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一章 29



鮮やかすぎるほどの手際で敵方を処理していく間島レイヤと神楽・エヴァンズだったが、単純二、三倍の戦力を相手にしていては疲れも見えてくる。


間島レイヤが息切れをおこし氷壁の防御が崩れた一瞬の隙を突いて、鞍田の系統の『血の特異性』による大爆発が叩き込まれた。

先ほどの爆発音はこれによるものだ。


そんな危機一髪の状況で、間島レイヤは遊佐の第二系統の『血の特異性』による土壁を作り出し、事なきを得ることに成功した。


「やっベー、マジでごめん。やっぱ俺守るのとか向いてないわ」

「一旦引きましょう。深追いは良くない」

「オッケー」


二人は飛んでくる土塊や霰にも似た氷の塊をいなしつつ後ろへ退いた。

二人の一時退却を確認した敵方も少し攻撃の手を緩める。


嵐のような弾幕がやみ、状況は一旦の小康状態をみた。

自然『血の特異性』の乱発による土煙も薄まり、徐々に視界が開けていく。

少し黄土色に染まった視界の中には薄っすらと五人の人影が見える。


元々の敵は八人。一人指示役の人間が居て、それ以外は全員戦闘に参加していたはずだ。

こちらが無力化したのは四人。四と五の和は九。小学生でもできる簡単な計算である。

そこにある一人の差は当然常盤めぐりの存在によるものでそれ自体は良いのだが、問題は彼女の現状にあった。


常盤めぐりが指示役の人間によってこめかみに銃口を突き付けられている。

二人が見たのはそう言う状況だ。


間島レイヤは思わず、正気かと心の中で叫んだ。

実際そう思わざるを得ないくらい常軌を逸した行動ではある。

相手方の目的は常盤めぐりの血、少し特殊な『奇跡の血』であったはずだ。


人間は死ねば呼吸が止まり、心臓が止まり、循環が止まる。

つまり死ぬということは血が新たに作られなくなることと同義だ。

いくらサラザールの血を手に入れたとて、その結果として常盤めぐりの命が失われてしまっては相手方にだってメリットはないはずなのに。


だから特務課は少々手荒な、戦闘による常盤めぐりの奪還を試みたのだ。

多少相手の神経を逆撫でしても常盤めぐりに命の危機はないと踏んでいたから。

しかし相手に常盤めぐりを殺す覚悟があるとなると話は変わってくる。


どうしたものか、と間島レイヤは小さく嘆息した。

隣の神楽・エヴァンズも険しい顔で目の前の状況を見据えている。

きっと彼も信じて疑わなかった前提が崩されて動揺しているのだろうな、と思われた。


はあ、と間島レイヤはもう一度、今度は少し大きく嘆息する。

やっぱり、なんでこんな時に限って水瀬さん居ないかなあ。神楽は口下手だし俺はあんま頭良くないし、交渉とかはあの人の領分なんじゃないの?


そんな文句も、この状況では本人に届きようがない。全く以って徒らなものだった。


結局は自分がどうにかせねばならないのだ。

そう思って間島レイヤは黄土色の世界をもう一度しっかり直視したのだった。



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