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白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。  作者: 美杉。(美杉日和。)6/27節約令嬢発売中


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045 その涙は

 疲れからか、怪我のせいからか。

 その夜、私は熱を出してしまった。


 ミーアは責任感からずっと看病すると言い張ったものの、明日も熱が引かなかったら困るからと部屋に戻した。


 そして夜中、皆が寝静まった頃、部屋をノックする音が聞こえてくる。

 起き上がれない私は、そのまま声だけかけた。


「はい、誰です?」


 ゆっくりと部屋のドアが開く。

 ドアの向こうにいたのは、マリアンヌだった。


 なんとなくそんな気がしていたから、部屋の鍵はかけなかったのだ。


「マリアンヌ様」

「……」


 私が微笑むと、ゆっくり部屋に入ってくる。

 近づいてきた彼女の顔をよく見れば、目は腫れていた。


 泣き腫らしたのだろう。

 いつもの勝気な表情なはく、顔色も悪い。


「大丈夫ですか?」

「なんであなたがそれを言うのよ」


 そんな風に言ったそばから、マリアンヌは泣き出す。

 今にも消えてしまいそうな彼女に私は手を伸ばした。


「全部私のせいです。まさかあの人が私なんかに興味を示すとも思わず、警戒を怠ったせいですわ」

「ちがうわ」

「いいえ、違いません。マリアンヌ様は助けに来てくれたではないですか」

「ちがう。ちがう。ちがう」


 子どものように頭を横に振りながら、ぼろぼろとマリアンヌは泣いていた。

 やっとの思いで上体だけ起こし、彼女にもう一度手を伸ばす。


 それに気づいたマリアンヌは、私の手を取り、すぐそばに来た。

 私は嗚咽しながら泣くマリアンヌの背中を、たださすっていた。


 彼女が泣き止むまで、ただずっと。

 この涙が私のためだと知っていたから。


「ごめん……なさい」

「何を謝ることがあるんです?」

「だって、あなた怪我を」


「ああ、大したことありません」

「でも熱が」

「これは知恵熱です。公爵家で立ち回りした疲れが出ただけですわ」


 正直、今日は一気にいろんなことが起き過ぎたのよ。

 まぁ、背中も痛いといえば痛いけど。


 それよりも疲れたというのが合っている気がする。


「公爵家ではうまく行った?」

「ええ。マリアンヌ様のおかげです。ドレスも似合ってるって褒められちゃいました」

「褒めた? あの人が?」

「はい。ビックリですよねー」


 お世辞でも、ダミアンに言われるよりよほどうれしかった。

 

「確かにビックリね。そういうこと言わない人だから」

「そうなんですか?」

「ええ。微笑むこともないような堅物で有名よ」

「ふぇー」


 なんかいっぱい微笑んでくれていたけどなぁ。

 褒めてももらえたし。すごく感じよかったのに。

 普通は違うのかしらね。


 あー、私のコト仕事相手だとでも思ったのかもしれないわね。

 それなら分かるわ。

 あの父だって、仕事モードの時はちょっとは愛想いいし。


「それよりも、痛むでしょう」

「少しは~ですよ。別に激痛というわけではありません」

「でも」

「気にし過ぎです。マリアンヌ様が私のために演技をして下さったって、ちゃんと分かってますから」


 私の言葉になぜかまたマリアンヌの表情が暗くなる。

 そんな彼女の顔を私はのぞき込んだ。


「演技だけじゃないわ。あの時、なんか本当に腹が立ってしまって……気づいたらあなたを押し倒していたの」

「そうなんですね」

「だけどやった後に、すぐに酷いことをしたって。もっとやりようがあったんじゃないかって」


 この人は結局、どこまでいっても優しい人なのだと思う。

 私と父によって奪われた立場なのに。

 もっと本当なら怒ってもいいはずなのに。


「ダミアンがあなたにちょっかいを出したことも、すぐにどちらを選ぶのか返事しなかったことも、全部全部腹が立ってしまって」

「分かります。私もですよ。とっととマリアンヌ様だって、言え! って思いましたもん。でもそうですね……本音を言うなら、あの場でマリアンヌ様をさらって行きたかったぐらいですよ」


 おどける私の顔に、マリアンヌは泣きながら笑みを作った。

 

「なにそれ」

「だって腹が立ったんですもん。マリアンヌ様をこんな風に泣かすヤツが」


「まったくあなたって人は……」

「どうです? 私に鞍替えしてもいいんですよ?」

「もう、バカ」


 マリアンヌはベッド前にしゃがみ込み、顔をシーツに埋めた。

 私はそんな彼女のサラサラした髪をなでる。


 小さな声でマリアンヌは『ありがとう』そう囁いてくれた。


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― 新着の感想 ―
微妙な立場ながらの女同士の友情、熱いですね……! この二人がそれぞれ今後どうなっていくのか楽しみに読み進めております。
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