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久しぶりに会った友人の話。

4作目

久しぶりに会った友人の話。





 私は、久しぶりに彼と話をして心が折れるかと思った。





 時は、令和の4年。コロナという疫病と人類は戦う毎日を送っているのは周知の事実。今の私はどれだけゴミを少なくできるかについて脳みそを働かせていた。


 ついついコンビニの弁当ばかりを買ってしまい自炊をしなくなってしまう。ゴミばかりが出てしまうのだ。


 ならば極力外食で済ませれば良いのではないかという、歴史上の偉人ですらも思いもよらぬ所業を実行し始めてから、はや4日目の出来事。


 私が行きつけのラーメン屋にて、中学高校時代を共に過ごした同級生と遭遇した。


 便宜上「彼」と呼ばせてもらうが、彼は中学時代の私と仲の良かった数少ない人物であり、数多の確率の中から私と同じ高校に進学することになった、神様に愛されているのでないかという人物なのだ。





 彼とはどんな人物なのか、一言で表すのなら「隠」と表す事が一番適切であろう。


 彼を貶そうとするような気持ち持ち合わせていない。彼は極力人との関わりを避ける人物であり、中学時代の私のように手当たり次第に喧嘩をふっかけにいく愚か者では無く、積極的に争い事を避ける植物のような人間だった。


 影は薄いと言えばそうなのだが、そういう者特有のコミュ症と言われる持病を抱えておらず、他者とのコミュニケーションは、ヘタをすると野球部すらも超えるほどの技量の持ち主である。


 彼と私との邂逅(かいこう)などは読者諸兄(どくしゃしょけい)にとっては無駄話であり、話すと()が3回沈むほど長く語ってしまうので、誠に遺憾ながら割愛させてもらう。


 だが、私と彼との関係性は、「友人」というべきなのだが、気の知れた「知人」とも言えるような、仲は良いがあまり関わらないという関係性であると知っては欲しい。


 しかし私は、彼がどういう人物なのかを熟知していると言ってもいい。なぜなら私の観察眼、人を見る眼は一流なのだ。


 彼は神様と言っても過言ではない"善人"である。





 彼は高校を卒業すると、都会の奥にあるかなーり都会の方の大学に行ってしまった。私の数少ない連絡相手なのに。


 なぜなら彼は絵を描く事が好きなのだ。他人に見せる為に絵を描くというより、自己完結。自身の納得がいくまで絵を描くという、生まれながらにして才能のある職人気質な絵師だった。


 私は彼の絵を見た時に、最大限に才能の不平等について嘆いてしまった。


 下手をすると、ピカソもダヴィンチも、土下座をし、逆立ち歩きをする羽目になろうが、彼に絵の(えが)き方を教わりたいと思うほどに彼の絵がうまかった。


 彼が絵をさらに学びたいと私に言った時にはこれ以上何を学ぶのかと疑問に思ったのだが、彼曰く「さらに深いところまで学びたい」と言われ、そういうものかと頭を捻ったものだ。


 それから約3年経ち、メールは「あけましておめでとう」か、「happy birthday」としか打っていない。しかし誠に不思議な運命か神様によって地元のラーメン屋で奇跡の再会を果たしたというわけである。





 奇跡の再会を果たした私と彼であるが、顔を見合わせた時にはお互いがお互いに譲り合うような、距離感自体を掴めない独特の感覚に襲われていたのだが、流石と言っていいだろう。彼は持ち前のコミュニケーション能力を使い私に挨拶をしてくれた。


 私自身はそこまでコミュニケーション能力が高くないので、彼の心遣いに心の中では滝の涙を流すほどに感謝をしたのだ。


 久しぶりの再会。20(はたち)の成人式以来の、マスクで見えない顔を見合わせながら話をした。


 彼は都会の奥の大学に行ってしまっていたので地元で会う事はないと思っていたのだが、都会の方には頼れる関係を築いた者は少ないらしく、流行病(コロナ)を恐れて実家に帰省してきたらしい。


 彼は神様に愛されたと言っても差し支えない人間なので、向こうに行ってから沢山の滑稽で愉快な体験をしてきたのだろう。聞いてみたらその予想は当たっており、私の想像を遥かに超える体験談を話してくれた。


 変人達との乱痴気騒ぎやら、山で一週間ほど遭難したり、カツオを釣りに行く悪友(彼は向こうで友人と呼べるか怪しいが、限りなく友人に近い関係性を持った人間と仲がいいらしい)に雁字搦めに縛られて強制連行されたりと、1年ほど部屋に放置された布団から出てくる埃のように、彼が口を(ひら)けば小説(フィクション)と言い換えても差し支えない体験が出るわ出るわ。


 ラーメンを食べ終わってなお、話が出てくるので近所の公園にでも行って話を聞くことにした。


 ベンチに腰掛けながら話を聞くと、ノストラダムスの予言以上に驚いた報告が彼からしてきた。


 彼にはなんと彼女がいるらしい。

 英語で言うとGirlfriend。世の中の友人以上のラインを超えた男女間の関係性のことを指し示すカップルと言うものに彼はなっていたのだ。


 頭に隕石が衝突したような感覚があった。彼は知る人ぞ知る超善人である。だが、彼自身積極的に他人と関わるような人柄(タイプ)ではないので、私の方が先に彼女を作っているのだろうと思っていたのだが、先を越された。私は今も尚、女性と付き合える兆候がないのだ。


 時系列では成人式の後、大学の同じコースに通っている女性らしい。性格は良く、顔はモナリザよりも美しいらしく、胸も世間一般の女性よりは遥かにあるものをお持ちの大和撫子という例えが的を得ている女性だと彼から聞いた。


 私はそんな都合の良い女性がいるか?と彼を疑った。たとえ彼がどこまで神様に愛されていようが、そのような女性と私は人生22年生きて出会ったことも噂も聞いた事がない。


 彼は新手の精神病を患ってしまったのかと心配をしたが、彼は彼女の写真を私に見せてくれた。


 なんと麗しい女性であるか!!


 私は初めて美人という言葉を表している女性を見たのだ。


 彼は精神病を患ってもいないし、絵の描きすぎで身体をキャンバスの中に埋めてきたような人間でもなかった。そして私は、限りなく少ない友人を疑ってしまった私の行動がどれだけ愚かであると、どれだけ罪深いものかを実感したのだ。


 さらに惚気話にまで発展して聞いてみると、なんと、彼は、彼女と、同棲を、しているらしい!!!


 私の脳髄が超新星爆発(ビックバン)を起こした。 同棲。それはとても親密な仲の、例えば乳繰り合うような関係までを超えた男女がする極めて神聖な事である。


 もしやもしやと思い、否、あのダイヤモンドの美しさに引けを取らない女性に情が湧かないとすると、私は彼の性別を疑ってしまう。半端(はんば)正解を知っているような質問を彼に問うた。


 童貞を卒業したのか?と、


 彼は首を縦に振った。


 彼は何度も言った通り、神様に愛されているような人物であるが、ここまで凡人と差をつくるのはいささか不平等ではないのか。何もこれほどまでに優遇する必要はないのではないか。


 あゝ羨ましい。


 その一言に尽きる。彼は小説の中、いやそれ以上の体験を現実でしているのだ。彼は私とは違う次元に生きているのだろう。そう思う事でしか、私は自我を保っていられないほどに嫉妬に(まみ)えていた。


 そのほかにも彼は惚気話を数時間に及ぶほどしてくれたのだが、私はそれを思い出し、読者諸兄(どくしゃしょけい)に話すと私の人生がどれほどまでに神様に愛されていないか、私という人間がゴミムシと同価値に思えてしまうほどに私は惨めな存在なのかを改めて実感してしまうので話すことを控えさせてもらう。


 ただ言えたことは、

 私は、久しぶりに彼と話をして心が折れるかと思った。


 否、折れたのだ。

ちょっと趣向を変えてみました。

感想、評価をお願いします。自分がどの程度の者なのか、第三者からの意見が欲しいのですm(_ _)m

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