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世界規模の戦争

2018年 2月10日

国連総会



「正体不明の、地球外より来た彼らは世界各地の国際連合加盟国を攻撃しており、彼らは人類共通の敵と呼べます。

したがって我が国は国際連合憲章第七章に基づき、国際連合軍を組織する事を提案します。賛成されますか?」


アメリカの大使が提案するとイギリス、フランスの大使は即座に頷き、中露の大使も少し考え込んだ後同意した。

国際連合軍発足の瞬間である。




2018年 2月11日

ウラル山脈


砲撃の爆発音がウラル山脈に響く、攻撃魔法の高い詠唱音が山に囲まれたこの地域に神秘的な雰囲気を漂わせた。


しかし戦場は戦場である。


「敵兵発見!距離500m!」

「榴弾だ!撃て!」


戦車砲が現代兵器に似つかわしくない、魔法使いのような姿をした敵兵に向けられる。

しかし戦車はどんな状況下でも強力な訳ではない。

魔法使いはその杖に高圧電気の光を纏わせるとそれを戦車に向けて放った。

雷のような音が響くと戦車兵達は声を上げることすらできずに戦車のフレームを伝って感電した。


「戦車がやられた!」

「クソ!あまり戦車に近寄るなよ!」


随伴していた歩兵が反撃する、自動小銃は魔力切れの杖より強かった。

銃声がウラル山脈に響き、航空支援を要請する無線のノイズ混じりの音がここが戦場である事を表していた。




「こちらヴァイパー3、了解」


Ka-52攻撃ヘリが敵魔導砲兵を消し炭にするために比較的高い高度で飛行していた、対空砲火を避けるためだ。

しかしヘリが飛べる程度の高さなら鳥も飛べる、そしてそれが実在するならば竜も。


「こちらハーピー、レーダーに正体不明の機影がある、方位352、距離約50km」


「おい、あれは鳥か?」

「鳥にしちゃデカいな、それに…人が乗ってるぞ?!」


攻撃ヘリは地上の目標を攻撃するものであり、空への攻撃能力は限定的だ。

特にそれが小回りの効く、小さい目標であった場合。


「りゅ、竜だ!ありゃ竜だ!」

「機関銃の迎角が取れない…攻撃してくるぞ!」


まさしく竜騎兵と呼ぶべきそれは背中に彼の相棒と同乗する魔法使いを乗せて攻撃ヘリを堕とすためにぐんぐん速度を上げながら近づいていた。

そして距離が5km程度に近づいた時、魔法使いは竜に据え付けられた機関銃のような形をしたものに魔力の光を込めると銃先から数えきれない銃弾を発射した。


「回避しろ!」

「ダメだ!間に合わない!」


回避しようと攻撃ヘリが横腹を向けていたのが不幸にも被弾面積を増やし数十発の弾丸を胴体に受け、燃料タンクにも被弾して空中で爆発、分解した。

それを左手に見ながら竜騎兵は悠々と飛んでいた。

そして地上からのツングースカ自走対空砲の稠密な砲火の中に飛び入り血煙を作りながらその破片を谷に墜落させた。



2018年8月30日

アフガニスタン カブール



「行かないでくれ!アフガニスタンを見捨てないでくれ!」

「それ以上侵入した場合発砲する!近づくな!」


3ヶ月間のパキスタンでの戦いの後、3ヶ月間に渡って魔法軍と駐留する米軍の間で激しい戦闘が続けられてきたがパキスタンが降伏し補給路を失うと米軍は撤退を決断せざるを得なくなった。


「おい!最後の輸送機が出るぞ!」

「分かった、近づくな!撃つぞ!ああクソ!」


制止にも関わらず市民はゲートを突破し、基地になだれ込む。


「おい!早く来い!」

「分かった!」

「行かないでくれ!俺たちも連れて行ってくれ!」


最後の米兵が輸送機のタラップを登ると輸送機が発進しついにアフガニスタンから米軍は撤退した。


しかし滑走路には無数の市民が走っており、輸送機は群衆の中を飛び立とうとしていた。


「連中ギアに掴まってやがる!」

「そのうち落ちる!ほっとけ!」


実際彼らは輸送機が飛び立った後風圧に耐えきれずに地面に落下するが、その米兵に何ができる訳でもなかった。彼らを米国に連れて行く事はできないからだ。


アフガン上空を飛ぶ輸送機の窓からは魔法軍と戦う政府軍と反政府軍の連合軍が見えたが、かなり劣勢だった。

米軍が供与した装甲車両はほとんどが炎上し残りが逃げ出しており、歩兵は民家に立てこもって抵抗を続けていたがそれも攻撃魔法が家を吹き飛ばすまでの間だった。

それでも輸送機は振り返る事なく帰路を飛んでいた。




2018年 10月11日

NASA本部


「おい見ろよこれ」

「どうしたんだ?地球の写真なんか撮って」

「違う、これは第3.5惑星の写真だ」


その男はもう一人に携帯の液晶に写した写真を見せていた。

暗黒の虚空の中のその惑星には雲が浮かび、海があり、緑と砂色の大陸があった。


「…探査機から撮った画像か?」

「あぁ、水もあり植物もある、それにこの写真を見てくれ」

「今度こそ地球の夜の写真か?」

「違う、これも第3.5惑星の写真だ」


写真には黒い球体にオレンジ色の光の点がいくつか点っていた。

つまり、文明の光である。


「…で、こいつらが地球を侵略してるって訳か」

「多分な、これを送信した直後に探査機と通信できなくなって、恐らく破壊された」


話を聞いていた方の男は考え込む仕草をすると、こう訊いた。


「そういえば破壊された連中の船の研究は進んだのか?」

「え?あぁ、核融合して推進している所までは分かっていたが、魔法でプラズマを閉じ込めて核融合している事が新しく分かったらしいぞ、これでまったく新しい宇宙船を作れるかもな」

「それでこの星の連中に反撃したりできないものかな」

「…できるな、ただそれには最低一年かかる」


一年あれば反撃できる、それはその男に希望を持たせる言葉だった。


「…連中と話せたらこんな戦争にはなってないだろうになぁ」

「そうだな、魔法使いは現代兵器には勝てない事を説明してやればあんな馬鹿な事しないだろうにな…」


彼は魔法人を憐れみ始めた。

魔法使いはファンタジーの中の存在で、現代兵器と戦うようなものではない。

なぜアフガニスタンやパキスタンが降伏したのかは理解に苦しむが、報道を見る限り人類優勢だし魔法使いなんかに負けるわけが無い。

そうNASAの職員といえど一般市民である彼は思っていた。


軍の関係者と一部の政治家のみが劣勢である事を知っていた。

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