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アメリカ本土戦

2020年9月3日

アメリカ合衆国 テキサス東部


米軍は東海岸に降下した帝国軍の殲滅には成功していたが、東海岸での防衛は失敗し中西部にまで前線を後退させていた。


しかし抵抗しているのは米軍だけではなかった。




荷台に人を乗せたピックアップトラックのコンボイが東へ向かって走っていた。

突然その内のスマートフォンを操作していた一人が叫んだ。

「見つけた!北西に5キロ進んだ所に帝国軍の野営地が衛星画像に写ってる!」

それを聞いたサングラスを付けた運転手の男は後ろの方にも聞こえるように大声で言った。

「よし!車を降りろ!!ここからは見つからないように歩いて行くぞ」


麦わら帽子を被り、ジーンズを履いている彼らは非公式の民兵だった。

バイクに乗った者が偵察のために行ったのを見ると彼らは歩き出した。

彼らは旗を掲げていた。しかしその旗は多様で彼らの民兵組織の旗らしきものを掲げている者も居ればテキサス州の旗を掲げている者も、そして何故かアメリカ連合国の旗を掲げている者もいた。


彼らはトウモロコシ畑に隠れながら進み、電話で報告された座標の丘に着くともう一つの丘の上に帝国軍の旗が掲げられ、焚き火の火が昇っている野営地を見た。

「配置につけ、安全装置を外すんだ。合図するから同時に撃つぞ」


彼らはそれぞれ伏せたりしゃがんだり、あるいは木箱の後ろに隠れたりして各々野営地に銃口を向けた。


嵐の前の静けさが辺りを支配していた。


「……撃て!!!」


その瞬間ライフル銃の銃声が響き、赤い曳光弾が野営地に吸い込まれていった。


「うおおおおおぉぉぉおおおお!!」


彼らの内のいくつかは命令もなしに撃ちまくりながら突撃し始めた。


「おい!勝手に進むな!撃ち返されるぞ!」


実際その警告は現実になった。


一瞬野営地の方が光ったかと思うと火の玉が民兵達に向けて放たれ、火の粉で放物線を描きながら空中で分裂した。


「伏せろ!!!」


畑は一瞬のうちに火の海と化した。

「ぎゃああああぁぁぉあああ!!」

「クソ!誰か水を持ってこい!」


黒煙で視界が悪くなり、野営地の中のどこに敵がいるのかも分からずに彼らは撃ちまくっていた。

銃声が響き黒煙が太陽光を遮る中を突然一人の鎧を纏った人が民兵達に向けて歩いてきた。

「な、なんだヤツは?!」

「撃て!間違いなく敵だ!」


弾丸がその人に向けて放たれ、そして剣で弾かれた。

一秒もかからずにもう一発が放たれ、それも剣で弾かれた。

「なんなんだ!!全員奴を撃て!!」


その声と同時に彼は走り出した。


「うわあああぁぁぁあああ!!!」

ほとんどの弾丸は狙いが外れ、幸運にも当たりそうだった弾丸も剣で弾かれた。


そして鎧の人はその剣で民兵の一人を切り裂いた。

「クソ!ジャックがやられた!」

「これでも喰らいやがれ!!」


どこから持ってきたのか民兵の一人が火炎放射器で鎧の人を炎で包んだ。

「やったか?!」


一瞬の静寂が辺りを支配し、その次の瞬間血が噴き出す音が響いた。


「クソ!クソ!とにかく撃ちまくれ!!」


一人、一人と斬られていき、最後には指揮官の男だけがライフル銃を撃っていた。

しかしカチ、カチという音がトリガーから鳴り、リロードの必要性を訴えた。

しかしそのための時間はないようだった。

「あ…あぁ……」


血飛沫がトウモロコシを赤く染めた。




しばらく鎧の人は炎の中で佇んでいた。

一人の白い服を着た女が鎧の人に近寄り、こう言った。


「お疲れ、アリス」

「…」


アリスと呼ばれたその鎧の女はヘルメットのバイザーを上げ、口を開けた。


「来てはいけないと言っただろう、まだ奴らが残ってたら危ない」

「ふふ、いいじゃない、もう付近に私達以外の生命反応はないわ」


死体がそこら中に転がっている中を跨ぎながら白い服の女はアリスに近寄った。


「…その服に血が付いたら目立つだろう、クリスタ」

「替えならいくらでもあるから大丈夫よ、この国には沢山の素敵な服屋さんがあるみたいだから…店主の人がもうお金を受け取ってくれているかは分からないけれど」

「そうか……?、あれは何だ?」

「?」


アリスが指した方に灰色の何かが飛んでいた。


次の瞬間プロペラの轟音が彼女達の頭上を通り越した。


「?!生命反応はないんじゃないのか!?」

「ないわよ!!今だってどこにも!!」


それは翼に取り付けられたヘルファイアミサイルを野営地に向けて二発放つと左に旋回し始めた。


ミサイルは正確に命中し、テントや木箱を吹き飛ばした。


「ああもう!あの中に着替えが入ってたのに!炎の精よ!!あの鉄の塊を吹き飛ばせ!」


クリスタは掌から炎の球を放ち、回避マニューバを取っているドローンに命中、炎上させ、撃墜した。


「…誰もいなくて良かったな」

「…えぇ、そうね…」


クリスタは着替えが無くなった事の八つ当たりか、その辺の死体を軽く蹴った。

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