横丁長屋小景2
内容の補足です
フガフガという台詞はオミという架空の人物が発する特定語です
小説内ではオミクロンとオミをしばしば混同します
また、オミクロン変異株は感染力がやたら強いが風邪以下の最弱株として扱われ
オミクロンに感染すると他のウイルスなり細菌を一掃してしまい
風邪も治ってしまう。さらにオミクロンは構造が不安定で一定時間経過すると
自壊してしまう、そんな設定で書いています。なにぶんフィクションなものでご容赦を
◎オミクロン登場
「八ツあん、南アはオミ株後感染者激減だとさ」
「なんでえオミ株でお開きってか」
「他の亜種コロを駆逐してんじゃねえのかな」
「オミ株が?」
「バカ強い感染力で一挙に広がってさ」
「なるほど。人体に取り付いたはいいが不安定で自壊したと」
「そうそう」
「そうじ屋か」
「フガフガ」
「よぉ。きょうもごくろうさん」
「フガ?」
◎マスク禍
「カズ君なんでマスクしないの」
「くるしいもん」
「みんなもガマンしてるのよ。マスクしましょ」
「やだ」
「わがままはいけません。さあ」
「やだ!」
「いいかげんにしなさい!」
「やだ!」
「この子押さえつけて」
「わあ」
「さあマスク」
ボコ!ゴン!
「痛っ!だれ」
「カズけえるぜ。こんな気ちげえどもに教わることはなにもねえ」
◎フロリダへ
「八ツあん、てーへんだ。松の野郎が」
「殴り込んだか学校へ」
「なんだ知ってんのか」
「ずっとカズ坊のマスクのこと心配してたからな」
「ひでえ教師がいるらしいぜ」
「コチコチのコロナ脳で治る見込みがねえんだとよ」
「でさ松の野郎、荷造りしてんだ」
「越すのかい。どこへ」
「フロリダ。実家があるってよ」
「え?えええ!」
◎惜別の辞
「おう熊も八も世話になったな。おらぁ行くぜ。子どものマスクはしゃれにならねえ。命かけても止めるぜ。けどよもう時間も手間も取られたくねえんだ。実家が寿司やってっからよ、俺は天ぷらだ。なあに意味なんかわからなくても英語ぐれえ喋れらあ。え、ワ?迂回すればへーきだぜ。遊びに来てくれ。あばよ」
◎舌禍
「松の野郎行っちまったな」
「おれも子供が小さきゃ考えるよ」
「化けの皮が一気に剥がれて気ちげえの世界だ」
「けどよコロ脳98%、黙って狂ってた方が楽だぜ」
「マスクだってかかあの面隠しって思や有難えかな」
ボコ!ガン!
「痛え。あ、おめえ。暴力は顔だけにしやがれ」
「!!」
「わあ!」
◎後日談、オミクロン錠
「痛てて」
「でえじょーぶかい熊さん」
「おミツが本気だすとこれじゃ済まねえ」
「手加減してそれかい」
「弱り目に祟り目だ。風邪まで引いちまった」
「風邪なら特効薬がある。買ってきてやらあ」
「すまねえな」
「ほいよ」
「え。オミクロン錠?」
「いま評判の丸薬だぜ。風邪もイチコロだとよ!」
◎オミクロン嬢
「熊さん、どこ行くんでぇ」
「八ツあんこそどこ行くんだ」
「いやちょいと風邪気味なんでオミクロンに」
「へーえ奇遇だねぇ。俺もさ」
「一緒に行くかい」
「あいよ。あれ、こっちだぜ。齋藤医院」
「やめときな。同じぼられるなら俺の方へ行こうぜ」
「おう待ちねえ」
「ここだ」
「え。なんでぇ。ピンサロじゃねえか」
「ここのオミ嬢は効くんだ」