第百二十八話 修行という名の迷走ロード
リリスに自己分析を勧められたユウマしかし何から手をつければいいのかさっぱり分からない
そんな彼を見かねて仲間たちが立ち上がった
「ユウマ様! まずは肉体から!」
ガガルが目を輝かせユウマを道場のような場所へ連行したそこには巨大なバーベル丸太サンドバッグなど見るからに暑苦しいトレーニング器具が並んでいた
「さあユウマ様! まずはこの千キロバーベルを持ち上げ覇王の肉体を!」
「(死ぬわ!)」
ユウマはガガルに無理やりバーベルの前に立たされるしかし持ち上がるはずがない
(せめてダンベルくらいの重さだったら…)
そう思った瞬間ズンと重かったはずのバーベルがふわりと軽くなった
「え?」
ユウマが拍子抜けして持ち上げるとバーベルは片手でひょいと持ち上がる重さになっていた
「おおおお! ユウマ様! なんという怪力! ベヒーモスの血が騒ぎますぞ!」
ガガル大興奮ユウマはただ困惑するばかり
(なんで軽くなったんだ…? ていうか軽くしすぎた…)
その後もガガルのスパルタ筋トレは続いたがユウマが「辛い」「重い」と思うたびに器具が軽くなったり柔らかくなったりして全くトレーニングにならなかったガガルだけが「我が主君恐るべし!」と勝手に感動していた
次はアリアの番だった
「賢者様心の平穏こそ力の源ですわ」
彼女はユウマを静かな祈りの間へと誘った床には白いクッション香炉からは落ち着く香りが漂っている…はずだった
「聖なる浄化の香りでございます深呼吸して精神を統一いたしましょう」
ユウマがその香りを吸い込んだ瞬間
(うっ…なんか気分悪い…聖なる力とか俺には合わないのか…?)
そう思った途端香炉から出ていた清らかな白い煙がどす黒い怪しげな煙に変わった
「ゲホッゲホッ! な、なんですのこの瘴気は!?」
アリアが慌てる浄化の香りがユウマのネガティブ思考に反応し完全に逆の効果を発揮してしまったのだ
瞑想も試みたがユウマの頭に浮かぶのは「早く帰りたい」「焼き鳥食べたい」「チビすけ可愛い」といった俗世の煩悩ばかりアリアはそんなユウマの背後から後光が差しているのを見て「おお…賢者様は煩悩すらも聖なる光へと昇華されるとは…!」と涙ぐんでいたユウマにはただ頭痛がひどくなっただけだった
最後にアイの番が来た
「やっぱさー最終的には裏ワザっしょ!」
彼女が持ってきたのは胡散臭い魔導書の山だった『一瞬で勝てる! 禁断の概念チート術』『寝てる間にレベルアップ! 夢幻魔導理論』『これを読めば君も救世主! ちょー分かりやすい英雄マニュアル』
「(タイトルだけで地雷臭がすごい…)」
ユウマは嫌々ながらも一番薄い『ちょー分かりやすい英雄マニュアル』を手に取った
パラパラとめくるとそこには
『第一章:まず伝説の剣を抜け!』
『第二章:次に囚われの姫を助けろ!』
『第三章:そして魔王を倒せ!』
とあまりにも雑な内容しか書かれていなかった
(なんだこれ…)
ユウマが本を閉じようとした瞬間本が眩い光を放ち始めた
【チュートリアルクエスト『伝説の剣を探せ!』を開始しますか? YES / NO】
目の前にゲームのようなウィンドウが浮かび上がる
「うわああああ!」
ユウマは本を投げ捨てたどうやら概念誘導で本の内容が具現化しかけたらしい
「やば! 当たり引いたじゃん主サマ! やっぱ才能あんだって!」
アイだけが大喜びしていた
こうしてユウマの修行(?)第一日は終わった
肉体も精神も裏ワザも何一つ身についていない
しかし仲間たちは満足げだった
「ユウマ様はすでに全ての道を極めておられる!」
「我々が教えることなど何もなかったのですわ」
「やっぱ主サマ最強じゃん!」
リリスだけがやれやれと首を振り胸元の冥王の宝珠からはエンマの冷ややかな声が響いた
『…時間の無駄であったな佐藤優馬始末書五枚追加だ』
ユウマはただただ疲労困憊でその場に崩れ落ちた
彼のトーナメントへの道はあまりにも遠く険しい




