008 二度目の結婚式
結婚式は、前回の時とまったく同じように行われた。
二度目ともなれば、あれほど惨めだった思いも薄れ、客観的に見ることが出来る。
父が商会を通して特急で仕立てさせた白のウエディングドレスには、金で縁取った青いリボンが所々に施されていた。
清楚かつ豪華なドレスではあるものの、薄紫の瞳と銀色の髪の私にはまったく似合ってはいない。
まぁ、肌触りは良いから生地は一番上等なものを使っているんでしょうね。
この先、貴族相手にでもドレスを売りつける算段でもしていたのでしょう。
あの時は不釣り合いなドレスとしか思わなかったけど、色さえどうにかなればもう少し似合っていたかもね。
だけど似合っていてもいなくても、どうでもいいわ。
「おお、ぴったりのドレスだな~。ああ、華やかでいい感じだ。さすがに新しいデザインで作らせただけのことはある」
「……ありがとうございます、お父様」
そう、このドレスは私のために作られたわけではない。
むしろその逆。ドレスのために私がいる。
いわば今の私は、生きたマネキン人形というわけ。
一人娘の晴れ舞台ですら、父にとっては商売の道具でしかなかった。
そしておごそかといえば聞こえはいいが、結婚式の飾りつけなど無駄な物はほぼなく、ただドレスが引き立てられるようになっている。
自分が作らせた新しいドレスをただ見せるための、最高の発表会なのだ。
結婚式すら商売の道具にして、男爵家に払ったお金を回収しようとするあたりは、さすがとしか言いようがない。
ただあまりの式の簡素さに、相手方は文句こそ口には出さないものの、顔を真っ赤にさせていた。
なにせ私のドレスも相手のタキシードもこの会場も、みんな父が用意したものだから文句も言えないわよね。
だけど相手方の参列者まで制限してるって、本当に酷いものだわ。
だいたいドレスが主役の結婚式なんて、自分の娘にすることではないでしょう。
向こう側の人たちではなくても、腹立たしい気持ちは分かる。
むしろ、私が一番怒っていいはずなのよね。
だけど前回はただ恥ずかしくて、悲しいだけだった。
式の間もずっとうつむいていて、夫となる人の顔すらまともに見られなかったのよね。
だけど逆に今は怒れるのかと言えば、それもなんだか違う気がする。
そうね。なんていうか、どうでもいいって感じなのよ。
むしろ私にとってはこんな式よりも、この先の方がずっと重要になるから。
私のために用意されていないものなんて、早く終わればいいのよ。
ただいいように、父に扱われるのはバカみたいだから。
「いやぁ、いい式ですなぁ」
「なかなか、生で結婚式を見れることもないですからなぁ」
「ホントですよ。ドレスは動きによって見え方も変わりますし。さすがはダントレット商会。やることが一味違いますな~」
「なになに。みんなよく見て行ってくれ」
本当に何なのかしらね。
父も父なら、他の人も何にも思わないのかしら。
みんな商人って、どこか頭がおかしいんだわ、きっと。
わらわらと集まる商人たちの視線や賞賛の声に、私は何よりも深いため息をついた。




