第百三十話 理合の剣と三人の強者
「問答無用! その若者から手を離さぬか!」
宮本健太郎の鋭い声が書庫に響く刀身がガガルを捉えていた
「貴様!」
峰打ちとはいえ主君の前で打たれたガガル激昂する
「ユウマ様を愚弄する痴れ者め! 我が斧の錆にしてくれるわ!」
巨大な戦斧が健太郎に振り下ろされる風を切る凄まじい音
しかし健太郎は動じない
迫る斧の軌道を最小限の動きで見切り半身でかわす
そして懐に飛び込み柄頭でガガルの鳩尾を正確に打ち据えた
「ぐっ…!」
巨体がくの字に折れ曲がり膝をつく
「ガガルっち!」
「お下がりなさい!」
アイとアリアが即座に参戦する
アイは俊敏な動きで距離を取り矢筒から三本の矢をつがえた
アリアは胸の前で印を結び聖なる光の槍を練り上げる
「覚悟!」
アリアの放つ光の槍が健太郎を襲う
同時にアイの矢が死角から三方向同時に迫る
さらに膝をついていたガガルが雄叫びと共に再び戦斧を薙ぎ払う
まさに三位一体の猛攻
だが健太郎の目は冷静だった
光の槍はただのエネルギーの流れ
矢は物理法則に従う飛翔体
斧は大振りゆえの隙
それぞれの攻撃の「理」を瞬時に見抜く
健太郎は動く
流水のように流麗に
光の槍を刀の腹で受け流しその勢いで回転
迫る三本の矢を刀身で弾き返す
そしてガガルの薙ぎ払いには深く沈み込み死角へ
全ての攻撃を紙一重でかわし切ったのだ
「な…!?」
「マジ…!?」
「馬鹿な…!」
三人は信じられないものを見る目で硬直する
その一瞬の隙
健太郎は踏み込んだ
まずアリアの手首を正確に打ち印を結べなくする
次にアイの弓を持つ腕の関節を外し矢をつがえなくする
最後にガガルの首筋に再び峰打ちを叩き込み完全に意識を断つ
一連の動きはわずか数秒
まるで舞うような剣捌き
三人の強者は誰一人健太郎に有効打を与えることなく無力化された
「……………」
書庫に静寂が戻る
床には膝をつくアリアとアイそして気を失ったガガル
その中心に静かに刀を納刀する健太郎
「(…なんだ、この人…強すぎる…)」
床で蹲っていたユウマは目の前で起こった圧倒的な光景にただただ戦慄していた
「あらあら…」
書庫の入り口で腕を組んでいたリリスが面白そうに呟いた
「これはまた…とんでもないのが迷い込んできたわね」
彼女だけが健太郎の剣がただの力ではないことを見抜いていた
ユウマの絶望が呼び出したのは単なる強者ではなかった
この混沌とした魔界に「理」という名の秩序をもたらしかねない異次元の剣士だったのだ
物語はさらに予測不能な方向へと加速する




