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白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。  作者: 美杉。(美杉日和。)6/27節約令嬢発売中


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030 もっといらない……

「んーーーー」


 現実から目を背けようともう一つの手紙を見た瞬間、口にふくもうとしていた紅茶を吹き出しそうになるほど、その宛名に驚いた。


「ゴホっ、な、なにコレ‼」

「大丈夫ですか、アンリエッタ様」


 正面で私の様子を見ていたミーアが駆け寄り、私の背中をさする。

 いやこれはさすがに、大丈夫じゃないかもしれない。


 むせ込みながら私はもう一度その宛名を確認する。


 ブレイズ・ブロンド。

 ブロンド家といえば、この帝都で知らない者などいないだろう。


「なんで私に公爵家からの手紙が来るのよ」

「そうなんですよ。ホントに、何をなさったんですか?」

「えー。なにって……あ」

「え? 思い当たることがあるんですか!?」


 心底驚くミーアから、私は視線をそらした。

 公爵家となんて接点はなにもない。


 だけどこのブレイズという名前……。


 確か、あの感じの悪い騎士団長さんと同じ名前よね。

 もしかして、あの方は公爵家の人だったとかそういう感じ?


「ははははは」


 思わず乾いた笑い声がもれる。


 嘘でしょ。

 あまりに感じが悪かったから、こっちも死ぬほど感じ悪く返しちゃったじゃない。


 でも考えてみれば、帝国騎士団の人ってほぼ平民なんていないのよね。

 しかも団長ともなれば、結構身分は上かなとは思っていたけど。


「あの騎士団長が公爵家の人……」


「確か広場で灰色ネズミが出て、騎士団の方を助けたって言ってましたよね」


「うん」

「それなら、そのお礼なのでは?」


 いい風にとらえるなら、ミーアの言うことはもっともなんだろうけど。


 印象最悪だったからなぁ。

 名乗らなきゃ良かったかなぁ。


 ほら、どこかの物語のように、名乗るほどの者ではありません、みたいな?


 あー、でもあの薬玉を持ってる時点で怪しすぎて捕まるか。


「やーだー、どうしようミーア。私、公爵家の人だとは思わなかったからイラっとして怒鳴っちゃった」

「えええ、えええ? えー、ホントに何なさってるんですか」

「わかんないよぉ」


 ただ驚いて大きな口を開けているミーアに、涙目になる私。

 父の手紙以上にコレは、爆弾なのかもしれない。


「と、とにかく中を確認してください」

「しなきゃダメ?」

「そ、それは公爵家からのですし。しないと後が怖いじゃないですか」

「それはそうだけど」


 散々一人唸り散らしたあと、観念した私は手紙を開封した。


 中身はどこかよくあるような文面だった。


 この前の広場でのお礼と、その際の話を聞きたいとのこと。

 そのため自宅に招待してもよいかという問い合わせだ。


「えー。お礼ぽいと言えばお礼っぽいけど。貴族って、その言葉に裏表があるかんじじゃない?」

「で、どっちなんでしょう」


 やだ、全然わかんない。

 むしろこれ、なんて返事を書くべきなのかしら。


 困ったなぁ。

 これ、父のトコに行くより前に処理しちゃいたいのに。

 

「あ! そーだ。マリアンヌ様にお返事書いてもらおう」

「え、いいんですか、それ。あの方は愛人様なんじゃ……」

「まぁ、そうなんだけどね。お友だちだから大丈夫」


 マリアンヌの話は一通りミーアにもしてあったけど、イマイチ信用してくれないのよね。

 

 ミーアの気持ちは分かる。

 いきなり本妻と愛人が手を組みましたなんて、あんまり聞いたこともないから。


 でも利害が一致しているから、裏切られることもないし。

 まだ貴族をよく知らない私には、本当に助かる。


「夜になったら向こうの侍女頭にこの手紙と私からの手紙を、マリアンヌに渡してもらうようお願い」

「はい、分かりました」

「でもあの騎士団長の手紙が本心だったら、ちょっと父を出し抜けるかもしれないわ」


 私がそう言いながら微笑むと、ミーアは心配そうに私と手紙を交互に見ていた。

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