新しい風、新しい星、新しいホラー
「かなり面白いゲームがあるんだけどさ、どう?やってみない?」
基本的に寡黙で、喋り出す時は唐突な一個上の先輩が、またも唐突に切り出してきました。話を聞くとそれは同人ゲームで、第一章は無料でプレイできるとのことでした。
「あー、序盤にある日常描写がとんでもなく痛いんだけどね。それ耐えれば、マジで面白いから」
先輩の言葉に一抹の不安感を覚えながらも、帰宅してすぐにダウンロードしてゲームを始めました。
サウンドノベルゲーム『ひぐらしのなく頃に』
舞台は80年代前半の山奥の寒村。主人公である前原圭一は都会から引っ越してきた中学生二年生。
序盤は本当に寒い掛け合いのラッシュで、先輩の助言がなければ「そっ閉じ」していたかもしれません。加えてキャラクターの絵もビビるくらい酷い出来でしたが、気づいたら慣れていました。
転機となる殺人事件。ここを境にゲームの空気は一変します。
豹変する友人。隠されていた村の過去。狙われる命。
第一章である『鬼隠し編』は前原圭一の死をもって終わります。
プレイ後の私は見事なまでの放心状態だったと思います。
いやあ、怖かった。多くの謎がありましたが、「解こう」なんて気にはなりません。得体の知れないモノに対する恐怖心があるだけです。本当に怖かったです。昼にプレイしていて良かったとすら思いました。
「先輩、やりましたよ。ひぐらし」
「そう」
「後半、めっちゃビビりながら読みました」
「んー」
今日の先輩はいつも通りの寡黙な男です。
「レナが部屋の外で電話を聞いてたシーン、あれが一番ヤバかったですね」
「あー、あそこなー」
「前半は確かにきついモノ有りましたけど」
「どの章も、だいたい序盤はアレだよ。続き持っているけど、やる?」
その言葉を待っていました。ありがとうございます。
さて、この時点で『ひぐらしのなく頃に』はまだ完結されていませんでした。正確に書くと『ひぐらしのなく頃に』は全四章で完結しています。これは「出題編」と呼ばれています。そして「解答編」となる『ひぐらしのなく頃に・解』がこの時まだ全四章のうちの二章までしか発表されていませんでした。
私は先輩から「出題編」をまとめたディスクを借りて、残りの『綿流し編』『祟殺し編』『暇潰し編』を時間を忘れるようにプレイしました。体験版に負けず劣らずの怖さでした。夜にプレイすることを避けるほどです。しかし楽しい時間であったことも間違いありません。
記憶を消してもう一度楽しみたいゲーム。
私の中では『ひぐらしのなく頃に』が未だに一位です。