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白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。  作者: 美杉。(美杉日和。)6/27節約令嬢発売中


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014 大きな星と期待

「そうなのよね……。食事もほぼ自分たちで用意しなきゃいけないし」

「あの固いパン! 今時の貴族様って、ふかふかなパンを食べれるのかと思ってましたよ」


 ミーアは食堂にあったパンのことをしきりに気にしていた。

 確かに実家でも、平民が普通に食べる固く黒いパンを食べていたけど。


 貴族の方たちが食べるパンって、一応は固くてももっと小麦色したものだとばかり思っていた。


 しかし困窮具合が激しいせいか、ここでの食事は実家でのものとあまり変わりがない。

 むしろそこだけは実家の方が少しマシだったかもしれない。

 

 若く働き盛りが多い使用人たちへの食事は、倒れられても困るという観点からかなりなボリュームがあった。

 

 もっとも給与から天引きされているから、それぐらいは食べさせてもらわなきゃ話にもならないのだけど。


 でもここは違う。

 固く黒いパンに、野菜くずのような味気ないスープ。

 

 メインとなるものにも肉はほぼ入っていない。

 動かない人にはそれでもいいのかもしれないけど、動く私たちからしたら全然足りないのだ。


 前もよく三年間も耐えたものよね。忍耐力っていうのかな。

 虐げられることに慣れすぎちゃっていたみたい。


 我慢したって一つもいいことなんてないのに。

 でもそれが当たり前すぎて、普通が分からなかったのよね。


「で、そろそろあたしを呼んだ理由を教えてもらえませんか? まさか掃除を~ってだけじゃないんですよね」

「ふふふ、そうね。掃除は確かに手伝ってもらいたかったけど。もちろん別件よ」


「何かするんですか?」

「父の元を離れた今がチャンスだと思ってね。今まで奪われてきた人生全部、まるっと取り戻すそうと思って。父の商会もこの家も、全部手に入れて……反撃しようと思って」

「……」


 私の言葉に、珍しくミーアが考え込むように視線を外した。

 いきなりこんなこと言われたら、やっぱり困惑するわよね。


 今まで私はずっと従順に父の命令に従ってきたわけだし。

 ミーアだってそう。


 生きていくために、自分の居場所を確保するには、そうするよりほかなかったのだもの。


 だからこそ、私たちにとってみれば父という存在は何よりも大きい。

 逆らえないように刷り込まれているから。


 いくら仲のいいミーアといえど、さすがに計画を打ち明けるには早かったかしら。

 もう少し慎重にしてからのが、良かったかな。


 考え込むミーアを見ていると、そんな不安が胸を襲う。


「ミーア?」


 私は沈黙に耐えられず、声を上げる。


「結構大がかりな計画になりそうですね」

「ええ。ごめん、嫌だったかしら」


 不安そうに私が顔をのぞき込むと、ミーアはきょとんとした顔をする。

 そしてまた大きく笑って見せてくれた。


「まさか。むしろ、どうやってやってやろうか考えてたんですよ」

「ホント? さすがミーアね」

「でもあたしだけでは絶対に人が足りませんね。商会側もそうですけど、この家のことも」


「それはそうね。どちら側にも味方を増やさないと。しかも慎重にやらなきゃ、父に気付かれでもしたら大変だわ」

「人選を間違えたら大惨事ですね」

「そうなのよ。だからこそ、ミーアにも協力してほしくて」

「もちろんですよ、お嬢様。しっかりがっつり、やっつけちゃいましょう!」


 私がにたりと微笑むと、ミーアも満更ではないようだった。

 父は基本的に、自分以外をコマとしか見ていない。


 金さえ払えばなんでも動くものだと思い、使用人たちからも恨みをかなり買っている。

 彼女もそのうちの一人だ。


「今まで奪われてきたものは全部回収してしまわないとね」

「まずはどうします?」


「そうね。商会が私名義になったことだし、そっちにも数名送ってちょうだい。あとはこの屋敷のことを把握したいから、さらに侍女の追加が欲しいわ」


 まずはなんとしても夫の弱みを握らないと。


 前回は言われるままだったけど、せっかく結婚したんですし、妻には家のことを知る権利があるのですよ。


「これは忙しくなりそうですね」

「ええ。期限は籍を入れた時からぴったり三年後。それまでに全てを片づけるわ」


 その前に流行るバラ病もなんとかしなきゃいけないし。

 とにかくお金も必要になる。


 だけど未来を知っているし、薬のありかも分かっている。

 もう何も怖くはないわ。


 窓の外には、私たちの計画の成功を約束するかのように大きな星が輝いていた。

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