第百三話 英雄の帰還と、新たなる誓い
光が、収まった時。
ユウマは、見覚えのある、破壊された、街道の上に、立っていた。
胸には、ガガルの魂が、封じられた、灰色の、『魂縛の宝珠』が、かすかな、温もりを、放っている。
「ユウマ様!」
「主サマ!」
仲間たちが、涙ながらに、駆け寄ってきた。
彼らにとって、ユウマが、冥界に、消えていたのは、ほんの、数分の出来事だったが、その、数分は、永遠にも、感じられた。
「…ガガルさんは…?」
アリアが、おそるおそる、尋ねる。
ユウマは、静かに、ガガルの、冷たくなった、亡骸の元へと、歩み寄った。
そして、教えられた通り、『魂縛の宝珠』を、その、胸の上に、置いた。
「…帰ろう、ガガルさん」
宝珠が、眩い光を放つ。
中に、封じられていた、ガガルの魂が、光の奔流となって、その、肉体へと、注ぎ込まれていく。
両断されていた、身体が、まるで、時間を、巻き戻すかのように、繋がり、傷跡一つなく、再生していく。
やがて、光が収まり、ガガルの、巨大な、緑色の身体が、そこに、横たわっていた。
ぴくり、と、その指が、動く。
そして、ゆっくりと、その瞼が、持ち上がった。
「…………ユウマ、様…?」
「ガガルさん!」
ユウマは、思わず、その、大きな身体に、抱きついた。
ガガルは、ゆっくりと、上半身を起こすと、状況を、理解したように、深く、頷いた。
そして、彼は、ユウマの前に、片膝をつき、これまでで、最も、深く、そして、力強い、忠誠の、誓いを、捧げた。
「我が王よ…。貴方様は、ついに、死の、理すらも、打ち破られた。…この、ガガルの、命、そして、魂。もはや、その、全ては、貴方様のもの。…この、御恩、万死に、値します」
ユウマは、何も、言わなかった。
ただ、黙って、その、誓いを、受け止めた。
仲間たちが、生還を、喜び合う、その、温かい、光景。
しかし、その、裏側で。
ユウマの、胸元には、冥界の王と、繋がる、灰色の、宝珠が、静かに、輝いている。
彼の、平穏を求める、逃避行は、完全に、終わった。
友を、救った、その代償として、彼は、世界の、理そのものに、監視されるという、新たなる、そして、巨大な、枷を、その身に、負ったのだ。
しかし、彼の、瞳には、もはや、恐怖も、絶望もなかった。
そこにあったのは、守るべきものを、見つけた、一人の男の、静かで、しかし、揺るぎない、決意の、光だけだった。
彼の、本当の、物語は、ここから、始まる。




