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白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。  作者: 美杉。(美杉日和。)6/27節約令嬢発売中


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028 想い

 もちろんこの方法が全て正しいとは、私も思わない。


 でも貴族であり、今まで裕福で何不自由なく暮らしてきた彼女の出した答えだ。


 自分の全てを捨ててでも、ただ彼と二人で生きていきたい。


 私にはそれを否定する権利も、それだけの想いもない。


「どうしてダミアン様なのですか? あなたのように美しい方なら、他にいくらでも自分だけを愛してくれる人がいたんじゃないんですか?」

「それでは意味がないのよ。自分が愛した人ではないと、アタシには意味がないの」


 愛したことも、愛されたこともない私には、マリアンヌの感情が羨ましい。


 ちゃんとマトモに生きていけたら、彼女の半分くらいは誰かを本気で愛することが出来るのかな。


 自分の大切なモノを捨てられるくらいの愛……を。


「自分でも馬鹿だって分かってるから、笑ってもいいのよ。みっともないでしょう? いい歳して、こんなの」

「いいえ。それほどまでに愛されるあの人が、むしろ羨ましいですわ」

「……そう」


 マリアンヌは少し驚いたように目を見開いたあと『ふふふ』と笑った。

 

「聞いてもいいですか?」

「どうぞ」

「あの人のどこが良かったんですか?」

「それを聞いてどうするの?」

「いや、興味本位で。私には一つも良いところなんて、ないとしか思えないので」


 きっぱりと言う私に苦笑いをしながらも、マリアンヌは嫌な顔一つせず全て教えてくれた。


 二人の馴れ初めから、恋に落ちた経緯。

 

 人の恋バナを聞くのは初めてのことであり、一瞬自分の夫と愛人の話であるなんてことは忘れてしまうような感覚さえ覚えた。


 それほどまでにマリアンヌはただ純粋に、どうしようもないダミアンを愛してきた。


 この結婚が二人を()かなければ、没落したダミアンを支えてマリアンヌが望んだ未来が来るはずだった。


 質素で何もなく、でも二人だけの世界。


 それがお金に目がくらみ、マリアンヌを愛人に据える形でダミアンは裏切った。

 ある意味、マリアンヌだってこの結婚の被害者だ。


 私は本当になにも知らなかったのね。

 ううん、たぶん知ろうともしなかった。


 そんなことにすら意味を持てないほど、自分の頭で考えることを放棄していたんだわ。


 目の前にいるのはみんな、生きた人だったのに。


 その人たちの過去や中身を知ろうともしないで、ただ課せられた役割に沿って生きて死んだ。


 ある意味、一番の馬鹿は私ね。


「私の計画を裏から手伝ってくれるのならば、マリアンヌ様の望む未来を約束しますわ。ただ時間はかかってしまいますが」

「時間なんてどうでもいいのよ。確約された未来さえあれば、アタシはそれでいいの。それに近頃、あの人が貴女に興味を持ち始めたみたいで」

「は⁉」

「気づかなかったの?」

「いや、人として少しは~くらいにしか思ってもみませんでした」


 なんとなくはそんな気もしないことはなかったけど。


 でも私とマリアンヌではまったくタイプが違うじゃない。

 豊満な体もないし、華やかさもない。


 ちょっと、もしかしてダミアンってかなり手当たり次第な人なのかしら。


「ダミアン様の守備範囲って、そんなに広いんですか? 私みたいなのでもいいくらいに」


 真面目な顔で尋ねた私を、マリアンヌは声を上げて笑い出した。


「貴女、自分のコトまったく分かってないのね。まぁ、着飾ってはないからそんな気がするだろうけど。貴女も結構美人よ」

「は⁉」

「なんでそんな顔するのよ、褒めてるのに」


「いやだって、そんなこと言われたこともないですし。だいたい、私は平民ですよ?」

「あのね、貴族だって平民だって顔のつくりなんてどっちも一緒でしょ」

「それはまぁ、そうかもしれませんが」


 そうか。美人顔になるんだ、私も。

 なんか変な感じ。見た目とか褒められたことないし。


 でも不思議と、こんなにも美人なマリアンヌに言われても、嫌味だとかお世辞だとかそんな風には思えなかった。


 むしろこんな会話ですら、どこか心地よい。

 初めに感じたマリアンヌへの嫌悪感など、もうどこにもなかった。


「あ!」

「な、なに急に」


 大声を上げた私に、マリアンヌが驚いたように体をのけぞらせる。


「いや、これが友だちなのかなって思って」

「はぁ? 嫌よ、あの人の妻である貴女と友だちだなんて」

「ダメですか?」


「……考えておいてあげるわ。あの人に手を出さないならね」

「あ、それは全然興味ないんで」

「それはそれで失礼よ」


 そう言いながらも、マリアンヌは満更でもない顔をしていた。


 敵を味方につけてまでも欲しいくらいの恋が、いつか私にもできるのだろうかと思いながら、私はマリアンヌと手を組んだ。

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