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14,守護者 ライゼンside


 私はライゼン・サージス。サージス国の18代目の国王だ。

 先日、私は大切な人を1人失ってしまうところだった。6歳の息子、レオンだ。この国の王子は6歳になるとお披露目パレードを行い、平民の街をぐるりと回ることになっている。私も6歳の誕生日に同じことをした。



 その前もその前の前も、何事もなく無事にお披露目パレードは終わっていた。だから安心していた。それが間違いだと気付いたのは騎士から連絡を貰ってから。


 レオンが襲撃されたそうだ。相手は人間かどうかもわからない。突然現れて騎士全員を気絶させる程の腕だったそうだ。報告を貰った時、唖然とした。レオンに付けていた騎士は厳しい試験に合格した精鋭の中でも更に群を抜いて腕の立つ私の護衛騎士達だ。そんな彼らでさえ全くもって歯が立たなかったのだ。


 そんな状況でレオンの安全が保証される訳がない。最悪のことも考えなければならなかった。

 妻と娘は泣き崩れた。まだわからない、そう言いつつも私も内心諦めかけていた。


 そこから、永遠とも思えるくらいの時間が経ち、騎士が戻ってきた。レオンは気を失っているものの、無事だったそうだ。それを聞いて「そんな馬鹿な」と思ってしまった。



 パレード用に作られた馬車の中にいたそうだ。見知らぬ平民の少年と。茶色の髪に緑の瞳というサージスの平民に多い配色で、整ってはいるものの特に目立つ顔立ちでもなかったとのことだ。


 現在は彼から話を聞いていると思う。息子の無事をこの目で確認し、改めて安堵の息を漏らした。数時間もすれば問題なく会話ができるまでになった。

 その話に私を含め、その場に居合わせた全員が驚愕した。突然空が暗くなり、黒い服を纏った男が「器を見つけた」と魔法を放ったそうだ。この時点で護衛は1人残らず気絶させられており、本人も死を覚悟していた。だが、レオンは死ななかった。その平民に守られたそうだ。



 急いで連れてくるように言った。今すぐに礼を言わなければ。たが、私の指示不足のせいで息子の命の恩人は拘束された姿で無理矢理連れてこられたようだった。急いで風呂に入れさせた。今回の対応は私の責任だ。騎士ですら歯が立たなかった鬼のような者を倒したお方だ。怒らせたらどうなるかなど子供でもわかる。


 どうなるかと内心ビクビクしていたが危惧していた事態にはならなかった。

 その後、礼と称してその少年、ハル君と、一緒にいたというヘルガくんを夕食に招待した。2人を見た私も、家族も驚きを隠せなかった。所作や佇まいが違う。彼らは普通の平民ではない。少し調べる必要がありそうだ。そんな思惑を隠しつつ、その日の夕食会は終わりを告げた。



 何回か交流したところでとある贈り物を受け取った。丁寧に梱包されたそれの中には何かが入った瓶が一つ。開けてみると甘酸っぱい匂いが鼻腔をくすぐった。瓶の外に貼られたラベルには「いちごジャム」と書いてあった。パンのイラストとお手本のような綺麗な文字で。



 ラベルの指示する通りパンに乗せて食べてみたら吃驚。急いでハルくんを呼んだ。彼のオリジナルだそうだ。レシピを買い取りたいと言ったら平民の自分に不利にはたらく可能性があると失敗してしまったが作ったジャムを買うことには成功した。


 今までにない食感で、新しい物が好きな大多数の貴族からのウケが良さそうだ。

 暫くは個人購入で、此方は2人の夢の手助けをすることにした。功績次第では貴族としての地位もあり得る。これからの成長に期待出来そうな2人だった。



 2人の優秀具合は授業でも発揮された。マナーは担当であるポリー夫人が合格を出す出来であったしハルくんは外国語もほぼ完璧だったそうだ。その後にあった数学教師との騒動で一時はどうなることかと思ったが、法で裁くこともできた。


 しかし、彼女の口から飛び出したらしい「生け贄」についてはまだわかっていない。

 反対派の貴族は一体何を考えているんだ。ヴィーネ様がレオンの襲撃を事前に知らせていたお陰でこの国は第一王子を失わずに済んだ。それを貴族に公表した結果、反対派はニつに分かれた。


 一つは中立派になり、もう一つは未だに反対派を貫いている。生け贄は反対派を貫いている家のどこかがやっているのだろう。今はそれ以外何もわかっていない。もう少し調べる必要がありそうだ。


 ついでにヘルガくんについても調べてみよう。生け贄の話になった時の反応は無関係とは言い難そうだった。それは加担したことが露見することを恐れているというより、被害者としての反応のような気がしてならなかった。平民と名乗っていたが、彼の佇まいは貴族の子供と同等だった。もっと多くの情報が必要だ。


 表面上は取り繕い、裏では調査させる。2人を騙すようで申し訳なかったが生け贄の話が出た以上は仕方あるまい。


 それに今は学校設立でどこも忙しい。余程のヘマをしない限りは此方の思惑が流れることはない。学校はハルくんが提案したそうだ。カリウ君の授業スタイルを見て思いついた、と。懸念事項もあったがハル君とヘルガ君の案によりそれも無くなった。本当に不思議な子達だ。



 特にハル君は。先程、あの2人から魔法具を貰った。護身用のピアスだ。前後から挟むタイプの物なので体を傷つけずに済む。


「本当に美しいわね」

「ああ、何故こんなに高価な素材を手に入れられたのかは全くわからないし何故作れたのか、どうやって作ったのかもまるで検討がつかない。あの場で言及することは憚られたが確認したいのが本音だ」

「父上、俺は何があろうとも、ハルとヘルガが何者であっても友達であることに変わりありません。あまり余計な事は言わないで下さいね」



 今後の事を考えていると何かを察したのか、レオンが殺気混じりで警告してきた。こんなことは初めてだ。それ程までにあの2人の影響は強いのか。普段はそんなレオンを制御するはずのシルヴィも今回は完全同意を示す。


「安心しろ、私はわざわざ嫌われに行ったりしない。ただ、少し気になっただけだ。直接聞いたりもしないさ」

「それなら良いのですが」


 まだ探るような視線を向ける我が子を制し、妻と2人きりになった。

「それで、本当はどうですの?」

「王家の影が調べている。影を護衛としてつけることは既に伝えてあるしもし見つかったとしても護衛だと言えばやり過ごせるだろう。頼むから普通であってほしい」

「あら? 貴族にするのなら少しくらい変わった子の方がいいのでしょう?」

「まあ、そうではあるのだが……」






『はいはーい! ちょっと良いー?』

 どこからか女性の声がした。辺りを見渡すが、妻以外は女性などいない。妻の声でもない。じゃあ誰だ。

『そんなに警戒しなくて良いよー。私はヴィーネ、一応国教よ』

「ヴィ、ヴィーネ様!? も、申し訳ございません!」

 しかし、ヴィーネ様は何故私にコンタクトを取られたのだろうか。


『ハルもヘルガ君もそろそろ隠すの無理あるって思ってるの。でも中々言い出せないみたいで代わりに言いにきたの』

「ハル君とヘルガ君に何か……?」

『ヘルガ君はちょっと複雑な一般人だけどハルは違うわ。ハルは守護者なの。だから全属性も使えるし私に対する信仰心も回復したから神獣がいるわ。まあ神獣はヘルガ君にもいるのだけれど……ヘルガ君の身の上話は今話すとハルに嫌われちゃうから教えられない。宰相? だっけ、国の偉い人と話し合ってハルのこと決めてちょうだい! 私はよくわからないから! あ、あとそのピアスは2人が本当に頑張って作った物だから大切にしてね』

「は、はい……」



 それだけでヴィーネ様は帰ってしまわれた。

「お、驚いたわ……普通の子ではないと思っていたけれど……」

「まさか本当に守護者様だったとはな……。それよりもヘルガ君だ。守護者様は1人しか現れないはずなのに何故神獣がヘルガ君にも付いているのか。これからはお二人を様付けで呼んだ方が良いな」


「ええ、そうしましょう。守護者様にはどの爵位を与えるのが正解なのでしょう……」

 それは私も悩んでいるところだ。貴族の中で一番位が高いのは公爵家だ。国で一番位が高いのは王家。守護者様は私達以上のお方であるから既存の爵位では足りないはずだ。彼が望めば私は王位を退き、ハル君……いや、ハル様に譲り渡すことも可能だ。


 ヴィーネ様は宰相には伝えても良いと仰った。明日にでも呼びつけよう。サージス国の宰相、イーサン・アイクランドを。

 翌日、イーサンを「緊急」の文字と共に呼び出した。内容は勿論、あのお二人についてだ。



「ライゼン、急に呼び出してどうしたんだ? 緊急と言う割には何についてか教えてくれなかったじゃないか」

 イーサンは王の前ではあるが体裁などほっぽり出してどかっとソファーに座った。これが彼の通常運転だ。

「人払いは済んでいる。今回のことは極秘事項だ」

「ほう……。聞こうか」


 聞きの体制に入ったイーサンに、私は昨日のことを話した。ヴィーネ様がここに現れたことも含めて。



「守護者様か……確か最後が初代陛下の約1200年前だったな」

「ああ、最初で最後だ」

「彼にはいつ会えるのか?」

 ハル様もヘルガ様も今日は授業がないので登城はしていない。



「影」

「はい、お二人は現在ラ・モールの森にいらっしゃいます。見慣れぬ獣に乗っておられましたので彼らが神獣様で間違いないかと」

「わかった、引き続きよろしく頼む」

「はっ」

 初代国王が神獣を使えていたとは聞いていたが神獣に乗っていた話は聞いていなかった。


 今回のこと、本人に直接聞くべきか……。いや、聞いて怒らせてしまったらこの国はひとたまりもない。守護者様程の実力あるお方ならこの国の騎士全員でかかっても簡単に潰せるだろう。

 今はお優しい方だが、それが堪えようのない怒りに変わってしまわれたら……と思うと中々判断し難い。


『ねえ、貴方宰相? アイクランド公爵だっけ』

 昨日に引き続き、ヴィーネ様のお声が聞こえてきた。

「左様でございます、イーサン・アイクランドと申します」



『ハルもヘルガ君も無闇に都市部で魔法放ったりしないからそんな怯えなくたって良いのよ? まあ、怒ったら怖いけれど……守護者について話したことはあの子もちゃんと知ってるから直接聞いても問題無いわ。明日そっちに行かせるわね。それじゃ、ばいばーい』




「い、今のがヴィーネ様……」

「ああ、吃驚するだろう。ヴィーネ様が“あの子”と表現されるのはこの世界くまなく探してもハル様お一人だけだろうな」

 あんな風に、家族の様に扱われるのは。


「守護者様には公爵家から学園に通ってもらおう」

「王家が引き受けようと思っているのだが」

 そう話してあるし……。

「守護者様が貴族になるまでは彼は特殊な平民のままだ。平民が王城から学園に通うことは通常あり得ない。まだ公爵家の方がマシだ」

「ああ……そうだったな……平民だったな。明日、同席できるか?」

「勿論だ。ヘンリーも連れて来た方が良いか?」

「ああ、その方が良いだろう」





 明日に向けて私達は日が落ちるまで話し合いを重ねた。


今回の登場人物

・ライゼン・サージス

・セリア・サージス

・イーサン・アイクランド

・ヴィーネ神

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