⑤ミカ vs 子雲+ショウタ
本気で、子雲がオバサンの生まれ変わりだと信じているショウタ君。
その子雲を、ミカちゃんが追いだすつもりだと知ったショウタ君は、
「オバサンのチビなのにぃ。お姉ちゃんのバカー。エーン……」
ついに、泣きだしてしまった。
でも、本当は得意のウソ泣き。
だって、ショウタ君は泣きながら、チラッチラッとミカちゃんを見ているんだもの。
もちろん、お姉さんのミカちゃんも気づいているみたい。
だから、知らんぷり。
あ、でも、どうして?
ショウタ君には、わかっているはずなのに。
得意のウソ泣きも、お姉さんのミカちゃんには通用しないって。
そのときだった。
え?
どういうこと?
子雲も泣きだしちゃった。
つまり、ハイイロの雨雲になって、かわいい雨を降らせている。
“シャーシャー”、くらい。
あぁ、そうか。
ショウタ君が本当に泣いていると思ったのね。
でも、ミカちゃんは、
「ヤダ、ウソ」
と、あわてて子雲の下に缶のゴミ箱をおいた。
「やめてよ。子供部屋が洪水になるでしょ」
ミカちゃん、それはちょっと大げさかも……。
ミカちゃんの注意は逆効果になったみたい。
今がミカちゃんの弱点だと思ったのね。
ショウタ君は、さらに大泣き。
「エーンエーン」
つられた子雲も、“シャ ーシャー”
まったく、泣く子にはお手上げね。
そのとき、ミカちゃんが、
「バカー」
と叫んだ。
泣いていたショウタ君と子雲は、ミカちゃんを見た。
ミカちゃんは怒った顔で、
「パパがお留守番お願いねって言ったのに……だから一生けんめいがんばろうと思ってたのに、パパをがっかりさせちゃう」
と、ショウタ君と子雲をにらんだ。
悲しそうに唇をかみしめながら。
ミカちゃんを見たショウタ君はおどろいているみたい。
いつも元気いっぱいのミカちゃんなのに、今はこんなに悲しそうなんだもん。
わたしもフシギ。
だって、これくらいのことで、ミカちゃんがこんなに怒るなんて……。
ショウタ君のいたずらには慣れているはずなのに。
ミカちゃん、どうしちゃったの?
ショウタ君も反省したみたい。
「お姉ちゃん、ごめんなさい……」
と、シュンとしている。
ショウタ君までいつもと違う。
2人とも、どうしちゃったの?
あ……。
もしかしたら、ミカちゃんとショウタ君がヘンなのは、わたしが原因……?
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
ということで、やっとわたしの自己紹介の時間。
わたしは、さっきから話にでているネコのオバサンよ。
よろしくね。
え? 死んだんじゃないのかって!?
それはそうだけど……。
バケネコですって~?
シツレイしちゃうわ。
でも、ま、 そんなところだけどね。
死んだのに、どうしてまだカワセさん家にいるのか、フシギなのね。
だって、おばあちゃんが病気で入院しちゃったでしょ。
だから、カワセさん家の家族が心配でたまらないのよ。
とてもじゃないけど、このまま天国に行けないわ。
カワセさん家の家族は、とてもやさしい人たちなのよ。
交通事故にあったノラネコのわたしを、動物病院に運んでくれたパパ。
退院したわたしを、温かくむかえてくれた、やさしいママ。
笑顔でつつんでくれた、ステキなおばあちゃん。
オマセさんだけど、しっかり者のミカちゃん。
いたずら好きで、あまえん坊だけど、本当はやさしいショウタ君。
生意気で、意地っ張りだったノラネコのわたしに、みんな、やさしくしてくれた。
わたしの大切な家族なの。
なのに、おばあちゃんが入院しなきゃいけないなんて、あんまりよ。
だから、安心できるまで、一緒にいようと決めたの。
だって、ミカちゃんはなにか無理してるって感じなんだもの。
もちろん、ミカちゃんたちには、わたしが見えないわ。
それでも、いいの。
とにかく、今は一緒にいたいから。
わたしの大切な家族だから、放っておけないでしょ。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢