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奇襲作戦

2018年 2月1日

北海道 郊外


道には自走砲が並べられ、戦車や歩兵部隊は所定の位置についている。

第七師団がそこに集結しており、よく計画された奇襲作戦を行動に移そうとしていた。

その攻撃はまず砲撃により構造物を破壊し、その後戦車が侵入して敵を殲滅し、その後歩兵が掃討すると言う大まかに言えばシンプルなものだったが実際にはそれなりに複雑な作戦であった。

なにしろそこは山で戦車が通れる道が少なく、そこの安全を確保するにも歩兵が必要だった。

ともかく準備は整っている、あとは総理からの指示があれば…


「師団長!総理から許可が降りました!」

「分かった、作戦開始!」


号令がかかると自走砲は射撃を開始した。

規則正しく響く轟音は規制線の手前にいた軍事ファン達を驚愕させるには十分で、彼らは軍事作戦が始まった事を理解した。

トゥデイッターのトレンドには「自衛隊」が載ったし国会でも予定していた議題からこの軍事作戦に関する議論へと移った。


しかし起こっていた事態の深刻さは師団長と偵察部隊のみが理解していた。


「なにぃ!?防がれた?!砲弾が!?」

「私にも理解できません、しかし偵察部隊からはバリアのようなものが砲弾を空中で爆発させたとの報告が…」


「…理解できない、しかし理解しなければならないのだろう、後退して防衛線を構築してくれ」


師団長は自分達が戦っているものについて恐怖した、理解できなかったのだ。

しかし恐怖していても冷静な判断ができるくらい訓練されていた、それが損害を防いだのだろう。



同日

北海道 郊外 防衛陣地


「敵襲!距離約3000m!」

「構成は!?」

「それが…巨人のようなものが100ほどと」

「…もう何が来ても驚く事になるんだろうな」


普通科大隊長である彼が想定している戦闘は戦車とか歩兵のような地球に存在する兵器を相手にしたものだった。

しかし現実に起こっている戦闘はまるでファンタジーを相手にしているようなものだ。

しかし大隊長として彼は指示を出さなければならなかった。


「…威嚇射撃を行ってくれ」

「了解しました」


戦車が敵のいない方向に射撃する、当然ながら彼らは止まらない。


「総理からの指示は?」

「許可は出ています」

「…射程に入り次第…撃て」


巨人達…実際には巨人というよりゴーレムと呼ばれるのが適した見た目をした彼らは大地を揺らす足音を鳴らしながらずんずん自衛隊の陣地へと向かっていた。

すると突然彼らの多くは爆発し、倒れた。

砲弾が当たったのだ。

全弾命中、日頃の訓練の成果であり、後に世界をそれなりに驚かせる事になるがむしろゴーレム達の存在の方がどちらかと言えば世界を驚かせる事になった。

次弾が装填され、発射され、ゴーレム達は倒れた。

その戦闘はその繰り返しで終わったし、その日はその後戦闘は発生しなかった。



同日

国会議事堂


国会は騒然としていた。

自衛隊が初めて他の武装勢力と交戦しているという歴史的瞬間を議員たちは互いを罵り合う事で過ごしていた。


「戦争反対!まずは話し合うべきだ!」

「バカ言え!奴らは我々を攻撃したんだぞ!」


しかし激しい議論の真っ只中で一人、ただ静かにしている男がいた。


安部総理である。


「アベ政治はひどく好戦的だ!今すぐ攻撃の責任を取って辞任しろ!」

「そうだ!辞任しろ!」


議題がどうやら彼について移った事を理解すると彼はようやく口を開いた。




「あのですね、まず彼らは、我々の首都、東京をですね、攻撃したわけであります。」


「我々が話し合いを試みた所でですね、彼らはまず、平和的な関係を作ろうとはしないと、考えられるわけであります。

よって、私は攻撃を決断した訳であります。」

「ならどうして国民の同意を得なかったんだ!これは安部総理自身の独断で取った行動だ!」




「…独断で何が悪いんだ」


安部総理は彼らに聞こえないように呟くと彼のそばに寄ってきた自衛隊の官僚に訊いた。


「攻撃はうまくいきましたか?」

「それが…攻撃は防がれ、逆に我々が攻撃され防衛しています」

「…そうですか」


彼にとってはあまり喜ばしくない結果だった。

彼の計画ではあのまま敵拠点を破壊して日本の主権を守った成果を高々と宣伝してさらなる自衛隊拡充へと向かうつもりだったが、この程度の戦果では野党の反発が激しいだろう。


どちらにせよ後に自衛隊は拡充せざるを得なくなるのだが、この時の安部総理はそれを知る由もなかった。




同日 ワシントンDC

ホワイトハウス



「それで、我が国に侵入した…UFOは撃墜されたのか」

「はい、空軍がネバダに着陸しようとするUFOを戦闘機で撃墜しました」


側近の報告を聞きながらハンバーガーとポテトを頬張る彼、ウノ大統領はあまりに現実離れした現実に半笑いだった。


「レーダーには映らず、目視で偶然発見したんだよな」

「はい、恐らく他のUFOは既に米国本土に着陸しており、CIAが同様のUFOの目撃情報を確認しています」

「衛星で確認できないのか?」

「それが…現在全種類の衛星と通信が取れない状況になっており、NASAが衛星は破壊されたものとの見解を示しています」

「…そうか、全軍にUFOの捜索を進めるよう指示を出してくれ、それからDEFCONのレベルを2に上げるんだ」

「!…承知しました」


側近が去ると彼は書類を読みながらまた一口ハンバーガーを頬張る。

その書類の中にはUFOを飛来させた敵対的武装勢力に関する情報…ペンタゴンでは「魔法人」と呼称されている彼らについての記載があった。






魔法人に関する特徴

2017年12月29日


全世界において彼らのテロが確認されたが、共通する特徴として

・上空から船に似たもので降下する。

・近世に似た装備である。

・突撃を行う鎧に包まれた騎士のような集団と散兵戦を行う軽装備で特殊な攻撃手段を持つ散兵のような集団に分かれている。

・未知の言語を使っている。


が挙げられる。

装備の貧弱さから歩兵部隊により簡単に掃討できるが、散兵についてはフィクションの中での魔法に似た特殊な攻撃を行うため危険である。

一部の「魔法」は装甲車両を破壊できるほどの火力を持つため散兵は戦車並みの脅威である事を認識しなければならない。


軍の中には彼らを中世の時代遅れな軍隊と油断する者もいるが、散兵については脅威である事を周知しなければならない。


また、天文台からは彼らの船に似たものが最近発見された第3.5惑星付近で多数発見されているため彼らの策源地はそこである可能性が高い。






「俺たちは宇宙人と戦っているのか?それとも魔法使いと戦っているのか?」


彼は魔法人とアメリカ軍の戦闘を映像で見た事があったが、散兵が使っていた「特殊な攻撃手段」はまさに魔法であり、掌から火の玉を作り出して戦車に投げたり戦闘ヘリを撃墜するためか空に向けて光の筋をいくつも描いたりと科学的に説明できない手段で攻撃している事が簡単に理解できた。


一方で彼はアメリカが彼らの脅威に晒されていることについては残念に思っていたが、ロシアや中国も同様の脅威に晒されていることについては嬉しく思っていた。


たとえ宇宙人の侵略でも人類は一つにまとまることができないのだ。

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