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13,サプライズ


「まずは地魔法で本当に貴金属が手に入るのか検証しましょう」

「はい、もし無理だったら別の方法を考えないといけませんからね」


 まだイディスさんに俺の正体を話してはいないので今回もお留守番だ。イディスさんは神官見習いとしてヘルガさんと同じ、教会内の清掃や魔力測定などをやっている。髪は切ったし少し厚めの眼鏡で顔も見にくくなっているから余程のことがない限りバレないはずだ。大分アルバーン領から遠いし。因みに眼鏡は前神官長の遺品らしい。


「まずはイメージですね。今日の収穫物を含めてBランクの魔石は7つ。その中で物理攻撃、精神攻撃、毒物攻撃に強かった属性は光属性。因みに精神に作用する攻撃はこの世界にはないのでここでは洗脳を精神攻撃とします。光属性の魔石は黄色なのでそれに合う色の貴金属が良いですね」


「それでしたらやはり白系が筆頭でしょうか。宝石を選択肢に入れるならまだありますがこれらは加工して形を変えることを目的としていないので。少し大変ですがプラチナなどが代表的な白い貴金属です」


「大変、ですか?」

「高音でないと溶けないので素人である僕達に果たしてこれができるのかが問題です」

「デザイン画はありますか?」



 もしデザイン画が今あればそれをイメージして火魔法を使えば変形させられるかもしれない。無ければ地面に描いてもらうか一度戻って取ってくるかになる。

「ありますよ」

「ありがとうございます」

 受け取ったデザイン画はピアスやピンバッジ、ブローチや眼鏡チェーン、ペンなどなど多種多様な物がズラっと並んでいた。


「現実的に考えて、ピアスが一番楽ではあると思います。魔石を台座に固定して針を作るだけなので。ピンバッジやブローチも大きさにはよりますができると思います。ただ、メガネチェーンやペンは大変そうですね」

「メガネチェーンはほぼお遊びで作ったデザインなのであまり気にしないでください。対象者がメガネをかけていない時点で論外ですよ」


 確かにこの国でメガネはお洒落として偶に付けるのが一般的らしいから常に身につけてはいられない。寝る時や入浴中は外すだろうしそこを狙われたら終わりだ。ピンバッジも服に刺すからメガネ同様駄目。



 ――となると、やっぱりピアスか。

「実用性なども加味し、ピアスが一番でしょうね。常に身につけていられる物が良いので。メガネチェーンは自分用に作ってみたい気もするので収入が入ったら試そうと思います。ヘルガさんはどう思いますか?」


「僕は基本今回の決定には従います。楽しくなって色々追加したりはしましたがやはり王道が一番です」

 デザインは決まった。まずは貴金属を取り出せるかの検証から。



 プラチナは凄く希少で、輸入されることは中々ない。埋蔵量もあまり多くはないらしく、高値で取り引きされているそうだ。ただ、その分色褪せたりはしない。色に大した違いはないと思うが銀と比べても品質は段違いに良い……らしい。神情報。


「色褪せないとなると地魔法で生産できたらしばらくは貴金属達がインフレを起こしそうです……」

「俺達だけで使うことにしましょうか」

 地魔法の使い手への負担もあるだろうし、特定の物の物価が一時的に高くなったところで大したメリットもないだろう。


「あ、何か掴んだような気がします。魔力が普段より大きく持っていかれてるような感覚です」

 掌にずしりとした重みを感じた。

「お、おぉ……こ、これは、成功したんでしょうか。こんな塊で出てくるなんて思っていませんでした。大きくても小指の爪くらいだと思っていたのに」

「はい、僕もです。インゴットにすれば少し小さくなりますがそれでもかなり大きい」


「神、これは合ってる?」

『合ってるわ! 随分大きいけどこのまま加工しても問題ないくらい状態が最高よ!』

「じゃあ、やってみましょうか」



 今回、女性には一粒ピアス、男性にはリングピアスを採用した。土台にプラチナを使いその中心に魔石を嵌める。このためだけに魔石を研磨して宝石のような形にした。水で濡らしながらヘルガさんに削ってもらって何時間もかけてやっと一つだ。大変すぎる。


 俺が魔石を台座とくっつけている間にヘルガさんがソウルと研磨。魔石は掌以上のサイズがあるので希少種並みに数が少なかった光属性の魔石も無くならなかった。



「ヘルガさん、まずは一つできました。初めは針を使おうと思っていたのですが途中で難しくなって両側から挟み込むようにして固定するようにしました。お互いにくっつこうとする性質になるように苦労はしましたが針よりも痛みは少なかったですよ」

「凄いです。こんなに短時間で完成させてしまうなんて。本当に凄い」



 ここまでべた褒めされると口元がもにょもにょする。いっぱい褒めてくれるからモチベーションにはなるけどべた褒めされるのもくすぐったい。複雑。

 もう女性用はコツを掴んだ。男性用に比べると遥かにデザインがシンプルなのが一番の要因だ。


 次、リングピアスの方。太めのリングにしてリングには麦のデザインをヘルガさんが入れてくれることになった。シンプルなリングだけだと魔石が入れられないためチャームを付けてそれを魔石で加工することにした。形はシンプルに円柱。ただ、レオンのものはお洒落重視で円錐形にしてみた。


「ヘルガさん、こっちはできました」

「僕は今二つ目の半分くらいです」

「じゃあ一つは完成させますね」

 細目になりながら丁寧にリングに通していく。バレッタおばさんのやってる糸通しと同じくらい難しい。耳につけるアクセサリーなので小さいのだ。






「で、できた……!」

 俺達の初魔法具が完成した時には日はとっぷりと暮れていた。営業終了の鐘から大体一時間半くらい。魔力ランクが2級以上だと一桁の子供でも遅くまでの外出を許す、という文化で良かった。一応母さんに声はかけて出てきたし。



「今日中に完成できて良かったですね。レオン相手ならいつ呼び出されてもおかしくないので」

「はい、ハルさんのお陰で完成しました。ありがとうございます」

「俺の方こそ、デザインなんかは丸投げしてましたし、お互い貢献したってことで」

「ですね」



 生身で渡すのは少々気が引けるので小さなジュエリーボックスに入れた。え、どうやって手に入れたんだって? 神に懇願したら出してくれたんだよ。歴史が大きく変わるような手の出し方は良くないけどこの程度なら問題ないみたいで。


 神は自分を象徴する物として指輪を挙げているだけあってジュエリー好きだ。ボックスのデザインも多種多様だった。コンパクトなのに何段か小物を入れるスペースがある物だったり数種類の少数精鋭のみ収納できる掌サイズの物だったり。少し迷ったが、女性用は白レザー、男性用は黒レザーにした。


 蓋の裏にネックレスを仕舞えて右側には指輪、左側の仕切られている部分にピアスを入れられる。仕切りは簡単に外すことができ、懐中時計も小型の物なら入ると思う。メアの時計の大体の寸法から出したので必ず入るとは言えない。



 後は防犯機能もつけたのだがこれは渡してからのお楽しみだ。

 その日の夜、俺はご機嫌で眠りについた。渡すのが楽しみだ。


「ハル様、今日はいつにも増してご機嫌ですね。何かございましたか?」

「んーー? 今日(皆の驚く顔を見るの)を結構楽しみにしててさ」

「久しぶりの授業ですしね」

「うん、それもある」



 この2人にもバレたくなかった俺達は適当に濁しつつ、城門をくぐった。

「お久しぶりです、ハル様、ヘルガ様。本日からまたよろしくお願いします」

「「よろしくお願いします、カリウ先生」」


 暫く間が空いたから、と今回は少し長めの復習から入った。俺もヘルガさんも、教材を買うだけの財力がないので授業が無ければ忘れるだけだが、意外と覚えていた。神と3人で勉強する時も抜き打ちチェックされるので定着していたようだ。


 俺達がいない間、レオン達は十数行程度の文であれば読めるようになっていた。今回は前回と違い、三時間の余裕があったのでヘルガさんも同じくらい読めるようになった。俺は、まあ神の力があるので……。ただ、一般貴族の大人の学力以上には最低でもなりたいので今日も前回のように本から絵を描いた。大変ではあるけどその分身に付いているような感覚はある。



「ハル様、ヘルガ様、よろしければこちら差し上げますので使ってください」

 授業後にカリウ先生に呼び止められたと思ったら分厚い本を渡された。ヘルガさんも俺程ではないが少し厚めの本を持っている。


「カリウ先生、これは?」

「外国語で書かれた教材です。僕が作りました」

「か、カリウ先生が!?」

「はい、お二人は言語の授業以外を受講していないようですので知人に教わりながらサージス国の歴史、魔法史、政治・経済、数学についての教材を作ってみたんです。ハル様の方は歴史2つと政治・経済、ヘルガ様の方には数学について書きました。言語の授業を受けていれば大体理解できるように文法なども簡単な物を採用しました」



 カリウ先生の言葉に俺は渡された本のページを捲った。要点がよくわかるように纏められていて単語解説なんかも書いてくれている。要所要所にイラストも描かれていて俺達に理解できるようにと配慮してくれているのが目に見えてわかった。


「カリウ先生、俺達のためにありがとうございます。大切に使います」

「僕も、こんなにわかりやすい教材見たことないくらいで。ありがとうございます」

「喜んでいただけて良かったです。お二人には恩がありますから」

「「……?」」



 何のことか分からず首を傾げる俺達に笑って頭を下げたカリウ先生は退出していった。

「恩とは、何なのでしょう」

「さ、さあ……」


 高価な紙を大量に消費してこれだけの本を完成させようと思わせるようなことをしたか。頭を逆さにして記憶を引っ張り出しても、元々無いものが出てくるわけもなく、2人して暫く本を手に突っ立っていた。


「ハル、ヘルガ、遅かったな。何かあったのか?」

「ああ、カリウ先生が貴族の子供が勉強する範囲の教材を作ってくれたんだ。それを受け取ってた」

「うん。ただ、恩があるって言われたんだけど僕ら身に覚えがなくて。2人とも何か知ってる?」

 あの後数分考えて出てこなかったのでもしかしたら裏で何かがあったのかもしれないと思った。それなら2人に聞いた方が早い。

 それはヘルガさんも同じだったようだ。俺が口を開く前に聞いてくれた。



「あー……それに関してこの後父上から話があるそうだ。実子とはいえ国王の執務室に意味も無く行ったりはしないから、まあ俺らがここにいる時点で父上が絡んでるって思って良いよ」

「そう。じゃあ教材でも読んで待つよ」



 しっかし……改めて見ると本当に読みやすいな。確か俺の12歳上だからまだ20歳になってないはずだ。これは相当言語に向き合っていないとできないことだと思う。辞書で調べていけばそれなりのものはできるだろうけどわかりやすいかと聞かれたら微妙だろう。改めて今度感謝を伝えよう。

「待たせたな、今日は2人に話がある。これが終われば夕食だから少し付き合ってくれ」


 ライゼン様が少し疲労を滲ませながら入室した。先程まで会議があったそうだ。会議室だの執務室だのが多く、俺には最早何が何だかわからない。とりあえず疲れていそうなライゼン様を一刻も早く休ませるために頭はフル回転させておこう。


 あ、そうだ。

「あの、その前に俺達からも良いですか? 忘れる前に渡したい物があって」

 俺は無限鞄から木箱を取り出した。そして、ロックを外し、机に木箱ごと置いた。4つのジュエリーボックスを生で鞄に入れるのは憚られたので木箱に緩衝材を入れて持ってきたのだ。



 完全サプライズになるわけなので反応が気になるところではある。材料をどこで手に入れたのか、とか技術的に平民には無理なんじゃないかって言われたら最悪だ。自分の一番大きな秘密を話さなければいけなくなる。




「これは……?」

「物理攻撃、精神攻撃、毒物攻撃に強い、とある石を利用して作ったピアスです。いつも良くして頂いているのでそのお礼に、と」


 この石がゴミとして捨てられている魔石であることは極力言いたくはない。効果は実証されているがまだまだ実験したいことは沢山あるから。


「お守り、2人が作ったの? 嬉しい……! 本当にありがとう! 今着けてみても良いかしら?」

 シルヴィが無邪気に笑った。

「うん、良いよ。着けてみて」

 俺の声に4人はピアスを着けた。一度着けたことでピアスは持ち主を認識するようになる。


「ハルかヘルガのどっちか、俺に攻撃魔法くれないか? 効果が気になるんだ」

「流石にそれは無理! せめてサンプルで!」

 王族、友達に魔法を放ちたくない。ヘルガさんも首が取れそうなくらいブンブンと同意を示す。

「サンプルがあるのか? 見せてくれ」



「まずは物理攻撃」

 俺が人間であればぺしゃんこになるレベルの圧力をかけてヘルガさんが風で切り刻む。一連の動きをしてみせた。机の上でやると木製の机はひとたまりもないので俺の手の上だ。

「おおー……!」

「精神攻撃は洗脳に耐性があるから今はできない。だから次は毒物攻撃。因みに毒はその辺に生えていた食べたら死ぬレベルの猛毒草から抽出したんだ」


 毒液の中にピアスを突っ込むとピアスは光を放ち、毒液を全て吸い込んだ。実験はしたけどいつ見ても気持ち悪い。石が水を吸い込むなんて。


「ピアスに蓄積された毒物はいざという時、敵の体内に放たれ、相手に死をもたらす。これを着けていれば最悪毒を体に取り入れてしまってもピアスが肩代わりしてくれるからダメージが入らない。病気も然り。俺で実験もしたし効果は実証済みだよ」



 サンプルを身につけて毒素を摂取したが一切のダメージは入らなかった。やはり実験に勝るものはない。


「絶対に、誰に何を言われても外さない。父上に命令されたとしても外さないようにする」

 何かがフラッシュバックしたのか、顔面蒼白のレオンが言った。これでレオン達のトラウマが減れば良いけど。


「ああ、あと人のピアスには触らない方が良い。それはもう持ち主を記憶したからもし触れば感電するよ。耐性があっても数分は意識を失うかも」


 因みにこれも実験済みだ。俺が魔法で保護しつつ、ヘルガさんで実験した。本当はこれも俺がやろうと思っていたのだが「僕がやります」と譲らなかったので。俺の魔法で保護していても若干感電した感覚はあったそうだ。この中には雷と同等の力がある。悪意を持って近付けば最悪死ぬ。



「わ、わかった。十分気をつけるよ」

「2人とも、ありがとう。王家としてはまだほとんど恩を返せてはいないが……何か希望があれば何でも言ってほしい。叶えられることは叶えよう」


「い、いえ、もう既に十分なくらい良くしていただいているのでこれ以上はバチが当たってしまいます。俺は皆さんが幸せに天寿を全うするだけで嬉しいです。お役に立てて良かったです」



 ここにいる皆、逆行前は呆気なく、理不尽に命を奪われた人達。そんな人達が幸せだと言って生きてくれているだけで、存在してくれるだけで俺は勝手に幸せになれる。


「じゃあ全力で幸せにならないとな! 俺も、国民も幸せにするために頑張るよ」

「俺も、制約はあるけどできることなら手伝う」

「ぼ、僕も! 全員が幸せになる道は難しいかもしれないけどこの国から不幸な人を無くしたい。友達が治める国なら尚更!」


「無欲だな。まあ、2人らしいと言えばそうだな。それでは、今日の本題に入ろう」



「もう既に知っているかもしれないが試験的に3年間、平民向けの学校を作ることになった。詳細は今詰めているところだ。今のところ決まっているのは教師と教材、校舎の場所だな。因みに教師の1人はカリウ・ホルスター、君達の言語教師。打診したら二つ返事で引き受けてくれた」


 俺は少し浮かれた様子のカリウ先生を思い出してみた。もし仮に平民に教えるのが夢だったとしたら「2人には恩がある」という発言の意味が理解できる。俺達が平民向けの学校を、と提案しなければもっと先の話になっていただろうし、カリウ先生が生きている間に実現したかもわからない。ただの夢で終わっていたかもしれない。


 俺以外の3人は思いつきもしなかったらしいから。比較的頭の柔らかい子供でそうならガチガチに固まった大人もそうだろう。


 ただ、確証があるわけではない。思い上がるつもりもない。別の何かで恩を感じているだけという可能性もまだあるんだ。


「カリウ君は、勇気ある貴方がたに感謝します。お二人の提案が無ければ僕は一生夢を叶えられずにいました。本当にありがとうございます。と言っていたよ。国王としても何故こんな簡単なことに気が付かなかったのかと感じている」


「あ、あの。固定観念はそう簡単に覆せるわけではないのでその辺りはお任せしてしまう形になって、ライゼン様には助けていただきました。俺も感謝しています」

「国王とは、雑用のためにいるようなものだ。そのくらいは容易い」


 国王ってこの国で一番忙しい人だと思うんだけど……。やってること絶対雑用なんかじゃないよね?でも何の知識もない俺が口出しする訳にもいかないし、ここは素直に頷いておいた。

 

今回の登場人物

・ハル(6歳)

・ヘルガ(8歳)

・レオン・サージス(6歳)

・シルヴィ・サージス(6歳)

・国王夫妻

・カリウ先生

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