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女神と魔神のギフトより勘違い特性が最強のスキルだった件~神魔覆滅させるもの~  作者: まん丸


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第百四十五話 魅了対策と、心の盾


控え室は、奇妙な熱狂と、ユウマ一人の、深い、深い、自己嫌悪に包まれていた。

仲間たちは、ユウマの「師匠越え」という、衝撃的な勝利に、興奮冷めやらぬ様子だったが、当のユウマは、自分が、健太郎を、倒してしまったという事実に、打ちのめされていた。

手の中にある、古文書の一部――『力の宝玉』への手がかりも、今の彼には、ただの、重荷でしかなかった。

「…次の相手は、サキュバスクイーン、か」

沈黙を破ったのは、リリスだった。彼女は、楽しそうに、唇を舐めた。

「魅了の魔眼…。厄介ねえ。どんな、屈強な戦士でも、あの瞳に見つめられたら、一瞬で、骨抜きにされちゃうわよ」

その言葉に、仲間たちの顔が、引き締まる。

「魅了だと!?」

ガガルが、目を剥いた。

「我が主君の、その、崇高なる、精神を、汚そうというのか! 断じて、許せん!」

彼は、ユウマの前に、仁王立ちになった。

「ユウマ様! ご安心を! 魅了対策ならば、このガガルに、お任せあれ!」

「え?」

「魅了とは、すなわち、魅力の、ぶつかり合い! 相手の、色香に、打ち勝つ、圧倒的な、オスとしての、魅力を、身につければよいのです!」

ガガルは、そう言うと、おもむろに、服を、脱ぎ捨て、その、緑色の、筋骨隆々の、肉体を、誇示するように、奇妙な、ポージングを、取り始めた。

「さあ、ユウマ様! この、完璧な、筋肉美! これこそが、あらゆる、誘惑を、跳ね返す、鋼の、精神を、育むのです!」

「(…目が、腐る…)」

ユウマは、全力で、目を逸らした。

「お待ちください、ガガルさん」

アリアが、聖母のような、しかし、どこか、ズレた、微笑みで、割って入った。

「魅了とは、心の、隙間に、入り込む、邪悪な、囁き。肉体を、鍛えるよりも、その、聖なる、魂を、清めることこそが、真の、防御となりますわ」

彼女は、ユウマの手を取り、再び、聖水を、満たした、銀のたらいを、用意した。

「さあ、賢者様。わたくしと、共に、祈りを捧げ、心の、一点の、曇りもなき、無垢なる、境地を、目指しましょう…」

「(…無理だって、絶対…)」

ユウマは、アリアの、あまりにも、純粋すぎる、瞳から、そっと、目を逸らした。

「ちょ、二人とも、マジで、ズレすぎだって!」

アイが、呆れたように、割って入った。

「魅了なんてさー、要は、『慣れ』だって! イケメンとか、美女とか、見慣れてれば、どーってことないの!」

彼女は、どこからか、持ち出してきた、怪しげな、水晶板を、ユウマの目の前に、突きつけた。

「これ! 魔界で、大流行中の、恋愛シミュレーションゲーム、『ドキドキ☆魔界プリンス』! これで、イケメン耐性、つけとけば、サキュバスなんて、余裕っしょ!」

水晶板には、キラキラとした、美形の、魔族たちが、甘いセリフを、囁いていた。

「(…何の、耐性だよ…)」

ユウマは、もはや、ツッコむ、気力もなかった。

肉体派、精神派、ゲーム攻略派。

三者三様の、あまりにも、的外れな、魅了対策。

ユウマは、ただ、その場で、頭を抱えて、蹲りたかった。

その、カオスな、状況を、楽しそうに、眺めていた、リリスが、ふと、ユウマの腕の中の、チビすけに、目を留めた。

宝玉は、この、騒々しい、状況が、不安なのか、あるいは、ユウマの、ストレスに、反応しているのか、いつもより、少しだけ、光が、揺らいで見えた。

「…あら」

リリスは、何かを、思いついたように、ユウマに、囁いた。

「…ねえ、ユウマ。あんた、父親なんでしょ? …だったら、父親らしいこと、してみたら?」

「え?」

「その、赤ん坊よ」と、リリスは、チビすけを、指さした。「あんたが、不安定だと、この子も、不安になる。…この子を、安心させることだけを、考えてみなさいな。…もしかしたら、それが、一番の、対策に、なるかもしれないわよ?」

それは、いつもの、からかいとは、少し違う、どこか、真理を、突いたような、言葉だった。

ユウマは、ハッとして、腕の中の、チビすけを、見つめた。

(…俺が、不安だと、こいつも…)

彼は、深く、息を吸い込み、意識を、集中させた。

仲間たちの、騒々しい声も、トーナメントへの、恐怖も、一旦、全てを、忘れる。

ただ、腕の中の、この、小さな、温かい光が、安心して、眠れるように。

穏やかで、優しくて、揺るぎない、気持ち。

父として、子を、守る、ただ、その、想いだけを。

すると、不思議なことが、起こった。

ユウマの、心が、凪いでいくのに、合わせて、チビすけの、宝玉の光もまた、穏やかで、力強い、虹色の輝きを、取り戻していく。

そして、その光が、まるで、柔らかな、ヴェールのように、ユウマの、心全体を、優しく、包み込んでいくのを、感じた。

外部からの、どんな、刺激も、雑念も、その、穏やかな光の前では、意味をなさない。

ユウマは、気づいた。

チビすけを、守ろうとする、その、純粋な、想いこそが、何よりも、強固な、『心の盾』となるのだと。

彼は、ゆっくりと、顔を上げた。

その瞳には、もう、迷いはなかった。

「…大丈夫だ」

彼は、仲間たちに、静かに、告げた。

「俺は、戦える」

その、穏やかだが、揺るぎない、覚悟。

仲間たちは、言葉を失い、ただ、その、成長を、見守るしかなかった。

次の試合の、ゴングが、鳴ろうとしていた。

ユウマは、チビすけを、胸に、抱きしめ、静かに、闘技場へと、歩き出した。

待ち受けるのは、魅了の魔眼を持つ、サキュバスクイーン。

しかし、彼の心は、もはや、揺らいではいなかった。

守るべきものが、ある。ただ、それだけで、人は、強くなれるのだから。

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