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39,監禁宣言


「ここは……?」

「俺の秘密基地。今はラッシュの家族と俺の家族も同居してるけどな。自分が住みやすいように弄ったら牢獄感消えた。ああでも、外には出ない方が良い。魔物も捕らえた奴いるから」

「あの魔物ですね……」



 少し苦笑したヘルガさんと全くわかっていないレオン。

「ここが俺の場所である限りは安全だ。けど、一応念のため、な。それじゃあ顔洗ってくるよ」



 俺は一言告げて併設された洗面スペースに入った。

 再生・治癒属性を付与した水魔石から水を出し、顔をパシャパシャと洗う。すると、泣いて赤くなってしまった目元はすぐに消えた。便利だな、これ。この水で洗えばスキンケアしなくてもした人と同じくらいの肌を保てるなんてさ。


「お待たせ。……? レオン、何してんの? そんな所で」

 レオンは部屋の隅に行ってクッションを抱き締めていた。トラウマから怯えている、という訳ではなさそうだが……だとしたら何?



「こぢんまりとした部屋も良いな。俺の部屋は広過ぎて落ち着かない。それに、床に座っても汚れないなんて、夢みたいだ」

「うちは土足厳禁だからねぇ。絨毯に寝っ転がれるよ」


 壁と壁の隙間にピットリと収まっているレオンを引っ張り出して、フワフワの真新しい絨毯にゴロンと転がす。


「ああ……至福……!」

「レオン専用の部屋も用意しようか? シルヴィは何度かマリアの部屋に泊まってるから部屋、というか荷物置き? は用意したんだけど。現実逃避部屋も必要じゃない?」  

「良いのか?」

「ああ、そんなに大変じゃないし。別棟を作るから俺の家族とか気にせず建物の中は好きに出歩いて良いよ。ヘルガさんはどうですか? イディスさんも。ここなら冬は暖かくて、夏は涼しくて、正直言って城の客室より快適ですよ」



 城は快適じゃないわけではないのだが、部屋が広いせいで落ち着かない。決して空調設備が整っていない訳ではない。ペステッド商会が確か扱ってるから涼しいし暖かい。


 それを上回る程に、誰かに見られている感がするのだ。これわかる人いるんだろうか。広い部屋だと監視されてる感強い人。俺はそのタイプ。


「しかし……。アルバーン伯爵家が消えた時点でイディスを狙う人間はいなくなったと思うのですが……」

 ヘルガさんはこれ以上は……と言った風に渋る。俺も無理強いはしないけど公爵家で一緒に住んでいるからヘルガさんのいない生活に戻れないというか……。



「実は俺、学園卒業後にヘルガさんのいない建物で生活するっていうビジョンが見えなくて……。ヘルガさんのは俺の自己満足で作りますね」

「い、いえ! 僕もハルさんの負担にならないのであれば是非お願いしたいです!」

「本当ですか! ありがとうございます!」

「何でハルがお礼言ってんだ……?」



 そろそろ戻るか。ここでは時間が進まないけどあっちではポカンとしたライゼン様達が待ってるだろうから。


「お待たせしました。落ち着きました」

 魔法を解除し、もといた部屋に戻った。

「あ、ああ……。い、今のが守護者様の独自属性なんだ、よな……?」

「はい。資料によると、昔は海から遠く離れた土地に海鮮などを届ける際に使われていたそうです。シメてしまうと腐りが早いので生きたまま中心部まで運び、各店舗に運ばれて注文がきたらその場でシメていたみたいです」



 改変されてなければだけど、流石にこれは本当だろう。使える人が1人しかいなければ何かヤバいこともしようがないし。

 そもそも漁業に使用してましたとか全てを他人にやってもらってばっかりのその辺の貴族が思いつく訳ない。


「生きた魚が入るなら人間も入るだろう。同じことを前も聞いたが、本当にそういうことなのか?」


「はい。初めて資料で見た時に自分で試してみました。許可した者以外、つまり部外者は入れないのでとても都合の良い能力ですよ。この魔鉱石もあることですし。王都よりも郊外にある各領の方が危険が多いのでいざというときの避難場所として使えるのではないか、と。

 ただ、不安なのが貴族と平民が同じ空間に入ることになるので邪神派が何を言ってくるかが問題です。文句を言ってくる人間はどうなっても良いと思っていますが巻き込まれる方はたまったものじゃないでしょうし」


 俺はこの前の食事会で話したことをもう一度伝えた。事実として魔鉱石は貰っている状態だが、今の考えは何度言っても良い。あとイーサン様には話してなかったから。


「そうか。実験の方はどうだ?」

「サークルを欠席してラ・モールの泉付近で行う予定です。何度か検証をして効果がわかったら報告します」

「ありがたい」



 問題は、それをどこに捩じ込むか。貴族になる手続きは早めに行われるだろうし、パーティーにも主役という形で参加しないといけない。魔鉱石に一応魔法は込めているが、いつ使うかが問題だ。魔物はいつ溢れてもおかしくないのだから。



 夜中にこっそり行くか。流石に夜中に叩き起こしにくる奴はそうそういないだろう。

「ハルさん。何を考えているかは何となーくわかりますが、毎夜毎夜抜け出していたら気絶させてでも寝かしつけますよ」

「は、はい……」


 こ、こわぁ! ヘルガさんがその顔で言うと本気でやりそうなんだよ……。いや、確実にやるな。俺に一番容赦がない。流石。トラブルメーカーの俺の隣に6年以上いただけある。肝の座り方が異常だ。



「ヘルガ……やっぱり変態なんじゃ……」

「違う。変態じゃない。ハルさんはすぐに顔に出るから。嬉しいことに、僕達の前ではポーカーフェイスが行方不明」

「まあ、それはわかるけど」



 レオンにもわかるの!? ど、どうしよう……。

「ふふっ……そういうところですよ。安心してください。ハルさんは親しい人がいない時は大体無愛想で塩対応なので」

「で、でも作り笑顔はしなきゃですよね!? 無愛想じゃ駄目ですよね!? ど、どうしましょう……」


 解決案は!? このままじゃ俺、禁忌を犯すことになる! ポーカーフェイスが苦手でしたなんてそんな間抜けな回答できるわけない!


「会場にいる人間全員を人型の魔物と思えば良いんじゃないですか? 魔物を前にしたハルさんは魔物以上に恐ろしい笑みを浮かべるので、もう笑わなくて済むかもしれませんよ」



 ヘルガさん……。俺は貴方が怖い。よくそんなことを笑顔で言えるな。俺がオークをのした時のテロ行為と比べ物にならない位の被害者が出るぞ。

 俺の笑顔と魔物とを比べたらトントンくらいだって言ってるようなもんだよな。


 でも、それもまあなしではないよな。

 寧ろ無理するより良いか。俺=笑顔が不気味、になるのは不服ではあるけど顔が筋肉痛になるのを防止するためにもやむを得ない措置かもしれない。




「おほんっ。とにかく、手続きとお披露目パーティーに関しては最速で行う。ご両親にもその旨を伝えておいてほしい。流れとしては、ハル君のお父さんに一度爵位を渡してその後に守護者様であるハル君に爵位を譲渡する。ペリペドット大徳家からのみ守護者様が生まれるなら家は継続、3代目以降がそこから生まれないのであればハル君の代限りになるな。そして、その家が治めていた土地は国の管轄になる」



 つまりライゼン様→父さん→俺→???ってなるわけだな。もしまた俺が平民に生まれたら今回みたいなことしないといけないんだな。めんどい。


『神、守護者って生まれる家固定できるの?』

『それくらいならできるわ。その代わり、記憶が引き継がれちゃうけど良い? 前世だけでなく、前世以前の記憶も。フェリーチェは記憶の引き継ぎは望んでいなかったからランダム設定にしたのだけれど』

『いや、俺はフェリーチェだけどフェリーチェではないから。固定できるならして。精神的にも多分、記憶がある方が楽だろうし』


『ハルがそう言うなら……えっとね、生まれる家を固定すると生まれる周期も固定されちゃうけど良い?』

『何年ごと?』

『200年よ』

『結構短いな。フェリーチェと俺の間が空いてたかもしれないけどそんな短いの?』


『ええ。フェリーチェとハルの間は生まれる周期もランダム設定だったから。ここまで聞いて、変更する気はある?』


『ああ、ある。200年だろうが1200年だろうがやらないといけないことに変わりない。それなら面倒ごとは極力減らしたい』

『わかったわ。今書き換えるわ。ペリペドット大徳家、だったわよね。ペリペドット家を名乗る偽物がいない限りはこれで固定されるわ。もしペリペドット家が複数ある時はその中でランダムに選ばれるわ。その時はなんとかしてよね』

『まあ、そのくらいならするよ』 


『よし、更新完了! 設定終わったわ! 皆にも伝えてちょうだいね』

『わかった。ありがとう。それじゃ』



 そこで通信は途切れた。

「今確認を取ったところ、固定はできるようです。ただし、ペリペドット家が複数あると大徳家に生まれるとは限らない、というのと、ランダム設定から変更したので200年周期かつ生まれてきた子供は前世、前々世、それ以前の記憶も持つことになるそうです。

 つまり3代目はハルの記憶を、4代目はハルと3代目の記憶を、5代目はハルから4代目までの記憶を――と上書きされずに引き継がれる、といった感じ(らしい)です」



 10代目とかになったらキャパオーバーになりそうだけど人間そんな記憶力良くない。その頃には前半の記憶くらいは飛んでるだろう。大丈夫大丈夫。


「ハルくんはそれで良いのか?」

「はい。未来の俺は今の性格とは限らないので。俺よりも繊細な子に生まれてしまったら、ただただ可哀想です。目立つ役職にはそれなりの図太い神経が必要だと思うので」



 俺が図太いとは思わないけど、次が今より図太いとは限らない。それなら現状維持で良い。

「ハル……」

「レオンよりは気楽だから安心して。死別した友達の記憶が残り続けることになるから寂しくはあるけどその分今、うんざりするくらい思い出作ってもらうから大丈夫」


 王族と守護者。どちらが楽かと問われれば守護者だ。


「そう、だな……。ハルが良いならそれで良い。ハルが何でフェリーチェ王の記憶を引き継いでいないのか少しわかったから。でもそうだよな。自分の立場を理解するためにも記憶があった方が良いのかもしれないな」



 レオン……良い奴だな。

「レオンと友達になれて、良かった」

「……! あーあ……幼馴染全員で一緒に死ねないかなぁ」


 極端だな……。幼馴染ってレオン、シルヴィ、ヘンリー、ヘルガさん、シエル、ステラ、俺、だよな。7人同時は流石に無理だろ。レオンとシルヴィにはラウル様もいるんだし。全員の合意のもとに心中するのはほぼ不可能だ。仮にそれが成功しても周りは許してくれない。



「別に言ってみただけだから気にしないで」

「俺も今本当に恐ろしいこと考えちゃったからおあいこってことで」


 無限牢獄はその空間だけ時間が止まる。中では動いていても外に出れば中に入った時のまま。今、12歳のレオンを無限牢獄で監禁し続ければ俺が死んでも、いつまでも生き続ける。


 魔力の質は守護者の場合、一定になるらしいから来世以降も会うことは可能だ。こんなに素晴らしくて恐ろしい行為はない。



「ハルさんになら監禁されて良いですよ、僕は。親も家族もいませんし、死後もハルさんの側にいられるなんてこんな魅力的な話はないですよ。ハルさんに確実に会えるなら200年くらい待てますし。ああ……! 家族がいないことをこれ程感謝する日が来るなんて……!」



 身を乗り出して、俺の肩をガッチリ握るヘルガさん。怖い、怖いです。目がキマってます。ガンギまりです。そして握力強すぎて俺の肩メシメシいってる。ついでにサラッと心を読まないでほしい。


「ヘルガ、生き続けるのも楽じゃないと思うけど」

「ハルさんに会えなくなるか、ハルさんを忘れて来世を生きるくらいなら生き続けて病んだ方がまだ良い。待てば会えるんだから縛られたいし、縛りたい。200年は無限牢獄の中でガーデニングでもしようかな」



 縛られたいし縛りたい、か。共依存ってやつか?別に縛られるのは悪い気しないな。それだけ俺を想ってくれてるってことだから。


「ハルも満更でもなさそうだな」

「リスクを承知で人に、縛ってほしいし縛られてって言われたら嬉しいだろ。レオンは嬉しくないのか?」


「んー……200年は長いかも。また生まれてくるまでは1人で空白を生きないといけないわけだから。でも、ヘルガの言うことも理解できないわけじゃない。俺も好きな人がいたら、きっとそう思うだろうしな。それを可能にする力がある程想いも強くなると思う」

 レオンに好きな人……? あんまり想像できないな。でも、好きな人ができたとしても結婚できるとは限らないし、レオンには政略結婚でも幸せになってほしい。



「というわけなので、ハルさん。検討してくれませんか?」

「ヘルガさんが20歳になって、気持ちに揺らぎがなければ実行します」


 俺の2歳上だから今は14歳。あと6年。6年あれば多分考える時間としては十分。それに、もし嫌になっても俺がいる限りはいつでも出られるから大丈夫。


 監禁宣言をした俺に、喜ぶヘルガさん。俺達を引き気味に見る大人達。隠していた正体がバレた後とは思えないくらいのくだらないやり取りだった。でも、それが良いんだよな。





今回の登場人物

・ハル(12歳)

・ヘルガ(14歳)

・レオン・サージス(12歳)

・イーサン・アイクランド

・アスベル・オブリガード

・国王夫妻

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