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留美

 あはははははは!!!あのくそ女から、茂を奪い取ってやったわ!!


 大体、ただの庶民のくせに私と張り合おうなんで百年早いのよ!せめて札束で相手の頬をひっぱたけるようになってから話をしろってんだよ、まったく。あーやだやだ、貧乏くさいのは嫌ねえ。


 貧乏くさいといえば、茂もねぇ・・・病院代の入金を確認するまでは一歩も動かなかったわねぇ・・・貧乏くさいというか、けち臭いというか・・・まじめに働くし、気が弱そうだったから、私の思い通りのATMにできるって思ったけど、ちょっと間違ったのかしら?


 まあ、いいのよ!!私には聖也がいるから!!お金さえあれば、聖也はずっと私の物よ!!聖也だって、こんなにお金を使う私が大好きな筈よ!!


 ふふ、茂は、母親も会社も放り出せない。そういう性格だものね。私がいくら遊び惚けていても、気が弱く、母親が人質の茂では注意もできないし、会社を蔑ろにできない善人の茂は、堅実に成果を出し続けるでしょうから、パパにも何も言われない。完璧だわ!!


 ま、恭子だっけ?茂の元カノ、もうちょっと何かしてくるかと思ってたけど、他愛ないわね。あの位で辞めちゃうような、心の弱いゴミ屑はもう死んじゃってたりして?どうでもいいわね、そんなこと。


 あー出勤めんどくさい。仕事なんてわからないんだから、茂が全部やればいいのに。パパも茂も管理職なんだから顔だけでも出せってうるさいわねぇ。私は聖也を愛するのに忙しいのよ!!まったく、わかってないわね!!



 あれ?パパどうして此処に居るの?色々案件を抱え込んでて、こっちを見に来る暇なんてないはずなのに。


「留美、新聞のこれは読んだか?」


 なによパパ、怖い顔して。えー、やだなぁ新聞って文字ばっかで頭が痛くなってくるのよねぇ・・・あら♡聖也が載ってる♡白黒でもかっこいいわね♡・・・痴情のもつれで刺殺?え?どういうこと?同居女性ってなに?聖也、本気なのは私だけって言ってたわよ?・・・複数の女性相手に結婚詐欺の疑いって・・・うそ?集団訴訟の準備中での凶行ってどれだけだましてるのよ?・・・いや、聖也がそんな人なはずが・・・


「やっぱり、知ってるんだな・・・」


 違うの!!違うのパパ!!たまたま友達と行ったホストクラブで接客してもらっただけなの!!


「ほう、たまたまかね?ではこの写真の彼女は?」


 あ、芳江だ。ホストに行くときに付き合わせてたわね・・・あの子、金は持ってたから・・・でも、普通に同級生だし、知らないっていうのは不自然よね・・・


「さすがに同級生の芳江さんは、知らないとは言わないか。でも、彼女の父親が私の仕事の重要な取引先の社長ということは?」


 え?知らないわよそんな事。興味なかったし・・・


「まったくお前は・・・で、彼からお前が娘を何度も無理やりホストに付き合わさせて、金まで集られているが、得意先の会社の事を考えて強く言えなくて苦慮しているのが発覚したから、父親の私から何とか言ってくれと、これらの証拠とともにひどく怒られてしまってな・・・とんだ赤っ恥だよ・・・それで、たまたまってのは何回の事だね?」


 いや・・・それは・・・その・・・


「留美、この聖也ってホストに執心してたそうだな?そいつがちょっと他の女と話しているだけで、聞くに堪えない罵詈雑言を相手に口走っていたらしいな?芳江さん、いつも傍で聞かされて居た堪れない気分を毎回味わっていたそうだぞ?」


 ・・・・・・・


「知り合いから聞いたが、名誉毀損で送検されるぞ、留美。」


 なんで?!なんでそんなことに?


「お前は立場ある人間なんだから、発言には気を付けろとあれほど言っていたのに、気を付けていたのは私の前だけだったんだな・・・しっかり録音されているぞ、集団訴訟の弁護士に。」


 あの女どものどれかが、仕事中の弁護士だったのか・・・ついカッとなって・・・


「取り敢えず、留美。お前は懲戒解雇だ。上層部の人間が身内の不祥事を庇う姿なぞ、最低の悪手だからな。あと勘当だ。私物は後で送ってやるから、二度と家の敷居をまたぐな。」


 待ってよパパ!!私、一人娘よ?跡取りはどうするのよ?!


「そうそう、留美、一ついい事をしたな。茂君だったな、目立たないが実に優秀な男だ。お前のような屑の夫にするのはいただけないが、養子縁組なら受けてもらえるかも知れないな。お前、何やら小細工もしている様だしな。いい跡取りを見つけてくれてありがとう。では、さようなら。もう会うこともないだろう。」


 ・・・そんな・・・私、これからどうすれば・・・


「死ねばいいんじゃないかな?」


 なによ、このクソガキ。どっから入った?・・・あれ?パパは何処?


「君、育ちがいいはずなのに、どうしてこんなに口が悪いのかね?ああ失礼、性根が腐っているのか。まあいいや、そんなことより君、どうしてくれるんだね?せっかく強敵を何とかねじ伏せるムーブをキメて来たのに、こんなにあっさり自滅するとは。私の立場というものを少しは考えてはくれないかね?」


 は?何言ってるのこのクソガキ。


「いや君、根も葉もないうわさを流して人一人殺そうとしただろう?そりゃ何某かの反動はあって然るべきだろう?こんにちは、私がその反動です。覚える必要はないよ。」

 

 なんだこのガキ頭いかれてるのか?


「妥当な反応だというのに、どうしてだか不愉快だね。まあいい、簡単に人殺しができる自動車には免許が必要だろう?うわさに免許がないのはどうしてだと思う?それ相応の報いを受けるからだよ。」


 いやなに?なんだよ!!


「まあなんだ、せっかく出張ってきたのだから、うわさの恐ろしさを存分に味わうといい。ああ、大部分が事実で、自業自得なのが面白くないなあ・・・やはり恐怖は理不尽でないと・・・」


「ほら留美、さっさと私物を片付けたまえ・・・お前、今までこんなに上手く仕事してるふりしてたんだな・・・お前の仕事を肩代わりしていたのは誰だ?謝罪の一つも入れないと・・・この忙しい時に仕事を増やしおって・・・」


 あれ?あのクソガキは?・・・いや、とにかく会社を出なければ。このままだと他のやらかしも見つかってしまう。逃げないと・・・どこかに逃げないと・・・

 

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