⑦3時のおやつ
あ……。
ミカちゃんが、子供部屋にもどってきた。
おやつをトレイにのせて。
もう、3時になったのね。
早いなぁ。
今日のおやつのメニューは、小さめ(子ども用)のカップケーキとお菓子とオレンジジュース。
気づいたショウタ君が、
「おやつだぁぁぁ」
と大喜び。
ミカちゃんがテーブルの上にトレイを置くと、待っていましたとばかりに、ショートケーキを食べはじめるショウタ君。
ところが、子雲の視線の圧力がすごい。
うらやましそうに、ヨダレを流しながら、ショートケーキを食べているミカちゃんとショウタ君をにらんでいる。
ミカちゃんが、子雲の視線に気づいたみたい。
「あんたは食べられないでしょ」
と冷たく言いきった。
子雲は頭から白い煙みたいなものをポッポーと出して、プンプン怒っている。
しかたないなぁ、て感じで、大きなため息をついたミカちゃん。
お菓子をひとつ手に取ると、子雲の前に差し出した。
ギラギラとヒトミを輝かせた子雲は、お菓子に突進していく。
“ビューン”て。
でも、子雲の体はお菓子を通りぬけてしまった。
子雲はフシギそうにキョトンとしている。
ショウタ君も、そんな子雲がおかしいのね。
「アハハハハ……」
と腹をかかえて笑っている。
ミカちゃんは、
「だからムリだって言ったのに」
と無表情で言った。
まだ、子雲が部屋の中で雨を降らせたことを怒っているのね。
ま、当然だけど……。
一方、子雲は体を真っ赤にして、くやしがっている。
そんな子雲を横目で見ながら、お菓子を食べているミカちゃん。
「あぁ、おいしいぃぃぃ」
と、わざと子雲に聞こえるように言ったあと、満足顔。
子雲は懲りずに、何度も何度も、トレイの上のお菓子に突進していく。
もちろん、通りぬけるだけ。
呆れたミカちゃんが、しかたなく、
「ジュースなら飲めるかも……」
と、オレンジジュースを子雲の前に置いた。
よろこんだ子雲は、オレンジジュースの入ったコップの上まで、飛んで移動した。
そして、唇をオレンジジュースに近づけていく。
子雲の様子を見ていたショウタ君が、
「チビがジュース飲んでるぅぅぅ」
と大はしゃぎ。
正確には、なめているほうがちかいけどね。
オレンジジュースを飲み終わった子雲は、体がオレンジ色になった。
体の色まで変わるなんて、うらやましいぃ。
お腹のふくれた子雲がゲップをすると、口からオレンジ色のシャボン玉みたいなものが、プワッと出たあと、つぶれた。
パチンと音が聞こえたような気がしたのは、わたしの聞き違い?
ミカちゃんとショウタ君も、うれしそうに笑いだした。
それから、ミカちゃんとショウタ君は、おやつを食べ続けた。
いつもより、おいしそうに見えたっけ。
一方、お腹がいっぱいになった子雲は、お菓子を食べているミカちゃんとショウタ君の様子を、たのしそうに見ていた。