表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神と魔神のギフトより勘違い特性が最強のスキルだった件~神魔覆滅させるもの~  作者: まん丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

147/193

第百四十七話 女王の逆鱗と、暴走する母性


「…あの、大丈夫ですか? 目、充血してますけど…」

ユウマの、あまりにも純粋で、あまりにも間の抜けた、心配の言葉。

それは、魔性の女王リビドーラの、数百年にわたるプライドを、木っ端微塵に粉砕するには、十分すぎた。

ピキィィィィン!

彼女の完璧な笑顔が、完全に崩れ落ちた。

その美しい顔は、屈辱と、そして、生まれて初めて味わうレベルの、激しい怒りに、歪んでいた。

「…よくも…」

リビドーラの、甘い声が、地を這うような、低い響きへと変わる。

「よくも、この私を…**ただのメス**扱いしてくれたわねぇぇぇっ!!」

ゴオオオオオオッ!!

彼女の身体から、紫黒色の、禍々しいオーラが、奔流となって、溢れ出した!

それは、もはや、男を惑わす、甘美な魔力ではない。相手の、魂ごと、快楽の地獄へと、引きずり込む、サキュバスクイーンとしての、本質的な、力の解放だった。

闘技場全体が、その、圧倒的な、色欲の瘴気に、当てられ、観客席からは、苦悶とも、歓喜ともつかない、喘ぎ声が、漏れ聞こえ始めた。

「まずい…! リビドーラが、キレた!」

貴賓席で、アイが、顔を青ざめさせる。

「あれは、ただの魅了じゃない! 相手の、精神力を、根こそぎ吸い取る、『魂喰らい(ソウルイーター)』の魔眼よ!」

「ユウマ様!」

ガガルとアリアも、身構える。

闘技場の中央で、ユウマは、その、禍々しいオーラを、真正面から、浴びていた。

全身の力が、抜けていくような、感覚。

頭の中に、甘美で、しかし、堕落的な、幻覚が、ちらつき始める。

(…やばい…!)

ユウマは、必死に、意識を保とうとした。

しかし、相手は、七大公が誇る、チャンプ。格が、違いすぎた。

彼の、なけなしの抵抗は、巨大な波の前に、砂の城のように、崩れ去ろうとしていた。

(だめだ…飲まれる…!)

ユウマの、意識が、遠のきかけた、その、瞬間。

きゅる?

腕の中の、チビすけが、不安げに、鳴いた。

そして、小さな、宝玉の身体を、ユウマの胸に、すり、と寄せてきた。

まるで、「パパ、怖いよ」とでも、言うかのように。

その、小さな、温もり。

その、絶対的な、信頼。

それが、ユウマの、消えかかっていた、意識の、最後の、砦となった。

(…そうだ…俺は…)

(こいつを、守らなきゃ、いけないんだ…!)

父親としての、本能的な、守護欲。

それが、ユウマの、心の中で、爆発した。

ユウマの**『我が子を守る』という、絶対的な、父性**。

それが、リビドーラの**『相手を支配する』という、絶対的な、色欲**と、正面から、衝突した。

【ユウマの『父性(守護)』が、リビドーラの『色欲(支配)』によって、『母性(慈愛)』の概念へと、強制的に、反転・昇華される】

世界が、三度、軋んだ。

リビドーラの、紫黒のオーラが、まるで、浄化されるかのように、その色を、失っていく。

代わりに、彼女の身体から、溢れ出したのは、温かく、柔らかで、全てを、包み込むような、母性の光だった。

「…あれ…?」

リビドーラは、自分の、身に、何が、起きているのか、理解できなかった。

目の前の、ひ弱な、人間の男を、快楽の、どん底に、叩き落とそうとしていたはずなのに。

なぜか、心が、温かい、気持ちで、満たされていく。

そして、彼女の、視線が、ユウマの腕の中の、チビすけに、吸い寄せられた。

その、無垢で、か弱く、しかし、懸命に、輝こうとする、小さな、命の光。

(…かわいい…)

リビドーラの、心の中に、これまで、感じたことのない、愛おしいという、感情が、泉のように、湧き上がってきた。

(…守らなきゃ…)

(この子を、私が、守ってあげなきゃ…!)

彼女の、瞳から、殺意も、色欲も、完全に、消え失せていた。

そこにあったのは、ただ、ひたすらに、目の前の、赤子を、慈しむ、母親の、眼差しだけだった。

「…坊や…」

リビドーラは、ふらふらと、ユウマに、歩み寄ると、その腕の中から、チビすけを、そっと、抱き上げようとした。

「さあ、おいで…。お母さんが、抱っこしてあげるからね…」

「……………はい?」

ユウマは、完全に、フリーズしていた。

闘技場も、完全に、静まり返っていた。

誰もが、目の前で、起こっている、あまりにも、シュールで、あまりにも、理解不能な、光景に、言葉を、失っていた。

魔性の女王が、敵であるはずの、赤子を、あやそうとしているのだ。

貴賓席で、リリスは、もはや、笑うこともできず、ただ、呆然と、その光景を、見つめていた。

(…母性…? あの、リビドーラが…? 嘘でしょ…?)

ユウマは、ただ、思った。

(…なんか、俺、また、やらかした…?)

審判役の魔物が、恐る恐る、宣告した。

「…え、えーっと…。リビドーラ選手、戦闘不能…? よ、よって、勝者! 『沈黙の賢者』、ユーーーマァァァッ!!」

その、あまりにも、締まらない、勝利宣言。

しかし、観客席からは、もはや、歓声すら、上がらなかった。

誰もが、この、あまりにも、奇妙な、勝利の、意味を、理解できずにいた。

ユウマは、目の前で、チビすけを、あやしながら、「よしよし、いい子でちゅねー」などと、完全に、母親モードに入ってしまった、元・魔性の女王を、見ながら。

自分が、これから、どうすればいいのか、全く、分からず。

ただ、静かに、途方に暮れるだけであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ