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白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。  作者: 美杉。(美杉日和。)6/27節約令嬢発売中


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025 深夜の来訪者①

 屋敷へと戻ったその日の夜分遅く。


 時計はすでにてっぺんを超えている頃、部屋の明かりを落とそうとしていたところに、部屋をノックする音が聞こえてくる。


 普段この部屋をノックしてくる人間など、ミーアたちしかいない。


 しかし彼女たちはさきほど自分たちの部屋に下がったばかりで、戻って来るとは思えない。


 誰かしら。寝たフリをするわけにもいかないし困ったわねね。


 ダミアンが来るとは考えられないけど、でも一回目の時よりは彼との距離感は近いような気がする。


 私がオドオドしていないせいもあるのか、少しずつちょっかいをかけてくるようになったのだ。


 私たちはお金での関係とはいえ、一応は夫婦である。


 もしそんな関係を迫られたりしたら……なんて、愛人にしか興味がないあの人に限ってそれないと思うけど。


 私は息を飲んだあと、扉の向こうの主に向かって声をかけた。


「……どうぞ」


 私は若干体に力を入れながら、ベッドの縁から立ち上がる。

 そして何があってもいいように身構えて。


「遅くにごめんなさいね、奥様?」

「あなたは……」


 部屋の前に立っていたのは、薄いドレスを身に纏った夫の愛人だった。


 赤く形の良い唇に、やや赤みがかったピンクの大きな瞳。

 真っ直ぐに手入れされたバイオレットの髪が、キラキラと輝いている。


 豊満な胸と、くびれた腰。

 同性の私から見ても、彼女が美しいのは分かる。


「確か、アンヌ様でよろしかったですか?」

「それはあの方が呼ぶ名よ。アタシはマリアンヌ。これでもモルタ子爵家(ししゃくけ)令嬢なのよ」

「子爵家令嬢……。それは失礼いたしました」


 私がさも当たり前のように頭を下げると、マリアンヌは心底嫌そうな表情を向けた。


 嫌味なつもりはなかったんだけど、貴族式に言うと、こういうのも嫌味になるのかしら。


 でもこれはどういう展開なのかしら。

 前回では一度だって愛人様の顔を見たことも、会話したこともなかったっていうのに。


 なんでマリアンヌはわざわざ私の部屋に尋ねてきたの?


 全然分からないわ。

 何かが変わったってことなのかしら。


「まったく……貴女も貴女の父親も最悪ね。嫌いだわ」


 マリアンヌはやや動揺する私を気にすることなく、うんざりした顔で吐き捨てた。


 感情をあらわにする辺り、彼女もあまり貴族っぽくはない気がする。

 でも嫌いという言葉は、私にも言えることなのよ。


 一回目の人生ではあなたに熱を上げたダミアンのせいで、捨て置かれて金貨一枚すら出してもらえずに死んだのだから。


 ただ夫を愛してなどいないし、興味すらないから嫌うまでもいかないのが現実ね。


 マリアンヌは大きくため息をついたかと思うと、ずかずかと私の部屋に入ってくる。

 そして勧められたワケでもないのに、そのままソファーへと腰かけた。


「今日はここへなにをなさりにいらしたのですか? まさか私と父を重ねて嫌味を言いに来たわけではないですよね」


 嫌味を言うだけだったら、わざわざこんな人目をさけて深夜になんて来なくたっていいはず。


 だって彼女はあの人の最愛なのだから。


「……アタシのモノになるはずだったのに」


 ややうつむきながら、マリアンヌはぽつりともらした。


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