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51,竜ヶ丘観光 2


 お昼は商店街に入ってすぐくらいのお店で摂ることにした。出された料理は今までにない見た目だけど、麺類であることに間違いはなさそうだ。ただ、パスタ系ではなさそう。



「これは?」

「天ぷらうどん。フェリーチェたんは小麦粉練って細く切ったやつをちょっと茹でるとできるって言ってたからやってみたんだ」

「また雑な……」


 ほんとに料理できない人だったんだな、フェリーチェ。

「実際そんな雑な説明でできるわけなくてさ、何年もかけて改良して、今の形に落ち着いたんだ。フェリーチェたんからも合格貰ったから、かなり再現できたんじゃないかな」


 味も濃すぎず、アッサリしていて食べやすい。この天ぷらにも合う。

「美味しい!」

「サージスの料理って味濃かったんだな」

「こっちの方が健康に良さそうだ」


「うん、フェリーチェたんの国の料理は健康に良いって有名だったらしい。今のサージスは素材の味を殺すくらい大量の調味料を使うから、正直寿命を縮める食べ物ばっか溢れてる」



 寿命を縮める……こわっ。すぐにでも料理をこっちのにしたいけど、サージスは濃い味が好きな人多いからな。フェリーチェの国にも濃い味の料理はあったとは思う。でもサージスほどではない気がする。


「俺も、健康を意識して食事した方が良いんだろうな」

 いつの間にかスープまで飲み干していたレオンが呟いた。

「不健康な料理ほど美味いっていう言葉があるくらいだけど、何事も限度が大事だよねー。一回支配下におかれちゃうと、どうしても元の伝統文化って消えちゃうから、もう難しいと思うけど」



 じゃあ、サージスも昔は健康志向だったんだな。何が極貧国だふざけんな。食に関しては今の方が圧倒的に終わってんだろ。


 俺の領では料理に関しても技術支援を頼もう。

 馴染みのない料理であったにも関わらず、全員が完飲した。とにかくスープが美味すぎる。




 午後からはまた観光だ。グラスは着物に合わせて借りた巾着袋に入れて持ち歩いてる。



 今度は博物館に行くことにした。竜ヶ丘建国から今までの歴史的遺物を展示しているらしい。竜ヶ丘は面積がサージスよりもずっと大きいから時代とともに廃村となる地域もあるんだとか。そういう地域から発見された物が飾られている。


 焼物や武具が大半だけど、絵なんかも展示品の一つ。


 あ、フェリーチェだ。本人の等身大、と説明文付きの、どでかい肖像画だ。神獣と一緒に描かれている。こうやってよく見ると、身長高ぇ……。アスベル様と同じくらいじゃないかな。いや、それよりも高いか。



 展示台の上に「歴代守護者」と書いてあるが、もしかして俺も………。いや、これの隣に立つの!? 頭2、3個分くらい俺身長低いんだけど。俺のが並ぶの想像すると圧倒的親子感……。



 初代 フェリーチェ・サージス

 二代 ハル・ペリペドット



 みたいな感じか。そのうちこのフロア埋まりそうだな。200年ごとに生まれるようになるから。身長は来世に期待するか。


「フェリーチェ王は……これを知っているんでしょうか」

「オブシディアンのことですし、許可は取ってると思いますよ。台紙の下の方に直筆らしきサインもしてありますし」



 あまり大きくはないが、フェリーチェと書いてある。書くってことは許可を下ろしたってことで良いだろう。


 2時間くらい博物館で展示品を見たら、軽食。今回は団子を食べにいった。団子類に似ている何かはサージスにもあるが、ここのとは全然違う。ほんのり甘いくらい。甘さ控えめな団子とほろ苦な緑茶。合いすぎる。美味い。


 店先に用意された木材のベンチに腰掛けて、寛いでいると、ルイ先生達もやってきた。どうやら、オブシディアンにお勧めされたらしい。


 分別と書かれたゴミ箱の指示通りに捨て、近くの公園で時間潰し。東屋で直射日光を避け、冬の冷たい風を楽しんだ。ちょい寒。




 5時に合流したら温泉だ。俺達が泊まる旅館の温泉でも良いが、大人数だし、大型温泉施設に行くことになった。食事等も、予め伝えておけば出してくれるそうだ。

 昼までの間にそれもオブシディアンがやってくれていた。ありがたい。温泉には他にも魔族のお客さんが何人かいる。


 ぱっと見、女性の客が多そうだ。大浴場で2人だけもいうのも何か寂しいだろうし、まあ良いんじゃないかな。



 入ってすぐ、脱衣所の広さに驚いた。俺の部屋より大きい。オブリガード家の部屋と同じか、それ以上くらいある。

 縦に長いロッカーにはハンガーと籠が置いてあり、ここに服や荷物を入れるようだ。着物はあまり皺にできないからこういう配慮がなされているのだろう。わざわざ、他を汚さないように、と外履き用のスペースまで用意してくれている。


 細やかな配慮に感動しつつ、浴場の扉を開ける。

 広くね……? 想像の数倍広いのだが。え、湯船いくつあんの?



 早く浸かりたい気持ちを抑え、先に体を洗う。石鹸も大量にあった。柑橘系、ハーブ系、フラワー系などの匂い付きから無香料まで様々。俺は無香料を選んだけど、大体皆ハーブ系を選んでた。


 レオン曰く、サージスで流通している石鹸のほとんどがハーブ系の匂いがするから、だそう。嗅ぎ慣れた匂いだから落ち着くのかもしれない。

 石鹸の泡をしっかり流したら満を持して入浴。足をつけてびっくり。思ったより深い。底の方に座ったら溺れる。

 仕方なく、浅い場所に座った。肩までは浸かれないけどまあ、これはこれで熱すぎなくて良いか。



 フェリーチェくらい身長が高ければ座高で何とかなったんだろうけどなぁ。

 入浴から少し経って、オブシディアンが俺達に声をかけた。



「露天風呂、空いてるよ」

 オブシディアンの案内で外に出ると、雪が降り始めていた。風も冷たくて凄く体感温度が低いから、今浸かったら絶対気持ち良い。


「あ゛ーーー……」

 気持ち良い。とてつもなく。暖かくて、上がりたくないくらい気持ち良い。根っこ張ってるんじゃないかってくらいもう動けない。



 あー……。ウトウトしてきたな。今日、はしゃぎすぎたかも。このまま……。



「おーい。ハル、寝るな。のぼせるぞ」

 ラッシュに肩を揺すられて覚醒。やば、寝そうになってた。

「ぽわぽわしてないで、ちゃんと歩けって」

「んーー……」


 まだ頭が完全に働いてないけど、何とか歩き、脱衣所に戻った。ふわふわする意識の中、これは絶対に作る。そう決意したのは覚えている。でも、その後から記憶がない。


 気がついたら旅館の布団の中にいた。ん?寝てた?俺。ヘルガさんが隣で寝てる。時計を見ると、まだ朝の4時。よし、寝るか。再び訪れた睡魔に抗うことなく俺は横になった。





「ハルさん、ハルさん。朝ですよ。起きてください」

「ん゛ー……」

 寝ぼけ眼で時計を探る。短針は、午前7時を示していた。

「起きます……」


 朝食は8時からだそう。それまでに帰宅準備とか済ませておきたい。街の構造をメモしたのもちゃんと纏めないと。竜ヶ丘の街は俺の領地作りの参考になりそうだから、綺麗に清書したい。




 帰る準備をあらかた終えたところで朝食の時間だ。見慣れないものがたくさん出てくる。何が何だかわからなくてメニューを見てみると、ご飯、味噌汁、焼き鮭、卵焼き、おひたし、漬物、と書かれていた。うん、わからん。


 でも、これが美味しそうだということに変わりはない。コース料理と違って一気に出てくるのも良いな。好きなタイミングで色々なものが食べられる。


 サージスは基本コースだから、それだと前の料理が食べ終わってから運ばれてくる。食べたくても、さっき食べちゃったから食べられない、なんてこともあるのだ。でも、これだと一緒に食べることができる。とても画期的な案だと思う。



 タウンハウスで料理人を雇うことが出てくるはずだが、その時はコースは嫌だと伝えておこう。カントリーハウスのキッチンは代替わりするまで父さん達に使わせてあげたい。


 この、ご飯というやつは焼き魚によく合う。国産米だったっけ?竜ヶ丘の米は美味しい。水が良いのかもしれないな。パンに比べて喉がパサパサしないし、噛めば噛むほど甘味が出て、腹持ちも良さそうだ。出された緑茶も温かくて美味しい。



 これは……国交が再開したら、観光客が増えるだろうな。俺の所は竜ヶ丘と差別化したいからまた考えないとな。博物館は作りたい。竜ヶ丘ではなく、サージスの歴史を伝えられるような博物館。


 オブシディアンに協力してもらって、過去の資料を集める。人件費のために入館料は取らざるを得ないけど、学生は割引きとかにすればいける気がする。やってみないとわからないけど。

 後は全く考えてない。また会議だな。






「「ありがとうございました」」

 女将さんにお礼を言って、着物を返して、オブシディアンに挨拶をして、俺達は帰路に着いた。



「楽しかったな」

 黙って歩く俺達に、レオンが笑った。

「また行きたい」

「だな。あんな風に歓迎されるとは思ってなかった」

「僕もです。公爵家という立場がなければ移住を検討していたくらいに」



 そんな風に感想を言い合う。良かった。皆が魔族を認めてくれて。魔族が俺達を認めてくれて。


「ハルの領地はどの辺りにしたいとかありますか?」

「竜ヶ丘と交流をするからなるべく竜ヶ丘側にしたいかな。交流が正式に決まればラ・モールの森に安全な一本道を作る予定。俺がいなくても王都まで行ける転移魔法も完成させたからうちで働いていても、簡単に王都に出られる仕組みもどこかには置く」



 ルイ先生に頼まれたなぁ。あれは大変だった。旅行前に完成させたくて予定カツカツに詰めてやってたから。


「じゃあ僕、ペリペドットで働こうかな」

「え、シエルも?」

「も?」

「僕も、ハルくんの領地に引っ越し立候補しました」



 ルイ先生がずいっと出てきて主張した。

 「ルイが行くなら……」とカリウ先生もが手を挙げてしまう始末。ステラはレオンの騎士に選ばれているそうなので後継には問題ないんだろうが、それで良いのかシエル。



 これは、高位貴族役人用の施設が必要になるな。俺のとこで働くのに引っ越しをするなら、家がなくなる。ここでもまた、フェリーチェの設計図が役に立ちそうだ。フェリーチェ、料理は壊滅的だったけど建築技術は凄そう。

 趣味でやっていたのか、仕事としてやっていたのかわからないが、丸パクリさせてくれるのは嬉しい。



 何か……ちょっと考えただけで途方もない時間がかかるんだろうなってことがわかる。いったい何年かかるのやら。




今回の登場人物

・ハル・ペリペドット(13歳)

・マリア・ペリペドット(10歳)

・ヘルガ(15歳)

・レオン・サージス(13歳)

・シルヴィサージス(13歳)

・ヘンリー・アイクランド(14歳)

・シエル・オブリガード(13歳)

・ステラ・オブリガード(13歳)

・テリー・ペステッド(12歳)

・ラウル様(14歳)

・ラッシュ(11歳)

・カリウ先生

・ルイ先生

・オブシディアン


※アスベル・オブリガード→身長182cm

 フェリーチェ・サージス→身長195cm

参考までに

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