡単に捨てられたのよ」

「羊皮紙にあった『娘を蘇らせ』というのは…」ユウマがおそるおそる尋ねる。

「…それも、本当よ」リリスは虚ろな目で言った。「父は、私を失った絶望の中で、全てを投げ打って禁忌に手を出した。…盟友である龍王バハムートに力の半分を託し、残る力の全てを使って、精霊王ファーンに懇願したのよ」

『ファーンだと!? あの、うっかり者の…!』エンマが驚愕の声を上げる。

「ええ」リリスは頷いた。「生命を司る、あのじいさんだけが、死んだ魂を、繋ぎ止める術を知っていたから。…父は、自らの魔王としての存在と引き換えに、私の蘇生を願った。ファーンは、その願いを聞き入れ…そして」

リリスは、ユウマの腕の中のチビすけを見た。その目には、複雑な感情が揺らめいていた。

「私の魂を、蘇らせる過程で、父が注ぎ込んだ、過剰な生命力の一部…それが、核となり、ファーンが管理していた『生命の宝玉』に宿ったのよ。…あの宝玉が、意思を持つようになったのは、その時から。だから、あのじいさん、貴方が持ってた時に、ただの落とし物だって、勘違いしたのよ。本当は、私の、蘇生の副産物…言わば、片割れみたいなものだから」

『…なんと…! 生命の宝玉の起源が、そのような…! これは、記録になかったぞ…!』エンマが、学術的な興奮を隠せない様子で呟いている。

「だからね、ユウマ」リリスは初めてユウマの目を真っ直ぐに見据えた。その瞳には涙が浮かんでいた。

「私はあんたを利用してるだけじゃない。あんたが『器』だからじゃない」

「あんたを見てると昔の自分を思い出すのよ…何も知らずにただ流されて…でも心のどこかで何かを求めてる」

「そして何より…」彼女はチビすけにそっと触れた。「…この子を放っておけない。私の一部であり、父が遺した、最後の欠片でもあるから」

それはリリスの偽らざる本心だった。

ユウマは言葉もなかった。ただ目の前の女性が背負ってきたあまりにも重い運命に胸が締め付けられるようだった。

彼は何も言わずにそっとリリスの肩に手を置いた。言葉は必要なかった。

『…ふむ』冥王の宝珠からエンマの静かな声がした。『…理解不能な感情の奔流だ…だが記録はしておく価値がありそうだ…特級案件の背景情報として、極めて重要である…』彼は監視対象への新たな興味を見出したようだった。

幻獣界の、不思議な月が、二人と一つの宝玉を静かに照らしていた。

彼らの旅はただの宝探しではない。それぞれの過去と、世界の歪み、そして家族の絆を取り戻すための、複雑な物語へと深く深く進んでいくのだった。

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