第五話【ガルーフ】
ステータス
アレン=ジース 性別 男 Lv12 種族 人類種
【才能】無し 職業【魔物使い】
体力43 攻撃力16
守備力15 魔法攻撃力12
魔法防御力12 速さ10
武器 鉄製の片手剣と盾
防具 皮製の鎧
メダリア=ファーム 性別 女 Lv7 種族 獣人
【才能】??? 職業【奴隷】
体力28 攻撃力10
守備力10 魔法攻撃力3
魔法防御力8 速さ12
武器 鉄製の短剣
防具 皮製の鎧
広大な草原地帯が広がるスラスト平原は、比較的Lvの低い低級モンスターが数多く生息しており、冒険を始めた者たちの修行の場として丁度よい。
また、自然豊かで資源が豊富な事もあり冒険者以外にも非戦闘職の者達が、自職で使用する鉱石や木材等の資源物資を求めて日々スラスト平原に通いつめている。
そんなスラスト平原にて、アレンとメダリアはとある目的で平原を訪れ歩いていた。
「よし、じゃあここら辺で始めるか」
アレンは、しばらく歩きキョロキョロと辺りを見渡し近くに人の姿が見えないことを確認すると、左手で空を左向きになぞりメニュー欄を出現させ、装備欄からメダリア用の装備をメダリアに装備させる。
武器は、二十セトラ程の短剣。
防具は動きやすい皮製の鎧にズボンとそれなりの防御力もあり、初心者おすすめの装備だ。
「これが、アルトリアお姉様が作った装備と武器…すごい!」
アルトリアお手製の装備にメダリアは、目をキラキラと輝かせぴょんぴょん跳ねている。
風呂から出た後、アレンが作った昼食を食べ、アレンとアルトリアと共にメダリア用の装備を決めていた。
防具は、モンスターの皮で作成した軽めで動きやすい物を選び、武器はメダリア自身が一番扱いやすい短剣を選んだ(身長的に扱えない武器の方が多かったが)。
「ふっ。それならよかった」
「はい!ありがとうございます!ご主人様」
「おうよ。さて、ここに来た目的だが」
「確かゴブリンの討伐クエストでしたね」
「その通りだ。それとついでにメダリアと俺のレベリングだな」
二人は、平原を訪れる前にギルドに立ち寄りゴブリン討伐のクエストを受注。
何故か、ギルドの空気がザワついていたがどうせ午前中の勇者との一件と奴隷であるメダリアの事だろうと思い、気にしない事にした。
「よし、じゃあまずあそこにいるガルーフを討伐するか」
アレンは、目先にいた散歩中の狼型モンスターガルーフに剣を向ける。
アレンの武器は左手に盾、右手に剣を持てる鉄製の片手剣。
防具は、メダリアと同じモンスターの皮で作成した防具だ。
「は、はい!そう言えばご主人様の職業の魔物使いってどんな感じなのですか?」
アレンの隣に来たメダリアは、短剣を構えながらアレンの職業について聞いた。
魔物使いとは聞いていたものの、実際に見た事が無かったからだ。
「ん?あー。そうだな。見た方が早いからアイツで試すか」
「分かりました!」
ガルルルル…
そんな二人に気付いたガルーフは毛繕いをやめ、牙を剥き出しにし戦闘態勢に入る。
じりじりと、詰め寄るアレンとメダリア。
そして─
「いくぞ!メダリア!」
「はい!ご主人様!」
二人は、ガルーフの元へ走り出す。
だが、ガルーフはジグザグに走り跳躍、二人の真上に通り背後に着地。
アレンとメダリアの先制攻撃は、失敗した。
次は、こっちからだと言わんばかりにガルーフは、二人の周りをぐるぐると走り始め隙を伺う。
「ちっ」
「わわっ!」
二人は、ガルーフの攻撃に備えアレンは盾を、メダリアは短剣を構える。
ガルーフは、メダリアに目標を定めメダリアの死角へと跳躍。
切り裂かんと鋭く長い爪を振り下ろす。
「やあッ!」
だが、何とか反応できたメダリアは、ガルーフの攻撃を短剣で受け止めはじき返す。
『ガウッ!?』
弾き返されるとは思っていなかったのか、一瞬驚いた表情を浮かべるが、次の攻撃に向けて体勢を整えようとするが。
「よく弾いたメダリア!たああッ!」
すぐさま反応し、剣を横薙ぎに一閃。
『ギャン!!』
ガルーフに命中。
大きく後ろに吹き飛び、地面に着地。
ズザザザァ──
四肢で砂埃を巻き上げながらも何とか着地出来たが、ダメージは確実に与えられた様でガルーフは、完全に頭に血が上っていた。
『ガルルルロォォォォォッ───!!!』
ガルーフは、天に向かって咆哮。
身体から蒸気が、ゆらゆら発せられる。
スキル【高揚】
自身の攻撃力を上げる自己スキルだ。
「よし、次はメダリア一人であいつと戦ってこい!」
「ええっ!?無理ですよ!!」
いきなりの無茶振りである。
首をぶんぶん横に振り拒否しているが、そんな事お構い無しにガルーフは、メダリアに突撃してくる。
「うわっ!」
メダリアは横に回避し、かわすことに成功する。
「大丈夫だメダリア!よく観察しろ!俺は“アレ”の準備するから。出来なかったら晩御飯抜きだからな!」
「晩御飯抜きの前に死んじゃうんですけど!?」
(あー!もう!やるしか!)
そんなやり取りをしている間にも、ガルーフはメダリアへ突撃してくる。
「相手の事を観察する…」
メダリアは、ガルーフの突撃を何度もギリギリ回避しながら観察を開始していた。
(そういえばあのジグザグした動き一回もしてきてない。スピードはあるけど一直線にしかやってこない。なら!)
一転攻勢。
メダリアは、ガルーフに向かって突撃。
それを迎え撃たんとガルーフも突撃してくるが、先程ガルーフがしたジグザグ走りを模倣。
跳躍。
背後を取る事に成功。
「いいいいいやあああああッ!!」
思い切りガルーフに斬りつけるが。
瞬時に気配を察知し、前へ走り飛び回避。
フンッ─。
メダリアの攻撃は、空を斬るだけだった。
「だめか!なら次だ!」
メダリアは今度は防御を固めている。
そこに、ガルーフが突撃。
命中。
衝撃で地面が削れ、受け止めるメダリアの身体が押されていく。
「くッ!!うあああああ────ッ!!!」
ガルーフの攻撃を受け止め切り、弾き返す。
そして、勢いをそのまま利用し一回転。
完全に体勢を崩したガルーフへと一閃。
ズバッ──
メダリアのカウンターは見事に決まり、ガルーフは地面に叩き落とされる。
『ギャアッ!?』
「や、やった!」
思わず声をあげるメダリア。
だが、ガルーフの目には闘志が失われていなかった。
「準備完了だ!下がれメダリア!」
「分かりました!」
メダリアの後ろで準備をしていたアレンの準備が完了したようだ。
メダリアは、アレンの元へ下がる。
「我は汝を従える者─」
アレンは剣で指に傷を作り血を滴らせ、何やら呪文を唱えている。
そんな二人の元へ、最後の力を振り絞り突撃してくるガルーフ。
「我の下僕となりて、力をふるえ─」
スピードは先程よりもかなり落ち、余裕で回避出来るほどの速さになっており、足元もおぼつかない。
だが、一矢報いてやろうと迫ってくる。
「魔獣ガルーフ───スキル発動【テイミング】!!」
『ガアッ!?』
アレンから放たれた光の輪が、迫って来ていたガルーフの身体を包み込み、二十、三十にも重なり合う。
そして─
光の輪がガルーフの身体に負った傷を治療しながら、吸い込まれ、完全に光の輪がガルーフの中へ溶け込みきって─
「よし!テイ厶成功!」
「すごい…これがご主人様の力…」
魔物使い専用スキル【テイミング】
モンスターを手なずける事が出来るスキルで、対象の抵抗力が低ければ低い程、成功する確率が上昇する。
「おいでガルーフ!」
アレンは手をパンパンと叩き、ガルーフを呼んだ。
すると、ガルーフは、ガウッ!と短く吠えて尻尾を嬉しそうに振り、主人の方へと駆け飛び込んで─
「え?ちょっとうわあ!?」
ガルーフが飛び込んで来たのは何故かアレンでは無く、メダリアの方だった。
メダリアもまさか自分の方へ来るとは思っていなかったらしく、押し倒されガルーフにぺろぺろと顔を舐められている。
「あれぇ??」
予想外すぎるこの事態にアレンは首を傾げる。
基本テイムされたモンスターは、主人の命令通りに動くはずなのだ。
「ご主人様助けてぇ!」
先程から顔面をぺろぺろと舐められているメダリアがバタバタ暴れているが、体格差とガルーフが馬乗りになっていることもあり、メダリア自身ではどうすることも出来ず、悲鳴をあげて助けを求めている。
「お、おう」
納得がいかなそうなアレンは、馬乗りになったガルーフを引き剥がそうとするが。
「ガルルルル」
引き剥がそうとしてきたアレンに牙を剥き出しにして威嚇するガルーフ。
怯むアレン。
怯んだこと確認したガルーフはフンッと鼻を鳴らし、再びメダリアの顔を舐め始める。
「ご、ご主人様~!!」
されるがままのメダリア。
「お、俺が主人なのに…」
落ち込むアレン。
「ガル♪」
舐めまくるガルーフ。
なんとも言えないほのぼの?した空気がスラスト平原の一角で展開されるのであった。
*
「いくよー!ガルちゃん!」
「ガル!」
森林地帯付近にある湖のほとりで、ベタベタになった顔を洗い、休憩した後二人と一匹は周囲のモンスターでレベリングをしていた。
メダリアとガルちゃんと名付けられたガルーフは、ゴブリンの周囲をぐるぐると走り回り翻弄。
「今だ!」
ギッ─!?
左右からの同時攻撃が綺麗に決まりゴブリンは、その場に倒れ込み魔障を噴き出しながら消滅。
ゴブリンが倒れていた場所には、ゴブリンの爪が落ちていた。
「やったーガルちゃんこれでクエスト達成まであと一匹だよ!」
「ガル♪」
メダリアは、落ちていたゴブリンの爪を拾い上げバックに入れ、傍に駆け寄ってきたガルちゃんの頭を撫でる。
メダリアに撫でられ、気持ち良さそうに目を細めるガルちゃん。
「俺が主人なのに…俺がテイムしたはずなのに…」
それを遠巻きで見ていたアレンは、近くにある小石を蹴りながら拗ねていた。
「別にガルーフの一匹や二匹懐かれなくたっていいし…他のモンスターテイムするし…」
ぶつくさと文句を言いながらアレンは、先程のメダリアの戦闘を思い出していた。
「まさかあそこまで戦えるとはな」
アレンは、平原に向かう前メダリアに武器の扱い方と戦闘の基本を少し教えただけだ。
戦闘経験が無いはずなのに周囲のモンスターを苦戦せず撃破するメダリア。
そんなメダリアに驚きを隠せないでいた。
「全く。本当に奴隷かよあいつ。俺よりも全然才能あるじゃねーか」
奴隷は基本的にステータスが低く、才能と戦闘能力のないもの達なのだが、獣人の奴隷だから少しだけ能力があるのか、それともシステム的に隠されているメダリアの才能か…。
「まっ、そんな事今は気にしなくていいか。それより」
アレンには先程から気になっていた事があった。
それは、
「ゴブリンは基本四~五匹程度の群れで行動するはず。だがさっきからずっと一匹ずつしかいない。それに何処か怯えた顔をしていた。他の冒険者か?いや、怯える程の実力者はあの街では、あのバカ勇者しかいない。なら他のモンスターから逃げてきたのか?」
そう。
アレン達が相手にしたゴブリンは普段群れで行動し、狩りを行う習性があるのだが単体で行動している個体ばかりでそれもまるで、強大な何かに怯えている様子だった。
「まさか風竜ウィンドラゴか!?」
アレンは、今朝クエストボードに貼られていたクエストを思い出す。
「いや、ウィンドラゴが生息してるのはここよりもずっと北の山岳地帯の方だ。なら何に怯えていたんだ?くそ…」
アレンに拭いきれない嫌な予感が、べったりとまとわりついてくる。
「ご主人様?」
そんな何処か様子のおかしいアレンの様子に気付いたメダリアが近付いて来たその時、アレンの予感は的中した。
『ギャァァァァァアアアアッ!?』
「な、なんだッ!?」
「なに!?」
突然響き渡る悲鳴のような鳴き声にアレン達は、耳を塞ぐ。
そしてその声の主は、彼等の目の前に現れた。
それは、巨大な翼を持つ四足歩行の獣であった。
全身を覆う青い体皮に黒い斑点模様、口元から覗かせる鋭い牙、頭に生える二本の長い角、その瞳は鮮血のように紅く、喰われまいと必死にもがくゴブリンを咥えたモンスターの名は牙獣ガドラド。
その姿を見た瞬間、アレン達の背筋に冷たいものが走る。
こいつはヤバい……
直感的に悟ったアレン達はすぐに臨戦態勢に入る。
だが、
『グアアアオオオッッ────』
咆哮。
そして、ガドラドは咥えていたゴブリンを─
ガチンッ!ブシャッ!!
噴き出す鮮血。
ガドラドの青い体皮が返り血で赤く彩られていく。
先程まで生きていたゴブリンの事切れた身体の一部がアレンとメダリアの方へ転がっていく。
弱肉強食。
その一連の流れを目の前で見た二人の間に緊張感がより高まり、次の非捕食者は自分達だと否が応でも認識させられる。
「くそっ!やるぞメダリアッ!」
自分の頬を思い切り叩き無理やり気合いを入れるアレン。
しかし、
「………」
「メダリア?」
メダリアから返事が帰ってこない。
「う……あ………?」
メダリアは、ガドラドの気迫に飲まれてしまいガタガタと震えていた。
無理もない。
初めての戦闘経験にまさかこんな強大なモンスターと遭遇するとは夢にも思わないのだから。
こんなハプニングの中でも動ける者などほぼいない。
「くッ仕方ない!!ガルちゃん!」
アレンは、ガルちゃんに目配せをするとガルちゃんはこくん、と頷きメダリアを背中に乗せてアレンと共に森へと走り出す。
『ガァァァァァアアアア─────!!』
それを見たガドラドは、アレン達をゆっくりと、それでも見失わない程度のスピードで鬼ごっこを楽しむかのように追いかけ始めるのであった。
読んでくださりありがとうございます!
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ステータス
アレン=ジース性別 男 Lv12→13
【才能】無し 職業【魔物使い】
体力43→46 攻撃力16→18
守備力15→19 魔法攻撃力12→13
魔法防御力12→14 速さ10→12
武器 鉄製の片手剣と盾
防具 皮製の鎧
メダリア=ファーム 性別 女 種族 獣人Lv7→9
【才能】??? 職業【奴隷】
体力28→30 攻撃力10→13
守備力10→12 魔法攻撃力3
魔法防御力8→9 速さ12→16
武器 鉄製の短剣
防具 皮製の鎧
ガルーフ(ガルちゃん) 性別 オス 種族 牙獣 Lv10
体力38 攻撃力18
守備力10 魔法攻撃力6
魔法防御力7 速さ17