41,守護者お披露目パレード
その日、サージス国全土に激震が走った。守護者再来の。
どうも、守護者ことハルです。家族に事情を説明した後何度かライゼン様達と話し合いを重ね、今日、3月40日の朝、国全土にライゼン様が守護者について大々的に発表した。まあ、子供が学園に通ってる貴族は既にほぼ全ての家が知ってるけど。
何でも、建国記念日らしい。聞かされるまでそんなの知らんかった。フェリーチェが1200年前の今日、サージス国を作ったなんて想像できない。
ということで今日は国を挙げてのお祭りになるようだ。王都だけでなく俺は、郊外の各領地にも転移で向かい、お披露目を行うらしい。
そうして守護者として認知された後、翌日の41日に貴族に向けて改めて俺の紹介をし、爵位を貰う。話し合いの結果、領地は俺のタイミングでどこが欲しいか申告すれば良いことになった。
貴族へのお披露目パーティーの段階で、今後の守護者の出現予定についても知らせようと思う。そしてヴィーネ神についても。邪神信仰派を牽制しないと後から俺が面倒になる。何回人生繰り返しても信仰心回復に走り回らなければいけないなんて地獄、ご免だ。
俺のお披露目パレードってことで全ての学校は休みになっている。店も一部を除いて休みのところが多い。飲食系と装飾系は割とやる印象。飲食系はそのまま、飲食物の提供をする。
装飾系はレオンの時もやってたけど花吹雪用の花だったり花を使った、平民でも比較的楽しみやすいジャンルのものだ。宝石とかじゃないのでご安心を。
「ハルって何の花が好きなんだ?」
各地でパレードをするために、無限牢獄の自室で着替えていると、ラッシュにふとそう聞かれた。因みに元の家は退去した。もうこっちで事足りるしもう少ししたら屋敷の建築も始まるから。
「花か……鈴蘭、かな。花言葉が好きなんだ」
「へぇ……花言葉は何?」
「再び幸せが訪れる、だった。ラッシュにはもう言ったけどさ、俺の逆行の話」
「ああ、聞いたよ」
「逆行して、守護者だって知らされて、今度こそ皆を守るんだって決意した。四つ葉のクローバーとかもそうだけどさ、幸せを意味する植物って大好きなんだ。
だからマリアから誕生日プレゼントにそれの押し花の栞を貰った時、ほんとに嬉しかったんだよね。今でも毎日眺めて心落ち着けるくらいに」
「そうか……守護者って本当に、その、プレッシャーあるんだな」
「まあ、あるな。10年以内に来る魔物のクラスターに向けてやらないといけないことが多い。レオンより気楽な立場とはいえ、立場上国民の命を守る責務があることに変わりはない。どうすれば皆が死なずに済むだろうか、どうすれば理不尽に傷付けられる人が減るんだろうか、そんなことばっかり考えて一時期は病んだりもしたし」
自分如きに何ができるんだ、ってな。
「俺に何かできることは?」
「俺を置いて死なないこと、マリアと結婚して2人で幸せになること。この2つだけは最低でも守ってほしい」
「善処するよ。それじゃあ、パレード頑張れよ」
「ああ、頑張る」
緑と白を基調としたデザインのコートの袖には金色で鈴蘭の刺繍が施されている。緑はペリペドットの色で、鈴蘭は家紋に取り入れた植物。大徳という地位は紫らしいけどペリペドットは緑の宝石からきた名前だから家の色は緑にした。
マリアがパーティーに出る時は緑基調で鈴蘭の刺繍がされたドレスを着る。想像しただけで大優勝。く、ラッシュが羨ましいぜ。想像だけでもあんなに可愛いマリアのエスコートが現実できるなんてよぉ。
はあ……んなこと言ってる場合か今は……。よし、行くぞ。
「お待たせしました、ライゼン様、セリア様。どうでしょうか」
「おお! 似合っているじゃないか!」
「ええ! 凄く大人っぽく見えるわ!」
「ありがとうございます。緊張しますが、行ってきます」
あえて城の窓から出た。ソウルに乗って。四つ足で、飛べる生き物はこの国にいない。ソウルを見て普通の生き物でないことは容易にわかるだろう。
上からサージスの王都がよく見える。皆、レオンのお披露目パレードの時みたいに道路脇に集まって俺を待ってる。
「行くよ」
ソウルにそう言って、皆が見える位置に降り立った。いきなり現れた俺に一瞬驚いた様子の観衆だったが、その直後、大歓声が上がった。父さんの屋台の常連さんもいたし、俺の屋台の常連さんも皆祝福してくれた。
そして、暫く進んであることに気付いた。7割以上が手に鈴蘭の花を持ってる。俺の鈴蘭好きって国民に知れ渡ってたか?もしかして。あ、確か俺の屋台に鈴蘭の花瓶置いてたかも。それで知ってる人いたのかな。
んーー……だとしてもこんな一瞬で用意できるものなんか? 花って。まあ、俺の好きな花を皆が持ってくれてるって事実だけで嬉しいからそれに至るまでの過程はどうでも良いけど。
そうだ、今日、夏の暑い中集まってくれたんだし何か披露しようか。
やっぱり冷たいものが良いな。氷とかどうだろう。氷属性っていうのはないけど水属性の派生として氷魔法は存在する。氷の鳥を風属性で飛ばそう。俺は氷で大きな鳥を作り、再生・治癒属性で白く着色して飛ばした。それは観衆の上空を旋回し、やがて砕け散った。本番はここから。破片が小鳥になって飛び回り、外気温を数度下げた。
わあっと再び歓声が上がる。喜んでくれたかな。
数時間でゆっくり王都を周り、今度は転移で、許可の得られた領地でパレードを行う。訪問許可が降りたのは邪神信仰派以外の領地。建国記念日前後は領地に戻る貴族が多いから訪問許可は簡単に取れた。
各領地では領主への簡単な挨拶なんかも含まれている。だから、改めて顔見知りのイーサン様にも、魔法具関連で何度か交流したモッシュ侯爵様の所にも挨拶に行く。「2代目守護者です」とね。
地域によって手法は違ったけど、どこに行ってもヴィーネ神信仰派の人ばかりだから皆思い思いの方法で歓迎してくれる。だから俺も出来る限りそれに応えた。
サージス国は王都が南に寄ってるのもあって北に領地を持つ家はない。北の方はほぼ国営だ。貴族の領地じゃないからといってパレードを行わないのかと問われれば答えは否だ。
今は夏だが北の地域では雪が降っている場所もある。南の地域と違って氷をばら撒くわけにはいかないから積もった雪を氷魔法で氷に変えて彫刻を作った。主に動物。
ちゃんと喜んでくれたし、どこまでが本気かわからないけど「また来て」的なこと言われたから歓迎はされたと言って良いだろう。
少なくとも、どこに行ってもヴィーネ神信仰派貴族の領地なので悪意はあまり感じられなかった。
それどころか自分の作った花冠や花束をくれる子供もいた。お陰で俺が戻った時には大量の土産に囲まれることに。
「豪華になって帰ってきたな」
「まあね。皆親切にしてくれたよ」
自室に戻ると待機していたラッシュに花束達を預けて急いで着替えた。これからまた城に行かないといけないのだ。今回の手ごたえを教えてほしいと言われたので。
「あ、母さんに夜は向こうで食べるから戻らないって言っといて」
「りょーかい。花束は分解して花瓶に刺しとけば良いよな?」
「ああ、お願いするよ」
今日の夕食は生姜焼き。ライゼン様が何を食べたいかと俺に聞いてきた時、ダメ元でリクエストしたのだが、しっかり出てきた。
やっぱり新鮮な野菜は美味い。千切りキャベツをこれほどまでに美味しく活かせるのは唐揚げと生姜焼き以外にはないだろう。
夕食が終わると今日のパレードについての話が始まる。
「それで、感触の方はどうだったか?」
「俺が平民出身と知っている方も、知らない方も、同様に歓迎してくれましたし、サプライズも喜んでくれたかと思います。北の国営地の方ではまた来てほしいとのことでした。お花も沢山頂きました。あ、花と言えば……皆鈴蘭を持っていたんですけどあれって何か意味があってのことですか? 偶然俺の好きな花と被っていたんですけど……」
「ああ、あれはアスベル発案だ。ハル君の好きな花を持って驚かせてやろうって言ってたからな」
俺好きな花って何か言ったっけ。もう誰に何を言ったか覚えてないわ。
「あのサプライズには驚きましたよ。鈴蘭は家紋に取り入れようと思っている花でもありましたから」
「そうなのか。因みに何で素朴そうな鈴蘭なんだ? 貴族は男も女も薔薇とか主張強めの花を選ぶ傾向にあるのだけど」
「薔薇ね……確かに薔薇は豪華だけど、鈴蘭は花言葉で好きになったんだ。再び幸せが訪れる、だって」
ラッシュにも同じ話をしたけどレオンには逆行の話をしてないから、あの前提条件はすっ飛ばした。十分これでも通じるしな。薔薇はプロポーズとかに使われるだけあって、愛に関する花言葉が多い。ものによっては恨みだったり尊敬だったりと色で意味があるけど基本的に愛だ。本数にしろ、色にしろ。
でも俺は「愛」という概念がわからない。家族内や友人との仲を愛というなら多分わかるけど、身内で薔薇の花を贈ることはしない。となると後残るのは夫婦や恋人。恋愛ができない時点で俺にはわからないものだ。
「ああ、花言葉の方か」
「そう。見た目も確かに大切だけどその意味が不幸を意味するものじゃないかも大切にしたいんだ」
「ハルは変わらないな。不幸じゃないことを重要視するところ」
「レオンもだろ? 俺はレオンより気楽だけど一応立場上は国民の命を体張って守る奴なんだから、人の幸せくらいは願うよ。俺の幸せを願ってくれる人はいるからな」
俺自身で願わなくても家族や友達が願ってくれる。だから俺は何の心配もなく戦える。
「ハルがいてくれるならこの国は安全だな。騎士からも慕われてるんだろ? で、今日明日のお披露目で、更に慕われることになる。あの策は画期的だし、協力してくれる人はきっと沢山いる」
「避難所だよな」
「ああ、何度か実験はして現在報告書作成中。第一次報告書はお披露目パーティーが終わってから提出するつもり」
暫くレオンと話していてふと思った。ライゼン様達の存在を完全に忘れていた。あまりにもすっと気配を消すからつい、蚊帳の外で話し込んでしまった。
「す、すみません……」
「いや構わない。寧ろ、友達が少ないレオンの話し相手になってくれるのは親として嬉しいからな。で、明日のパーティーの準備はどうだ?大丈夫そうか? 明日は全員出る予定だが」
「両親は多少緊張していましたが多分大丈夫です。マリアは渡したドレスを気に入ってくれたようで、楽しみにしていましたよ」
「そうか。それじゃあ明日、話し合い通りに」
「はい。それでは、失礼します」
そう言ってオブリガード公爵家の自室に戻った。何度も行き来して、慣れた場所なら地図タップなしで転移できるようになった。これはかなりでかい。
明日に備えて寝よ。
今回の登場人物
・ハル(12歳)
・ラッシュ(10歳)
・ソウル
・レオン・サージス(12歳)
・国王夫妻




