①初めて、子供だけでお留守番
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ここは、カワセさん家の子供部屋。
時間は、午後が始まった頃。
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姉のミカちゃん8歳と、弟のショウタ君5歳が、初めて子どもだけで、お留守番をすることになった。
どうしてかっていうと……。
昨日、おばあちゃんが病気で入院してしまったの。
ママもいっしょに付きそって。
そして今日、ミカちゃんとショウタ君も、パパといっしょに、おばあちゃんのお見舞いにいくことになっていた。
でも、パパに、急な仕事の電話が入ったから、たいへん。
パパは仕事を断ろうとしたけど、ミカちゃんが行かせたの。
だから、ミカちゃんとショウタ君だけで、お留守番をすることになったってわけ。
ショウタ君はいつものように、子供部屋で遊んでいる。
オモチャ箱をひっくり返して。
ショウタ君、 またミカちゃんから叱られても知らないから。
ほら、ミカちゃんが、重そうな掃除機を引っぱって入ってきたわよ。
散らかった子供部屋を見たミカちゃんは、腰に手を当てて、呆れたようにため息をついた。
女の子って、フシギね。
いつの間に、こんなにママに似ちゃったのかしら。
「ショウタ、掃除するんだから、片づけてよ」
でも、弟のショウタ君には、ママのマネも通用しないみたい。
いくら似ていても、やっぱりママはママで、ミカちゃんはお姉さんなのね。
「パパは掃除しろ、なんて言わなかったよ」
だって。
ま、しかたないわねぇ。
なんたって、相手はショウタ君なんだもん。
でも、そこはやっぱりお姉さんのミカちゃん、しっかりしている。
「パパをよろこばせたいの。ほら、早く」
しっかり者の姉とわがままな弟、て感じ。
なんか、いいものね。
うらやましぃ。
なのに、ショウタ君はまだ、おもちゃで遊んでいる。
「ショウタ!」
怒ったミカちゃんは、ショウタ君の手から、オモチャを取りあげた。
ショウタ君は、
「お姉ちゃんなんか嫌いだよ。パパのところに行くぅぅぅ!」
と、ダダをこねはじめた。
ま、気持ちはわかるけどね。
「パパはお仕事なの。ガマンしなさい」
やっぱり、ミカちゃんの方が正しいのよね。
でも、5歳のショウタ君には、そんなこと、まだ考えられないみたい。
「じゃぁ、ママのところに行くぅぅぅ!」
だって。
本当に笑っちゃう。
でも、お姉さんのミカちゃんとしては、笑いごとじゃないのよね。
「ママはおばあちゃんの看病をしているんでしょ 」
「だから病院に行くぅぅぅ」
「ショウタが行ったら、ママおばあちゃんの看病できないじゃない」
「ヤダ、行く。だって、ママとおばあちゃんに会いたいんだもん。お姉ちゃんがパパに、仕事に行けって言ったから、病院に行けなくなったんだからね。お姉ちゃんのせいだからね」
「そんなことしたら、おばあちゃんが心配するでしょ」
「お姉ちゃんはおばあちゃんが嫌いだから、そんなこと言うんだ。おばあちゃんに言いつけてやるぅぅぅ」
ミカちゃんは、大きく息を吸い込んだ。
そして 、ついに、
「ショウタのバカー!」
と怒鳴った。
ミカちゃん、お姉さんもタイヘンね。
同情するわ。
子供だけでのお留守番は始まったばかりなのに、これじゃ、先が思いやられる。
そのときだった。
あ……あれは、なに……?
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窓の外に、なんか白くて丸いものが、フワフワ浮いているのが見えた。
え~ぇ……そんなぁ……ヤダ、ウソ~。
こんなことって、あるのぉぉぉ?
わたしの目、どうかしちゃった?
だって……雲。
そう、さっきまで空に浮かんでいた、あのいたずらっ子の子雲⛅よ。
今は、目の前にいるのよ。
歩道の上、2mぐらいの宙に浮いている。
というより、散歩している感じかな!?
あっちを見たり、こっちを見たりしているから。
でも、どうして空にいた子雲が、ここにいるの?
(あ、そうか。)
さっき、母雲☁がカミナリ⚡を落としたから、地上に逃げてきたのね。
でも、雲って、こんな低いところまで下りてこられるものなの?
それに、小さくなったみたい。
まるで、人間の赤ちゃんぐらいの大きさしかない。
だって、空にいたときはもっと大きかったはずよ。
地上まで下りてきたから、重力で縮んじゃったとか?
詳しいことはわからないけど、そういうことにしておこう。
だって、今日はいいことが起きそうな予感がするんだもん。
ワクワクしてきちゃった!