第百三十五話 四大精霊大乱闘と賢者の胃痛
書庫はもはや戦場だった
般若の面が破壊の真理を叫び
ノームが静かな創造の尊さを説き
シルフィードが風紀委員長気取りで二人を叱りつける
まさに地獄絵図
「うるさい風紀委員!」
「なってないハリボテ!」
『破壊こそ至高!』
三者の声がぶつかり合い魔力と土くれと風が渦を巻く
ユウマは部屋の隅で耳を塞ぎガタガタ震えていた
(もうやだ帰りたい…)
その時だった
ザアアアア……。
床に溜まっていた水(ユウマが召喚)が光り輝き始めた
そしてその水面から優雅に美しい女性が姿を現した
水の精霊ウンディーネだった
「まあ皆様お静かになさいませここは聖なる書庫ですのに…あら?」
彼女はノームが作った可愛らしい土人形に気づき目を細めた
「なんて愛らしいのでしょうノーム貴女の創造はやはり素晴らしいわ」
ウンディーネは完全にノーム派閥だった
「なんだと水の女! あたしの風の方が美しいに決まってるでしょ!」
シルフィードがウンディーネに突っかかる
『創造ナド下ラヌ! 全テハ無ニ還ルノミ!』
般若の面が二人まとめてディスり始める
ボオオオオオッ!!
さらに天井が溶け落ち灼熱の炎と共に火の精霊サラマンダーが降ってきた
「うっさいわねアンタたち! あたしのライバル(ユウマ)の修行の邪魔すんじゃないわよ!」
彼女は般若の面を睨みつけた
「てかアンタ何よその偉そうな態度! あたしと勝負しなさい!」
風 vs 水 vs 土 vs 火 vs 怒りの化身(般若)
四大精霊プラスワンの大乱闘が始まった!
書庫の本棚が薙ぎ倒され貴重な書物が宙を舞う
「おお…! なんという壮観! これぞ神々の戦い!」
ガガルだけが目を輝かせている
「主サマこれどーすんの!? マジやばいって!」
アイはユウマに泣きつく
アリアは「皆様おやめくださいませー!」と叫びながら聖なる光(物理)で止めようとして火花を散らしている
リリスは腹を抱えて笑い転げていた
健太郎だけが冷静にメモを取っていた
「各属性の理が顕現し衝突している…ユウマの感情がトリガーとなり精霊界とのチャンネルが開いたままになっているのか…興味深い…だが書庫が…」
彼の顔にもわずかに焦りの色が見える
(もう…もう…限界だあああああっ!!)
ユウマのストレスゲージは完全に振り切れた
彼はただ叫んだ心の底から
「静かにしろおおおおおおおおっ!!」
その瞬間
ユウマの叫びに呼応するように
彼の腕の中のチビすけ(生命の宝玉)と胸元の冥王の宝珠(魂の宝玉)そしてチビすけが吸収した知の宝玉の力が暴走した
ピカアアアアアアアアアッ!!!
虹色の光と灰色の光そして黄金色の光が渦を巻き書庫全体を飲み込んだ
光が収まった時
そこにいたはずの四大精霊と般若の面の姿は綺麗さっぱり消えていた
まるで最初から何もなかったかのように
書庫は完璧なまでに元通りになっていた…いやむしろ前より綺麗になっている
「……………」
残されたのは呆然とするユウマとその仲間たちだけだった
健太郎は静かにメモを閉じた
「…なるほどな『無』に還す力もあるとは…ますます厄介だ」
ユウマは胃を押さえながらその場に崩れ落ちた
(俺の修行…一体なんだったんだ…)
彼の自己分析は世界の理と神話級の存在たちを巻き込み最終的には強制リセットという形で幕を閉じた
魔王継承戦まであとわずかユウマの明日はどっちだ




