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12,久しぶりの


「さて、やっと子供だけになれたな! 2人には話したいことが沢山あるんだ! 今日は付き合ってくれよ!」

「良いよ。俺達がいない間、2人が何してたか気になるし」

「僕も、4人でいる時の2人しか知らないから」

「遅くなる前には帰すわ」


 今日は夕飯はなしらしい。レオンなら「夕飯も食べていきな!」的なこと言うと思っていただけに、少し拍子抜けだ。心労は溜まらないからデメリットは無いけどレオンにしてはあっさりしているというか……。


「今日は急に呼び出したからな! 次は夕飯も一緒に食べるぞ!」

 いや、違った。シルヴィに止められてたかして遠慮してただけだった。後ろでうんうんと静かに頷くシルヴィを見るとやっぱり兄のレオンの方が子供っぽいと思ってしまう。


 精神の成熟に男女で違いがあるんだろうか。それともこれから制限されることが今以上に増えるから今のうちに謳歌したいのだろうか。まあ、どちらだとしても俺達の前だけで素を見せてくれるのは心を許してくれているようで嬉しい。



「ハル! 俺の話、聞いているか?」

「うん、聞くよ」

 レオンは楽しそうに話しだした。俺達がいない間も数学以外の授業はあったからその話、主に言語。

「それでカリウ先生、授業の度に俺に今日も2人はいないんですねって残念そうにするんだ! 余程2人のことを気に入ったのだな!」

「私も2人がいない授業は寂しかったわ。カリウ先生もまた会いたいっておっしゃっていたわ」


「呼ばれたら行くよ。今更元の生活に戻りたいって思ったって無駄だし、それなら今を楽しみたいし」

「僕も、カリウ先生の授業は楽しくて、ずっと受けていたいから迷惑でなければ呼んでほしいくらい」

「迷惑なんて思うわけない! 俺達の大切な友達なんだからな! それと、これはまだ公には発表されていないから大声では言えないんだが――」


 レオンの声のトーンが下がるのに合わせて俺達はヒソヒソ話をするように身を寄せ合った。

「あの日ハルが提案したことを父上に相談してみたんだ。そしたら、レイチェルせん……バーン家の処遇を決めるのと並行して何度も会議を重ねた結果」



 ゴクリと喉が鳴る。もし、採用されたら平民は今よりも遥かに生きやすくなる。本も読めるようになるかもしれない。平民の娯楽も出てくるかもしれない。


「試験的に3年間、5歳以上の子供を対象に、王都で採用されることになった。これが成功すれば各領に小さな校舎を建てて本格的に識字率向上に向けて国全体で動くことになるって。教師は最初は国の行事ということで国が募集、試験をして雇うが、平民が育てばいずれは平民が平民に教育を施すようになるかもしれない。

 金銭的に余裕の無い家庭でも教育を受けられるように、と教材は貸し出し、昼食の配給、授業料は無料にできるようにと新たな予算も組まれたそうだ。カリウ先生と学園のルイ先生の功績からまだそこまで日が経っていないこともあって会議に参加した貴族の半数以上は賛成、技術者や資金援助も決定したとのことだ」


「それは良かった。俺の提案なんてパッと思いついたものだったけど、俺の教えることを妹は楽しんでいるように見えるからやっぱり専門の人に教わって損はしないはずだ。ただ、これによるデメリットも無いわけではないな」


 ラッシュみたいに剣を扱う道に行きたいと志す人は鍛錬の時間が減ってしまうし店をやっている人は継がせるための勉強もした方が良いだろうという意見も一定数あると思う。


「ああ、それについてはこちらも懸念事項として挙げている。解決策についてまた会議を重ねるそうだ。2人から何か案はあるか? 通うのは平民になるわけだから2人の方が良い案を出しそうだ」

 少し顎に手を当てて考えたヘルガさんが手を挙げた。


「働き始める年齢を一律でこれと決めたり勉強することへのメリットを平民に広く周知させる場を儲けることも大切だね」

「はい。あとは、俺の友達は剣を扱いたいと言っているから授業自体は半日にして、残りを平民騎士からの指導教室にするとか。他にも治療院で働きたい人や飲食店で働きたい人、研究職に就きたい人、沢山いる。やっぱり独学で続けるより効率的だろうし、学校に行けばその道のプロから直接教えてもらえるとなると反発する人は減るんじゃないかな。週末は休みにすれば店を継ぐ人だって勉強する時間は確保できる」


「ハルさん……凄いですね。そんなにポンポン案が出てくるなんて。僕だったら無理ですよ」

「ヘルガ、安心しろ。普通は無理だ。ハルの思考回路が俺達と違うだけだ」

「ハルとヘルガの提案をお父様に渡しておくわ。2人の案は大の大人が何日も頭を悩ませても出てこなかったものなんだから、もっと誇っても良いのよ?」



 俺達の案を紙に書き出したシルヴィが誇らしそうに言った。

「うん……まあ、ハルさんには及ばないけど……平民としての立場から案を出せたみたいで、良かったよ」

「俺は計画が上手くいったら少しだけ自分を誇れるな」


 案だけ出して自分は動かないってのは俺的にあまり好きではないから今の時点で誇れることは無い。立場上大掛かりな企画とかには関与できないのは悔しいな。俺が守護者であると言える日が来れば待遇はもっと変わるだろうし関与しやすくなるかもしれないけどデメリットが大きすぎる。


 生活に支障が出るだろうし家族が孤立するかもしれない。平民が守護者を名乗った、愚か者の一族とマリアがいじめられるかもしれない。もしそうなったら……よし、少しの不自由は我慢しよう。



「……ル、ハル、大丈夫か?」

「え? あ、ああ……レオン。どうした?」

「いや、見たことないくらい、何かを凝縮したような顔していたから」

「何かを凝縮? ふっ……そんな変な顔してた?事業に関与できないっていうのが少し悔しいなぁって思っただけだよ。ああ、大丈夫。身分は弁えてるから無理に介入したりはしない」


「あーあ、2人が貴族だったら良いのに。そしたら俺達ともっと楽しいことできたのに」

 絨毯にゴロンの転がってレオンがぼやく。俺も何度か貴族だったら、と考えたこともあったけど平民の方が良いと思い直したりする。


「レオン、僕達が貴族だったら家のしがらみとかで会うことは制限されていたかもしれないよ。それに、もし家の方針が反対派だったらどうするの?」

「うーん……やっぱり2人は平民で良いかも。社会的な身分に差はあるけど同年代の貴族といるより楽しいし」


「そういえば、レオンとシルヴィって貴族の友達はいるの? 俺達と一緒にいるようになってからそれらしい人の名前を聞いたことがないのだけど」



 貴族の友達を作らず、敢えて特定の平民とつるむ王族というのは少し外聞が悪いと思うのだが…。

「いる! アイクランド公爵家と、モッシュ侯爵家とペステッド商会に! 今度紹介しよう。ヘンリー以外は俺達と同い年だぞ! きっとあいつらも受け入れてくれる!」


 アイクランド公爵家、モッシュ侯爵家の二つは教会でする勉強でやったので知っている。アイクランド家は当主が宰相、モッシュ侯爵家は確か装飾品が有名だったような。ただ、ペステッド商会がわからない。商会の中でも貴族向け、平民向けとジャンルで身分が変わってくるだろうし……。



「レオン、貴族家の二つはわかるんだけどペステッド商会がよくわからないんだ。教えてくれる?」

「ああ、ヘルガ達が知らないのは無理ないな。ペステッド商会の商会長は父上の学友で、元々は侯爵家の次男だった。家督を継がない貴族は基本的に騎士になったり王宮のメイドや文官、各貴族の家などに出仕するのが通例だが現商会長は出仕せず、商会を立ち上げ、創立から僅か半年で毎年国内一の売り上げを叩き出しているんだ。主に貴族向けの調理器具や空気の温度を調節できる魔法具を扱っているんだ。で、俺達の友達は次期商会長のテリー・ペステッド」



「侯爵家……身分が高い……」

 レオンが関われるような商会なら普通の平民では無いだろうとは思っていたけどまさか貴族、しかも上位貴族とは……。純粋な平民は俺だけ……大丈夫かな。


「あいつは俺達の友達であるし、現侯爵の甥という大層な立場はあるが平民と同じような距離感の奴だ。平民に混じって生活しているし偏見も持ってないから大丈夫だ」

「レオンがそこまで言うなら……大丈夫か。シルヴィは? 女性の友達いないの?」

「ええ、いないわ」

「「ええ!?」」


 俺とヘルガさんはあまりの衝撃に身を乗り出してしまった。地位良し性格良し顔良し教養良しのシルヴィに友達がいないなど信じられなかった。

「私、お兄様が人気だから女性貴族に嫌われてるのよ。妹っていうだけであんなにくっついて、破廉恥ねってよく言われるわ。私自身大して気にしているわけではないしお兄様より5歳以上年上の方には可愛がってもらっているもの」


「そう、気にしていないなら良いよ。人気者を身内に持つ女性って大変なんだな」

「ええ、本当に。あ! ハル、妹さんがいるのでしょう? 私に紹介してくれない?」



 同い年くらいの女友達がいるのは楽しそうだ、とうっとりするシルヴィには申し訳ないけど……。

「あの子はまだ4歳だし俺がここに通ってることも知らないから今紹介することはできないと思う」

「まだ4歳……ええ、そうね。それなら仕方ないわ」


 素直に引き下がったシルヴィがしょんぼりしているように見えた俺は頭をフル回転させた。何か良い案はないものか、と。

「あ! で、でも学校ができたらマリアも通うし王族として学校がどんなものか見学する必要がある、みたいな理由付けで会いに行くのはどうかな? 友達になるのは難しいかもしれないけど……ど、どう?」

「良いわね! その手があったわ! すぐに計画を進めてもらいましょう! 絶対にマリアちゃんとお友達になるわよー!!」



「マリアのことでシルヴィがあんなにはしゃぐなんて思っていませんでした。レオンに比べたら大人っぽいとは思っていましたがやっぱりまだ6歳の子供でしたね」

「はい、シルヴィの素が垣間見えた瞬間ですね。どんどん心を許してくれているのがわかって嬉しいです」


 帰りの馬車でそんなことを話した。最近はメアとエステルさんが居てもこんな話ばかりしている。中々魔法具についての相談ができない。

 ただ、明日はカリウ先生の授業が無いため呼び出しは来ない。だから明日は一日中ラ・モールの森で魔法具を作ろうと思う。



 現在、装飾品に使う貴金属は外国からの輸入頼りらしい。魔鉱石と交換、みたいな。魔鉱石は魔物がいる限りは無限に採れる。だが、貴金属は普通の鉱山から採れるためいずれは枯れらしい。鉱山は地下から採掘されるのだから地魔法で貴金属のみ生産できないかと思っているところだ。


 イメージとしては、小さな鉱山を手の中に作り、そこから貴金属だけを取り出すみたいな。多分これが一番可能性としては高い。

 ヘルガさんにもこのことは話してあるので明日は貴金属の生産から入ろうと思う。


今回の登場人物

・ハル(6歳)

・ヘルガ(8歳)

・レオン・サージス(6歳)

・シルヴィ・サージス(6歳)

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