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白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。  作者: 美杉。(美杉日和。)6/27節約令嬢発売中


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059 今が一番幸せ

 黒い髪に赤い瞳。

 意識を浮上させた私は、目の前のブレイズを見る。


 二回目って、そっか。

 そういうことだったのね。

 あまりに昔過ぎて、すっかり忘れてしまっていたわ。


「ブレイズ様はあの時の地下にいた子だったんですね」

「昔、会っていたってこと?」


 興味津々で食い入るように前のめりになりながら、マリアンヌが声を上げる。

 特段、面白い話でもないのに。

 どんなのを想像しているのかしら。


「子どもの頃、腕試しで入った地下で死にかけたところを助けてもらったんだ」

「すごーい。アンリエッタって、そんなに強かったの?」

「いや、ただ逃げる術だけは叩き込まれていたからですよ」

「でも俺のせいで君は大けがを負ってしまった」

「あー。まぁ、そうかもですね」


 あの時は酷かったなぁ。

 子どもながらにそうした方がいいと判断して、ブレイズを引き渡してしまったものの、怪我は本当に酷いものだった。


 マトモに歩けなくて、家に着いたのは日が暮れた頃。

 心配した使用人たちに見つけてもらえて、おんぶされて帰ったんだっけ。


 当たり前のように父は大激怒していたし。

 ねずみの大量発生のせいだって言っても、始めは自業自得だって言い切って、無視していたし。


 その後、なんとか父に入れ知恵して、治療してもらえたから生き延びたけど、足は動かないわ、感染症を引き起こして高熱は出るわで、散々だったわね。


 しかも国に訴えて治療費も慰謝料もせしめたくせに、休んだ仕事の分は私の給与から天引きしてきたし。


 安定に、あの人は引くほどの悪人よね。


「怪我は治療してもらえたのか?」

「えー、まぁ、なんとか?」

「実の娘が怪我してきたのに治療しないとかって大丈夫なの、それ」

「いやぁ。なんせ、悪名高いダントレットですから?」


 私の言葉に心底二人はありえないと呟いていた。

 実の娘でも、未だにあの人のことなんて全部理解できないんだから、そんなもんよね。


「家に戻されてすぐに、君の元へ行こうと思ったんだ。だが……」

「止められましたよね?」

「ああ、そうだ……」


「それが普通の反応だと思いますよ。誰だってあの人に借りなど作りたくもないですし、近寄りたくもないでしょう」

「でも君は、そうじゃないだろう。確かにダントレットの娘だとしても、あの男とは違う」

「本当にそれよ。さすがに娘だからって、何でも同じにしないでもいいのに」


 私のために怒る二人を見て、私は思わず吹き出す。

 一度それは声になると、ただどこまでも嬉しくて一人笑った。


「もぅ、こっちは怒っているのに、何笑ってるの?」


 やや不服そうなアンリエッタ。

 だけど、嬉しいものは嬉しいんだもの。


「いや、なんか幸せだなって思って」

「幸せ?」

「ええ。今まで私のために怒ってくれた人もいなかったですし。こんなにも温かな気持ちになったこともない。だから幸せだなって思って」


 あの日一度死んで、人生をやり直す決意をした。

 それはある意味復讐だった。


 だけど気づけばそんなことよりも、もっと楽しくて幸せな世界の中にいる。


 復讐なんてどうでもいいわけじゃないけど、今まで生きてきたどの時よりも幸せなんだもの。

 ああ、本当に今があってよかった。心からそう思えた。


「こんなことぐらいで幸せだなんて思えないくらい、君には幸せになって欲しい」


 あの時と変わらぬ真っすぐなブレイズの瞳は、やはり少し照れる。

 でも出来ることなら、私もそう願いたい。

 だから小さく頷いた。


 すると彼も満足そうに、微笑み返してくれた。


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