④オバサンの話はしない約束でしょ
子供部屋に入ってきた子雲。
その子雲を追い出そうとするミカちゃん。
子雲を、オバサンの生まれ変わりだと信じているショウタ君。
3人バラバラで、これからどうなるの?
最初に話しはじめたのは、ミカちゃんだった。
「わたし、雲って大キライ。出ていってよ」
一方、子雲は怒っているみたい。
“プンプン”て感じで、頭から白い煙みたいなものを出している。
子雲には悪いけど……。
まるで、マンガの世界だわ。
うれしくなっちゃう。
そこで、割って入ってきたのがショウタ君。
「お姉ちゃん、ひどいよぉ」
子雲も、ウンウンとうなずいている。
えらそうに……。
でも、ミカちゃんにも、ちゃんと言い分があるのよね。
「ショウタ、パパが言ったでしょ。誰も家の中に入れちゃダメだって」
ん~……それもちょっと違うような気がするんだけど……。
ついに、ミカちゃんは、
「さ、出ていきなさいよ!」
と、子雲相手に、モップを振りまわしはじめた。
子雲は、モップにかき消されそうになる自分の体を、必死で押さえている。
それにしても、ミカちゃん、どうしてそんなに子雲がキライなの?
なんか、いつものミカちゃんじゃない気がするんだけど…… 。
一方、ミカちゃんから追いまわされた子雲は、ついにガマンできなくなったみたい。
ミカちゃんの頭に、カミナリ⚡を落としはじめた。
でも、そのカミナリは小さくて可愛いの。
“パチパチ”くらい。
それでも、子供のミカちゃんには痛いのね。
「やめてよ、もう……」
今度は、ミカちゃんが逃げまわっている。
ミカちゃんをかわいそうに思ったショウタ君が、
「チビ、もうやめてよ」
と言うと、子雲はカミナリを落とすのをやめた。
ミカちゃんは、
「もッ!」
と怒りながらも、ホッとしている。
子雲をフシギそうに見ていたショウタ君が、
「チビ、さわってもいい?」
て訊くと、子雲は頷いた。
こわごわ、ショウタ君の手が、子雲に伸びていく。
でも……。
「あ……」
ショウタ君の手は、子雲の体を通り抜けてしまった。
一方、子雲はくすぐったそうに体をくねられている。
“キャッキャッ”て、子雲の声が聞こえてきそう。
調子にのったショウタ君は、いたずらっ子の顔で、子雲をくすぐりはじめた。
更に、体をくねらせる子雲。
“コチョコチョ”
“キャッキャッ”
て感じ。
まるで、兄弟のじゃれあいみたい。
そんなショウタ君と子雲を見たミカちゃんは、プンプン。
「絶対、出ていってもらうんだから……」
「お姉ちゃん、ひどいよ。オバサンのチビなんだよ」
ショウタ君も怒っている。
ミカちゃんは、ショウタ君をにらんだ。
「ショウタ、もうオバサンの話はしないって約束したでしょ」
ミカちゃんがショウタ君に、そんな約束をさせたなんて、初耳だわ。
あ、もしかして、あのとき……?
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
あれは、2人の大好きなおばあちゃんが、病院に入院する前日のこと。
その夜、カワセさん家では、リビングで、大人たち(おばあちゃんとパパとママ)の家族会議が開らかれていた。
言いだしたのは、おばあちゃん。
「ミカとショウタのこと、お願いね」
おばあちゃんは、ミカちゃんとショウタ君のことが心配でたまらないと言う。
「だって、オバサンが動物病院に入院して死んだばかりでしょ。わたしも入院したら死ぬかもしれないって、子供たちが心配しそうな気がするの」
おばあちゃんは、
「こんな時に入院することになって、ごめんなさいね」
と涙ぐんだ。
そこでパパが、おばあちゃんとママに約束したの。
「おばあちゃんが元気になって帰ってくるまで泣かない」
自分が泣けば、ミカちゃんとショウタ君も不安になるからって。
そういえば、オバサンが死んだときも、パパはずっと泣いていたっけ。
あの涙もろいパパがねぇ……。
大人って大変ね。
ちょうど、そのときだった。
子供部屋にいたミカちゃんが、トイレに行くため、リビングの前の廊下を通りかかったのは……。
そして、パパの約束を聞いてしまったのだった。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
きっとそのあと、子供部屋にもどったミカちゃんが、ショウタ君に、
「もう、オバサンのことを話してはいけない」
と、約束させたのね。
でも、どうして……?