終わりへの第一歩
さて、後発組の私が「出題編」に夢中になっているなか、先発組は「解答編」の二章目にあたる『罪滅ぼし編』をプレイしていました。後から思い返せば、この時期が『ひぐらし』の原作におけるピークでした。同時に後退への道を一歩踏み出した「終わりの始まり」でした。
『ひぐらし』にはいくつかのキャッチコピーがあります。「正解率1%」が一番有名でしょうか。そのなかに「惨劇の正体は、人か祟りか偶然か――」というものがあります。『罪滅ぼし編』において、その正体の半分ほどが祟りのせいであると判明しました。
私からすれば、「祟りの可能性も散々示されていただろ」とは思いましたが、それは私が昨日今日始めたプレイヤーだからです。2年3年と公式掲示板、外部掲示板で議論をし、仮説を立てて多くの説を生んだ先発組からしてみれば不満でしかなかったようです。まさかの解答によって生まれた怒りは公式掲示板にぶつけられ、当時は荒れに荒れたとのことです。
この公式掲示板は普段は礼儀正しく使われていて、原作者である竜騎士07さんもちょくちょく書き込みをしていました。そして荒れ果てた掲示板に竜騎士07さんは以下のようなコメントを残しました。
「今回のシナリオは、トータル的に言って評判が悪いようですね…。期待してくださった皆さん、本当に申し訳ございませんでした。元々、この程度の作品なんです…。
竜騎士07が事故に遭って他界。
『ひぐらし』は永遠に未完で、結末をあれこれ論じながら幕。
という筋書きで、竜騎士07はペンネームを変えて、もう一度ゼロから同人活動を再開というのが、何だか全ての人に一番幸せな幕の閉じ方という気がしてきました。
泣き言ですみません…」
この書き込み以降、竜騎士07さんが公式掲示板に来ることはなくなりました。
しかし『ひぐらしのなく頃に』というコンテンツはここで踏みとどまります。
アニメの放送が開始されたのです。原作の拙い絵と序盤の寒い会話劇を丁寧にカバー。一番の売りであるホラー描写には更なる磨きをかけて、アニメ版『ひぐらし』は一大ブームを巻き起こしました。その勢いは「先発組」の不満をかき消すには十分な規模でした。
原作となるノベルゲーム『ひぐらしのなく頃に・解』はこのアニメブームの中で、無事完結することができました。人によっては「上手く逃げ切った」と思う人もいるでしょう。なぜか?『罪滅ぼし編』以降の解答編でもかなりのやらかしをしていたからです。
・「祟り」が擬人化されて主人公メンバーに加わる。
・この「祟りちゃん」が一言説明すれば、惨劇は回避できたという事実が判明。
・実は本当の敵は別にいて、そいつらは日本の裏社会に住む特殊部隊
・主人公率いる小学生・中学生連合がその特殊部隊に勝つ
他にも色々なやらかしがありました。しかしアニメによる大きなうねりは、これらに対する批判すらも小さな雑音程度に変えてしまいました。
謎解きは酷いし、出題編のようなホラー要素は薄まりました。シナリオには感動要素が山盛りで、それはそれで高ポイントなのですが、待ち望んでいたものではありません。とはいっても、なんだかんだで上手いこと着地できたのではないでしょうか?プレイしてしばらく間を置いたら、私もそう思えるようになりました。しかし納得いっていない人間が一人いたのです。原作者である竜騎士07さんです。