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国連宇宙軍

2020年5月9日

アメリカ ニューヨーク 国連宇宙軍臨時本部


ヴォルゴグラードの戦いで勝利した米露連合軍はそのままどんどん東進し、シベリアを西進する自衛隊とともにウラル山脈まで進撃し帝国軍を殲滅するべく総攻撃を仕掛けていた。

またインド北部や中国西部でも防衛が反攻に転じ、インド軍はニューデリーを奪還するまで前線を押し上げた。


補給が途絶え弱体化した帝国軍だが、不安要素が一つある。

それは彼らの母星とおぼしき第3.5惑星から地球へ向かっている大艦隊である。

帝国軍の捕虜からの聞き出しや輸送艦の残骸の解析によって帝国の使っている技術についてはある程度見識を得られつつあるが、その技術を地球製の宇宙戦艦に搭載するにはまだ研究が必要だった。


一方で大型の戦艦を分解し、小さいパーツにして軌道上まで分けて運んだ後に軌道上で組み立てる事によって今までの駆逐艦や小型ドローン空母よりも大型の戦艦を建造できるようになり、既にアメリカの戦艦『アリゾナ』や空母『レキシントン』、ロシアの巡宙戦艦『モスクワ』、中国の大型ドローン空母『北京』を既に軌道上に配置しており、日本やイギリスも多数の駆逐艦を建造、軌道に配置している。


ドイツは特に敵輸送艦を破壊するための高ΔVで軽装甲、ミサイル重視の武装である『U』級の軽巡宙艦を多数建造し、帝国軍の補給路破壊を手助けしていた。


地上でも宇宙でも華々しい戦果を上げている国連軍だったが帝国艦隊があと1ヶ月で来るとなると緊張感が走り、急ピッチで進められている宇宙軍建設もさらに急がれる事になった。

その結果数十名が死亡する事故も発生したが、戦時下という事もあって隠蔽された。


一方で国連艦隊は戦艦2隻、空母2隻、巡宙艦8隻、軽巡宙艦10隻、駆逐艦24隻という大艦隊を約半年で建設する事ができた。




しかし問題は敵艦隊の規模である。

天文台からの報告によると敵艦隊は大型艦6隻、中型艦22隻、小型艦58隻が接近しているとの事だ。

もちろんこの中には輸送艦もあるだろうし、全ての艦艇が戦闘能力を持っているわけではないだろうがいずれにせよ大艦隊であり、勝てるかどうかは未知数だった。

しかし国連艦隊提督である私が勝ち負けを心配していては乗組員の士気は下がる、私は常に勝利へと皆を導く者でなければならないのだ。

輸送艦破壊の報告書を読み飛ばしながら来る艦隊決戦に向けて思考を巡らせていた。





2020年7月4日

独立記念日

地球 高軌道ヒル球付近



いつもは余裕綽々な提督もこの時は緊張しているようだった。

俺も緊張している。


俺が乗っている弩級戦艦…国連艦隊の旗船でもある…は7月1日にギリギリで完成したものであり、俺たちは訓練もろくに受けていない。

一昨日は徹夜で機械の操作を覚えていた、昨日は流石に寝ていたが。


「敵艦隊地球ヒル球に突入…減速を開始しました!」

「…巡宙ミサイルを100発発射、挨拶してやれ!」


巡宙ミサイルを搭載しているミサイル巡宙艦4隻が発射管からミサイルを次々と発射し始める、巡宙ミサイルは二段式のミサイルでΔVが高いため遠距離から攻撃するのに適している。

なのでミサイル艦同士の戦いは専ら巡宙ミサイルの撃ち合いから始まっている。


「ミサイル第一段分離、終末加速を開始…敵艦隊迎撃を開始!」


敵小型艦が前衛に出て、砲塔を飛来するミサイルを向け、魔法弾を発射し始めた。

本来砲兵向きの魔法弾を改良したものなのか、ミサイルに接近すると爆発して破片をミサイルに命中させるシステムのようだ。


「…巡宙ミサイル全発被撃墜…」

「…向こうからは挨拶の一つも無しかよ、冷たい連中だな」


実際敵艦隊は今は地球の軌道速度まで減速している途中であり、ミサイルを撃っても速すぎてミサイルを目標まで推進できず命中しないだろう。


「…軽巡宙艦を除いた全艦隊、敵艦隊に向け相対速度4km毎秒でインターセプトせよ、戦闘だ。」





大抵の宇宙戦闘はミサイルの撃ち合いから始まる。

しかしドローンがある場合は話が別だ。

中国が多数保有するドローン空母は全て合わせて大型ドローン20機、中型ドローン40機、小型ドローン200機を発進可能で、特に小型ドローンは小型空母に搭載できるために数が多かった。

そしてそのドローン達は艦隊の前で編隊を組み、今まさに敵艦隊に向け飛び立った。


「ミサイルもあるだけ発射しろ!敵の対空攻撃を分散させるんだ!」





数多のミサイルとドローンは十数分間の巡航の後ついに敵対空魔道砲射程内まで入った。

敵対空砲から数えきれない拡散魔法弾がドローンとミサイルに向けて撃たれる。

ドローン達はブレイク、の光信号を発すると編隊から離脱し、敵対空砲火の回避を始めた。


ミサイル達がどんどん落とされていく中で大型ドローンは既に射程の長いレールガンで対空砲火の要である小型艦を攻撃しており、中型ドローンも肉薄し小型艦を攻撃、機関砲しか積んでいない小型ドローンはまだまだ加速し、回避し、接近していた。

そして十分接近し敵艦隊が光の点から光の点の集合体程度に見えるようになると小型ドローンも機関砲を大型艦に向けて撃ち始めた。

既に大型ドローンには10機の、中型には23機、小型は85機の損害が出ていたがある程度の損害はドローン攻撃では想定内だった。


一方敵艦隊は小型艦の半数がシールドを喪失、そのまた半分はダメージにより何らかの故障を起こしているし、6隻は破壊された。

中型艦に損害はほぼなかったが、肉薄した小型ドローンの標的になった大型艦は2隻が破壊され1隻が大破し、これ以上推進できなくなった。


地球に墜落しない軌道をとっている残骸は全てデブリになり、そのうち地球影響圏を出て永い時を太陽軌道上の虚空で過ごす事になる。

それは大破しこれ以上推進できなくなった船にも同じ事が言え、彼らは仲間に助けを求めるように光信号を送っていたが無視され、減速する艦隊に置いてけぼりにされてしまった。


「うわぁ…ああはなりたくないな…」

「…補給艦と宙兵隊輸送艦を派遣して地球軌道に乗せるとともに鹵獲しろ、中身もだ」


ドローンによる攻撃は成功したが、未だ敵艦隊は地球に迫っており、破壊する必要がある。

しかしミサイルを撃ち尽くしたしドローンももう一度使うには修理が必要なので、残された道は艦隊決戦のみだった。




史上最も大規模な宇宙戦闘はまだ始まりに過ぎない。

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