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『第3回 下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞』シリーズ

雪だるまがとけたら

作者: 佐藤そら
掲載日:2021/12/13

 何かを好きになり、それ追いかける日々は楽しい。

 けど、自分でも分からないくらい、異常に惹かれていく瞬間は、どこか怖くもある。

 人はきっと、禁断に惹かれてしまう。

 それがいけないことであるほどに。

 

 今、わたしの手は先生のポケットの中にある。

 そっと握られた手を隠すように。

 

 

「先生、今日は帰りたくないな」

 

「いけない子だ」

 

 先生は、優しい声でそう言った。

 

 二つの雪だるまが、並んでこちらを見つめている。

 雪降る夜だから、先生はこうして手を繋いでくれている。

 

 

 

 恋は突然だった。

 昼食前、わたしは弁当を片手に理科室へ向かった。

 扉を開けると、先生が林檎を丸かじりしていた。

 

「え、何してるんですか?」

 

「昼飯だ。君こそ、どうしたんだ」

 

「教科書を忘れて」

 

「これか?」

 

 先生はクールで、眼鏡の奥の感情は読みづらい。

 けどこの時、教科書を手に少し笑った気がした。

 

 

「あ、あの、お弁当食べますか? 林檎だけではお腹すきますよ?」

 

 遠慮はしつつも断らない先生は、弁当をもぐもぐと食べてくれた。

 

 

「うまいな。これ、毎朝自分で作ってるのか?」

 

「はい。先生の分も作って来ましょうか?」

 

「何言ってんだよ」

 

 

 先生は弁当のお礼にと、もう一つあった林檎をくれた。

 

 

 わたしは勝手に先生の弁当を作るようになった。

 分からない問題を探しては、わざわざ質問しに行った。

 白衣姿や眼鏡をあげる仕草、横顔、笑い方、指や毛先までもが愛おしい。

 腕まくりはずるいし、その首筋にもドキッとする。

 気付けば、先生への想いがとまらなくなっていた。

 

 生徒同士の恋は許されるというのに。

 きっと、出逢い方が違ったらわたし達は罰せられない。

 全ては禁断の果実から始まったんだ。

 

 

 わたしは、いつも先生を振り回し困らせる。

 けど先生は、絶対に断らなかった。

 こうやって今日も、一緒に雪だるまを作ってくれた。

 

 

 夜道、車を走らせた先生が遠回りをしているのが分かった。

 

「冷えただろう。風邪、ひかないようにな」

 

「先生こそ。手、冷たかった」

 

「ああ。でも、寒いのも悪くないな」

 

 先生の口元が緩んだのが分かった。

 

 ねぇ、勘違いさせないでよ。

 本当は、振り回されているのは、わたしの方なのかもしれない。

 

 

 

「じゃあ、次は月曜日。学校でな」

 

 別れ際、先生はそう言うと、わたしの頭をポンポンしてくれた。

 わたしはもっと、先生に溺れてしまう。

 

 ねぇ、先生。

 あの雪だるまがとけて、春が来たら、わたしは先生の生徒じゃなくなるよ?

 そしたら、先生と日向を堂々と歩きたいな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 腕まくりはずるいですね…! "禁断の果実"第一印象がとても印象的で"わたし"に感情移入しやすかったです。 先生と"わたし"の距離感がロマンチックで、ドキドキしました。 春が待ち遠しいです。…
[良い点] これは素敵なラブ小説(*゜Q゜*) [一言] とても良かったです(*´ω`*)
[一言] (*^。^*) イケボで聞いてみたいです 手のぬくもりでジンジンしそうな気がします( *´艸`)
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