②子雲がカワセさん家にやってきた
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カワセさん家の前の歩道を、子雲が散歩している。
あんたは、ノンキでいいわねぇ。
ところが、あ……。
突然、ピュー と強い風が吹いて、子雲が飛ばされた。
(危ない。)
と思ったとたん、子雲は隣の家の壁にぶつかった。
そして……。
ええ~ぇ?
子雲の体が、花火みたいに飛びちっていく。
あっちこっちに、小さくて白い綿のようなものが、フワフワ浮いている状態。
どうしよう?
(子雲が死んじゃうぅぅぅ)
と心配していたら……。
え?
なに?
子雲は、小さく飛びちった体の破片を拾い集め、自分の体にくっつけていくじゃないの。
すごぉぉぉい。
みんな、そんなことができたらいいのにねぇ。
羨ましぃぃぃい!
やっと、元に戻った子雲は、ため息をついた。
驚いたなぁ、て感じ。
でも、懲りていないみたい。
(あ~あ~あ~……)
子雲は木の枝に止まっている小鳥にじゃれつきはじめた。
本当に、いたずらっ子なんだから。
小鳥の方も、いい迷惑よね。
いきなり、白くてフワフワした、わけのわからないものが、つきまとってきたんだからね。
そりゃ、驚くわよ。
あ、でも、小鳥も反撃しはじめたみたい。
くちばしで、子雲をつついている。
驚いた子雲は、逃げだした。
怒った小鳥が追いかけている。
子雲と小鳥の追いかけっこなんてステキじゃない。
子雲も小鳥もガンバレェ。
すっかり、子雲と小鳥の追いかけっこに見とれていたわたしは、気づいていなかった。
空が暗くなっていることに。
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(……て、わたしが何者か、気になってる?
もう少しだけ、待っててね。
必ず、自己紹介するから。
ということで、話を戻して……)
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だから、突然、空が“⚡ピカッ”と光って、カミナリが“ゴロゴロ”と落ちたときは、わたしの毛が逆立ってしまった。
まるで、体の中を電気が走ったみたいに。
驚いたショウタ君も、震えながらミカちゃんに抱きついた。
「お姉ちゃ~ん……」
ミカちゃんは、
「 だ、大丈夫よ。ショウタは男の子でしょ」
そう言いながらも、やっぱり震えている。
そりゃ、そうよね。
いくらお姉さんでも、カミナリ⚡には勝てないわよね。
ミカちゃんは恐る恐る、窓を開けて、空を見上げた。
ついさっきまで、いいお天気だったのに、今は空が暗い。
「どうしちゃったんだろう……?」
ミカちゃんは不安そう。
そのときだった。
あ……。
小鳥に追いかけられていたあの子雲が、窓の上の方から、子供部屋に入ってこようとしているじゃないの。
あんた、雲でしょ。
どうして部屋の中に入ってくるのよ。
誰に言っても、信じてくれないじゃないの。
でも、ミカちゃんもショウタ君も、子雲に気づいていないみたい。
ザンネン。
そのとき、またイナズマ⚡が走った。
“ピカ”
「ヒィ」
と驚いたミカちゃんは、思わず窓を閉めてしまった。
“バターン”
あ、危ない。
なんと、子雲が窓にはさまれてしまった。
どうしよう~。
子雲が死んじゃう~。
と心配していたら……。
窓にはさまれた子雲は、抜け出そうともがいている。
ウグ~、ウグ~って感じで。
あ、そうか。
雲だから痛くはないのね。
かわいそうだけど、その姿がカワイくて、なんかおかしいの。
笑っちゃうくらい。
“ウフフ”
子雲はうつ伏せで、窓にお腹をはさまれている状態。
ほっぺたを膨らませ、腕組みをしたまま、頭から煙みたいなものをポッポーと出している。
一人前に怒っているのぉ?
でも、カワイイッ。
そこにまた、カミナリ⚡が落ちた。
“ゴゴゴー”
窓にはさまれている子雲は、ヒィェ と驚いた。
母雲が怒っていると思ったのね。
子雲は急いで、はさまれている窓から抜けだそうともがいている。
ウグ~ッ、ウグ~ッて。
その姿がまたカワイくて、おかしいんだけど……。
ついに、子雲は、はさまれている窓から抜け出し、子供部屋に入ってきた。
シュポーンって感じで。
やったね。
あんたは、エライ!