十方微塵世界(じっぽうみじんせかい)
「ちわ~、宅配で~す」
「はいよ」
受領のハンコを押す。
「ん? 西本願寺京子・・・」
「先輩、それボクのっス!」
こいつ、職場に配送先を指定するなっての。
「お前、西って名字じゃなかったの?」
バツの悪そうなキョン子。
「これはあれだな・・・」
キョン子がびくっとする。
「二つ名だな? 中二病のお前らしく」
「そそ、そうなんですよ! さすが先輩、よく分かりましたね!」
んなわけねーだろ。名家だとは聞いていたが、名門中の名門じゃないか。
「でも先輩の名前もそれ本名なんスか? ずいぶんシンプルですよね」
「わけあって東洋と名乗っているが、真名がちゃんとある」
俺の本名を披露するのは、初めてになるか。
「先輩のは通り名っぽいですね!」
こいつ、年上をおちょくり過ぎだろ。
「お前には教えてやるけど、俺の名字は東別院って言うんだ。家の事情で伏せてるけどな」
キョン子はスネかじりだが、俺はスネに傷があるってとこだな。
「お母さんのほうですよね? その名字」
察しが良いな。
「ああ。親父の名字はとても名乗れないし、東別院も目立ちすぎるから東って称してる」
妙な縁だな、まったく。
(『先輩のお父さんを知ってます』なんて言いたいけど、やっぱり言えないよね・・・)




