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魔物使いで奴隷使い  作者: しおだれはみさーもん
第一章
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第一話【GAME START】

初めまして。しおだれはみさーもんと申します!

拙い文章だと思いますが是非読んで頂けるととても嬉しいです!


それは、とある夏の日の夕方。


一つの家庭が、家族の時間を過ごしていた。


年の頃は、七歳程の小さな男の子とその父親と母親の三人家族が楽しげにテーブルに並べられた夕食を食べている。


「わーい!カレーライスだー!」


「こらこら。カレーライスは逃げないんだからちゃんと座りなさい。ほっぺたにカレー付いてるわよ」


「うん。母さんのカレーは美味いな」



少年はカレーライスを美味しそうに頬張り、頬に付いたカレーのルーを母親がティッシュで拭き、父親がそれを見て微笑む。


ごくありふれた幸せな時間が流れていく。


だが、幸せな時間は突如終わりを告げる。


突如、空が赤く、紅く染まっていく。



夕焼けの赤く美しい色ではない。


まるで、空が燃えているような紅蓮の様な赤い色。


犬や猫等の動物達は、赤く染まった空に向かって吠え、幼子は一斉に泣きじゃくる。


町を超え、国を超え、国境を越えて世界を赤く染め上げていく。


尋常ではないこの現象に、全ての人々を恐怖に陥らせていた。


「な、なんだこれはッ!?」


「お父さん、お母さん怖いよぉ」


「なに…これ……」


そして、更に畳み掛けるように異変が襲いかかる。


「「ぐううあああッ─!!」」


突如、母親と父親が苦しみもがきだし、バタバタとのたうち回る。


大量の冷や汗をかき、目は血走り、言葉にならない声で助けを求めるよう目玉をぎょろぎょろと動かしている。


「お父さん!?お母さん!?大丈──」


苦しむ両親の元へ駆け寄ろうとしたその時、少年にも異変が襲った。


「ァ?う……あ?」


痛い痛い痛い痛い痛い痛い。


全身が燃えているように暑い。


頭の中をぐちゃぐちゃといじられているのではないかと思う程の痛み。


そして、身体中のあちこちがゴキッバキッと音を立て、まるで骨格が変化しているかの如く骨が軋む。


何も考えられない。


ただただ知性の無い獣のように、喘ぐことしか出来ない。


「う…あ────」


少年は、痛みに耐え切れず意識を手放すのであった。


*


「───しろ」


「───かりしろ!」


聞き馴染んだ声が聞こえる。


少年は、その声に導かれるよう目をゆっくりと開けると、そこにいたのは父親だった。


「う…あ、お父さん…!大丈夫だったの!?」


「ああ、何とかな。何がどうなっているんだこれは」


少年は、体をゆっくりと起こし父親と一緒に辺りを見渡す。


空には先程の赤い世界ではなく、綺麗な夜空が広がり風が花を撫で、地には草木が生い茂り、鳥達がさえずりを奏でている。


近くの人々に視線を向けると、そこには同じ人間なのだろうか。


額に角が生えた者や、等身が2頭身しかない者、犬や猫の様に耳と尻尾が生えている者、全身の体表が赤く筋骨隆々な者。


耳が尖っている者、少年や父親と同じく他の者に比べると身体になんの変化も起きていない者たちと、どこかゲームの世界に出てくる様な色んな特徴を持った者たちが話し合っていたり、少年と同じく目覚めたばかりなのだろうか辺りをキョロキョロ見渡していたりしていた。


「あ、お母さんは?お母さんどこ?」


「分からない。」


心配そうに聞いてくる少年に父親は首を小さく横に振った。


「でも大丈夫だ■■。お母さんならきっと無事だよ。それよりも全くどうなっているんだ…これじゃあゲームの世界の中じゃないか。」


父親が、少年に安心させるようそう言った瞬間、何の前触れもなく空に巨大なスクリーンが出現した。


『やぁ皆さん!“Real life and fantasy”の世界へようこそ!いやぁ嬉しいなぁ。思ったよりもいっぱい来てくれて』


どこか愉快そうな声が聞こえた方へ視線を向けると、そこには空を覆い尽くすほどの巨大なスクリーンの中に一つの人影が立っていた。


顔や表情、服装などが見えないものの、声色からどこか嬉しそうな様子だ。


なんだアレは。


リアルライフなんたらの世界だと?


何を言ってるんだ?


ここはどこだ?何かのイベントか?


そんな人々の呟きが、宙をひらひらと舞う。


『おっと、僕とした事がこれからの事を説明しないとだね。まず僕はこの世界のゲームマスターだ。そして君たちはこれからこのReal life and fantasy・・・あ〜長いからリアファンでいいか。リアファンというゲームの世界で生活をしてもらうよ。もちろんゲームの世界だからレベルの概念や職業とかもあるよ。』


ゲームマスターと名乗る男が、何やら色々説明をしているのだが。


何をやったのか分からんが元の姿に戻せ!


何をわけの分からないことを言ってるんだ?


よく分からない現状に人々の不安や不満が高まっていく。


『あと、スキルや魔法の概念もあるよ。そして、君たちには生活したりモンスターを倒したりしてレベルをあげて装備を整え強くなって─』


『僕を殺して欲しい。』


人々のそんな声を一切無視していたゲームマスターが『僕を殺して欲しい』そう言った時、人々の不満が爆発した。


ふざけるな!訳の分からない事を言ってんじゃねぇぞ!

そうよ!早く家に帰らせてちょうだい!!


そんな人々の怒号がゲームマスターへ向けられ飛んでいく。


『あぁもううるさいなぁ。まだ僕が説明してる途中でしょ』


はあめんどくさいなぁ。


ゲームマスターが頬をかき、右手でパチンと指を鳴らした。


すると、すぐに変化が起きた。


ゲームマスターへ罵詈雑言を投げていた中年程の男女の体が、徐々に膨らんでいく。


少しずつ、少しずつ膨らんでいく。


男女が付近の人々に助けを求めるが、どうする事も出来ずに眺めていることしか出来ない。


やがて、男女の体が水風船のように膨らんでいき、


そして、パンッと音を立て破裂した。


辺りに血の雨が降り注ぎ、鉄の匂いが辺りに広がる。


い、いやああああああああッ────!?


『君たちもこうなりたくなかったら、僕の話を最後まで聞こうね』


『さて、君たちには六種族に分けられている。竜人種、鬼人種、人間種、獣人種、エルフ、ドワーフの六つだ。それぞれ種族には特徴がある。例えば君のような身体が赤くて筋骨隆々な君は、鬼人種で体格が大きく力が強いね』


『他にも色々あるんだけどそれはおいおい分かることだから今は省かせて貰うよ。まぁとにかく強くなって各種族協力して僕を殺す事。これは君たちにとってもいい事なんだ。何故ならこの世界はゲームマスターの僕が殺された場合ゲームクリアとなり消滅。君たちは元の世界に戻れるってわけだ』


『今はこれくらいかな?じゃあ、これから君たちはゲームスタートって事だけど僕を殺す事が出来るのか試すために、モンスターを送り込むから頑張って倒してね』


『あ、あと言い忘れてたけどゲームの世界だからといって痛みを感じなかったりする事はないからね。ましてや死んだりしたらそこでゲームオーバー。すなわち本当に死んだ事と変わりないから気を付けてね。んじゃあ頑張ってね〜』


『GAME START〜』


ゲームマスターはそう告げると、巨大なスクリーンが消滅し、代わりに空から何かが羽ばたく虫の羽音のような音が聞こえてくる。


二本の鋭い鎌の様な前脚に、巨大な身体を支える四本の強靭な後脚。


獲物をいとも容易く噛みちぎる大顎、体は緑色で細長くシャープながらも頑強な体。


通常の世界では有り得ない巨大な生き物は、人々の元へ着地した。


人々は自分達がいる所に着地した生物、十メートル位はあるだろう巨大なカマキリに対して、ただボーッと眺めているしか出来ずにいた。


それもそのはずさっきまでいた自分達の世界ではこんな事有り得ないのだ。


起こるはずのない異常な出来事に、この世界は嫌でも自分達のいた世界とは違うという事を認識させられる。


そして、先程ゲームマスターが言っていた死ねばそこでゲームオーバー、現実世界で死んだ事と変わらないという事。


すなわち、生き残るにはこのモンスターを倒すか逃げ延びる。


このどちらかの方法しかない。


人々の脳裏にそんな考えが頭の中をよぎったその時だった。


『キシャアアアアアッッ─────!』


巨大なカマキリが不意に身体を大きく反らし、鎌状に発達した前脚を大きく振り上げ咆哮。


前脚を交差するように勢いよく振り下ろした。


ブゥン─


巻き起こる突風。


クレーターが出来るほど抉られた地面から上がる土と血の煙。


カマキリの近くにいた人々の体が、ただの肉塊に成り果てた。


降り注ぐ上半身と血の暴風雨。


先程よりも強烈な鉄の匂いに、胃の中の物を吐き出しそうになる。


どうやらこのモンスターは、慎重な性格のようだ。


通常は、天敵や自分よりも大きい相手にする行動なのだが、そんな事など人々にとってはどうでもいい事だった。


明確に目の前に突きつけられた死という刃。


ここでじっとしていれば確実に死ぬ。


死ぬ。


死ぬ。


死。


死。


死。


頭の中に、死の濃密なサイレンが鳴り響く。


そして、そこからは地獄絵図だった。


我先に逃げ出す者。


全てを諦め祈り出す者。


泣きじゃくり助けを乞う者。


勇気と無謀を勘違いしたのかモンスターに挑みに行く者等様々だった。


だが、モンスターから与えられるのは無情にも死だけだった。


*


走る。


走る。


走る。


生き残る為に走る。


父親に手を引かれ、ごった返す人々の群れの中に少年と一緒にとある少女がいた。


必死に走って逃げる人々の群れの中に幼なじみで姉の様に慕っていた少女を見つけ合流した。


少しだけ少年の心に安心感が生まれるが、それを噛み締める事は許されない。


モンスターの羽音が、近付いてくる。


どんどん近付いてくる。


死の羽音が、大きくなってくる。


追い付かれるもうダメだ。


逃げきれない。


ここで死ぬ。


そんな考えが頭の中を支配し、足を止めてしまい後ろを振り向いてしまった。


出現した時の鮮やかな緑色をした体色は、返り血で真っ赤に染まっており、鎌には人だった者の肉塊がこびり付いていて、血が大量に滴り落ちている。


もうダメだ。


少年含め、そこにいた人々はもう諦めてしまっていた。


だが、そんな中ただ一人何やら険しい表情の父親が、少年と少年の幼なじみの方へ向いた。


「■■、よく聞いてくれ。今からお父さんはあいつに殺されるかも知れない。だが、お前達は必ずここから逃げ切り元の世界に戻ってくれ。」


「え?お父さん?何言ってるの?い、嫌だよ」


「お、おじさん?」


「大丈夫だ。お前なら必ずやれる。お父さんとお母さんの自慢の息子だからな。■ちゃん。この子を頼む。そしてこの子を支えてやってくれ。」


「……ッッ!わかった。■■行くよ!!」


もう何を言っても引き止められない。


そんな重すぎる覚悟を受け取った少女は、少年の手を引っ張り既に限界を迎えた身体に鞭を打ち走り始める。


「ちょっと待って!■姉ちゃん!お父さんが!お父さんが!!」


「ふっ…それでいい。後は頼んだぞ。子供達。」


逃げる二人の後ろ姿を見てどこか寂しそうな表情を一瞬浮かべ小さく笑った。


カマキリが、鎌を振り下ろした。


降り注ぐ血飛沫。


大小の断末魔。


事切れた肉塊。


先程まで父親だった肉塊を、貪り食うカマキリ。


「お父さんッ!!!!!うわああああああッ!!!」


「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい……」


二人は必死に走り続ける。


父親から託された使命を背負い、生き残る為に、必ず元の世界に帰る為に。


ゲームをクリアする為に。


夜が明け朝日が顔を出す。


残酷で最悪な物語が今始まる。

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