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北アメリカ挟撃上陸作戦(前編)

2020年10月23日

イギリス リバプール 米海軍大西洋艦隊臨時司令部


ペンタゴンを失ったアメリカ軍はその威信を失い、海外かロッキー山脈に脱出し、組織全体が失意の底にあった。

それは司令部も例外ではなく、幾度も作戦立案をしては情勢の変化によりもう一度立案し直すという事を繰り返して士気が下がっていた。


というのは陸軍と空軍、そして海兵隊の話だった。

「まったく、俺たち海軍には陸戦はできないと思われてるみたいだな?」

そうぼやいたのは大西洋艦隊司令官。

「あぁ、まるで海軍には陸軍も空軍もないと思われてるみたいだな?」

ラップトップの画面越しにその話し相手になっているのは太平洋艦隊司令官だ。


「なぁ、俺たちはアメリカ大陸を挟んで話してる訳だよな?」

「…どうしてユーラシア大陸には言及しないんだ?」

中国やロシアの太平洋艦隊を仮想敵としていた太平洋艦隊司令官にとってそれはごく自然な疑問だった。

「それは話に関係ないからだ、とにかく、俺たちはアメリカ大陸を挟んで艦隊を配置してる、だろ?」

「…そうだな、船をアメリカに上陸させて戦えれば勝てるだろうな」

「そうだ、俺たちは上陸できるはずだ。」

「……?…あぁ、成程…」

彼は上陸という言葉を反芻した。


「陸軍と空軍と、海兵隊が合わさっても勝てない相手に勝てると思うのか?それも上陸戦で?」


その言葉を予想していたかのように大西洋艦隊司令官は笑みを浮かべた。


「あぁ、陸軍と空軍と、海兵隊だけじゃ勝てないだろうな。


だが、俺たちは海軍も、陸軍も、空軍も、そして海兵隊も持ってるはずだ」


地球最大の軍隊の最大の軍が、世界で2番目の空軍も世界最強の特殊部隊も持つ海軍が、動き出そうとしていた。




2020年10月25日

アメリカ東海岸沖合


第二艦隊と第四艦隊、そして第六艦隊が結集した大西洋艦隊がニューヨークの沖合を進んでいた。

「艦載機を上げろ!全部だ!全部上げろ!」

F/A-18戦闘機がジョージ・ワシントン原子力空母から次々と発進していき、艦隊の上空で編隊を組んで遠くに見える陸地の方へと飛び去って行く。


F/A-18が低空でジェットの音を立てて飛んでいる下では何十隻もの揚陸艇が波に揺られながら高速で陸地の方へ向かっていた。

「作戦はブリーフィングの通りだ!アメリカを帝国の手から取り戻すぞ!


Ready to Lead!(先導する準備は出来ている)」

「「「Ready to Lead!」」」


「Ready to Follow!(従う準備も出来ている)」

「「「Ready to Follow!」」」


「Never Quit!(決して諦めない)」

「「「Never Quit!」」」


「the Only Easy Day Was Yesterday!(楽できたのは昨日まで)」

「「「the Only Easy Day Was Yesterday!」」」


「It Pays to be a Winner!(勝利することで全てが報われる)」

「「「It Pays to be a Winner!」」」




揚陸地点はニューヨークの東に浮かぶ島、ロングアイランドだった。


事前の巡航ミサイルによる爆撃は農耕地帯を焼いていたが、帝国軍は西にあるシティのビルや点在する小都市の建物の地下に息を潜めていた。


その中には帝国軍の英雄であるアリスとクリスタもいた。


煙が昇る小都市の路地裏でクリスタは杖を空に向けて巡航ミサイルを迎撃しており、アリスはやる事がないのでとりあえず剣を研いでいた。


「というか貴女も多少魔法使えるでしょ!?少しは手伝ってよ!!」

「剣を杖代わりにすると剣が痛むからあんまり好きじゃないんだ…」


「…生命反応が南東の海上で確認されたらしいわ、来るわね」

「…分かった」


そう言うとアリスはおよそ人間には不可能と思われる程の高さでジャンプし、建物の屋上を跳びながら南東の海岸へと向かっていった。




「クソ!どうして上は対空魔道士を排除せずに上陸させようとしてるんだ!」

竜騎兵をサイドウィンダーミサイルで排除し空の支配者になっているように見えるF/A-18だったが、実際は魔道士による対空砲火を受けており自由な作戦行動を取るのは難しい状況だった。

「フォード5!エジェクト!!」

何機かのF/A-18は撃墜されてしまったが、彼らもやられてばかりではいなかった。


「これでも喰らえ!」

急降下していたF/A-18がJDAM爆弾を分離し、そのまま旋回して光線のような対空砲火から逃れる。


しばらくするとその光線の元になっていた建物はJDAM爆弾が直撃して爆発し、瓦礫と化した。

またGPS誘導の対地ミサイルも命中し、帝国兵の隠れる建物を粉々に破壊した。


「ん?不発か?」


その中の一発は爆発する事は無かった。




F/A-18が帝国兵を釘付けにしている中でシールズも上陸しようとしていた。


揚陸艇の扉が開けられる事はなく、機関銃手が扉でカバーを取りながら援護射撃する横で船側から隊員達が船から降りていった。


「カバーを取れ!」

水が浅い所をしゃがみながら走り、陸に着くと彼らはすぐに伏せて射撃し始めた。


エイブラムス戦車を運んでいる揚陸艇は扉を開け、戦車が出て行くと引き返していった。


「あの茂みの中だ!吹き飛ばせ!」

シールズ隊員の声への返事代わりに砲弾を撃ち出したエイブラムス戦車はそのまま前進し、海岸を制圧するために機関銃で制圧射撃し始めた。




「よし、このままこの通りの先にある小都市を占領するぞ!」


海岸沿いを走る通りを揚陸艇で運ばれてきたハンヴィーに乗り込んで車列の先頭に戦車を走らせ彼らはその先へと向かっていった。

「あの森の中に1チーム隠れてる、ナパームを要請してくれ」

サーマルサイトは森の中に隠れる対戦車魔道士も見逃さなかった。

しばらくしてその森はナパームで焼き払われ、炭と焦げた肉の匂いだけが残った。


低空を飛ぶものはもっぱらF/A-18だったが、その中にはドローンもいた。

対空魔道士は戦闘機にばかり夢中になってドローンの事など見ていなかった。

「座標を送信した、巡航ミサイルで破壊してくれ」

「こちらHQ…発射した、1分後に到着する。」

数分後、魔道士達は自分達が死んだ事にさえ気付かずに死んでいった。


上陸作戦であるにもかかわらず優勢に戦いを進める海軍であったが、艦隊のレーダーは一つの大きな反応を検知した。


「…レーダーに反応!…敵航宙駆逐艦です!高度2000m!」

「迎撃しろ!」


すぐさまイージス艦から迎撃ミサイルが発射され、白い軌跡を残しながら青い空に飛び立った。


「…命中!………敵駆逐艦は速度を維持しています!効果なし!」

「クソ!上手くいきそうな時に限って奴が来やがる!」


不気味な低音を立てながら一隻の空飛ぶ駆逐艦が近づいていた。

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