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第15章 ② 神と人

第15章 ② 神と人


さっきから至極当然のようにちょいちょい異世界言語入ってるけど、自分の基本言語(デフォルト)は日本語なんですが。誰か言語設定いじりましたか?


「あの、さっきからちょっと理解できないことが多くて脳内処理が追いついてないんですけど、いくつか質問してもいいですか?」


「ええ、どうぞ。そのためにここにお呼びしたんですから。」


「さっきから、ちょくちょく言ってる謎の言葉はなんですか?それと教え子って、自分は何か教えて頂けるんですか?」


「ああ説明もせず、すいません。さっき少し話していたのはヌイヤ語です。私も少ししか話せないので、アペフチには脳内に直接話しかけて貰っています。でないと、私の方が理解できないので。それと、ヌイヤ流のヌプルの使い方をこれから中森君に学んで貰おうと思っます。そしてその師匠はアペフチ。その弟子である私、そして君。つまり君は私の弟弟子にあたるわけです。」


「はぁ。で、そのヌイヤ流のヌプルってなんです?蒟蒻ゼリーの商品名ですか?」


「フフッ、確かに食感は柔らかそうだ。しかし食べ物のことではありません。日本語なら霊力のこと、今まで学んできた神の真似事ではなく、神そのものになるんですよヌイヤ流ではね。」


「はっ?神の真似事って、自分達は神術が使えるわけではないですよ?あくまでも、霊力を札とかに込めて術式を構築して、現象を発生させる。神様はそんなのお構いなしに、現象を発生させる。普通に考えて人の霊力規模で、神術のように行うのは到底無理です。その点からも人が使う術を神術と呼ぶことはしません。神の真似事なんて恐れ多いですよ。」


「確かに。神術、ヤマトの理論ではね。でもヌイヤの理論は全く異なる。霊力の根源が異なるからね。君は霊力の根源を何だと思いますか?」


「霊力の根源ですか‥やはり個人の魂ですかね?」


「確かに。ほとんど正解と言っていいでしょう。正確にはヤマト流は魂から出る思いを霊力の源としているんです。故に空っぽの魂を幾ら集めても、霊力の強化はできない。強い思いが必要なのです。そしてヤマトの神は信仰心という名の思いを集めて自らの霊力とする。つまり元々個人対複数の関係なんです。それなら神に勝てる道理はないことぐらいわかりますよね?」


「まあ、そりゃそうですよね。」


「ではこの前の私はクグス神の神使を抑えつけることに成功しました。これは普通ではありえないことですよね?神使であるとはいえ、彼らも神と近しい存在。霊力の貯蔵量も人の比ではありません。それを抑えつけるにはどうすればいいか。その答えが、自ら神になることなのですよ。」


「ん?つまり、神と同等の霊力の貯蔵を可能とするってことですか?それは色んな意味で不可能なんじゃないですか?魂の器に入る霊力量は決まってる、それが大きく変化することはないはずですよ。」


「いえ、そもそもその考え方から違うのですよ。ヌプルの根源は自然そのもの、世界そのものなんですよ。全てにヌプルが宿り、そのヌプルは世界を廻る。故に人の思いに依拠するヤマトの霊力とは異なる。」


「ん?つまり、人の魂の器の大きさは関係ないのですか?」


「そうです、我々はヌプルの行先を導いてあげるだけ。自然に起こることを自らのヌプルを媒介として、外に出す。自らにヌプルを貯めることは必要ないんです。」


「それは‥驚きですね。しかし、その自然にあるヌプルを感じることが出来そうにないんですが。」


「口で説明すっども、わからねぇ。おめえが見せてやるんが、早い。」


黙っていた老婆が立ち上がると、外の広場へと向かう。


「らしいです。私達も外に出ましょうか。実践して見せます。」


「わかりました。お願いします。」


外で待ち構える老婆が杖で地面を叩くと、灰色の塀はパズルの用に崩れて変形しては変化していく。さっきまで小さな中庭だったが、あっという間にサッカーコート程の大きさにまで広がっていた。


「では、お見せします。まずは自然に流れるヌプルを見つける。」


宮田さんは目を閉じて両手を開くと、天を仰ぐ。


「そして、集約。」


手を頭上で合わせる。すると辺りは曇り始め、黒雲が空を覆う。雷鳴が轟き始め、空気もピリピリと張り詰めているのがわかる。加えて大気の振動に合わせて、地面も小刻みに振動している。


この間ほんの数十秒の事だ。


これほどまで短時間に起きる天候の変化ではさすがの気象庁も、予測不可能だろう。こんなことを現実世界でやったら、気象衛星ひまわりだってびっくりの現象だ。


「そして、解放!」


宮田さんがそのまま両手を振り下ろすと、龍のような鳴き声とともに、稲妻が地面へと目掛けて落ちた。


その稲妻によってもたらされた衝撃波が鼓膜や心臓を突き破らんとする。


あまりの力に自分は倒れ、その影響で全身が痺れている。


空を見上げると一発の稲妻を落とした空は、薄曇りから変化し、もう既に日差しが戻り始めていた。


「す、凄い。雷を操った。」


自分自身手の震えが止まらない。恐怖と電気、その二つの影響だろうが、とても人の起こせる規模の術式ではない。


「まあ、まあやな。しかし大袈裟すぎるな、あの動きは。あれでは時間かかり過ぎてダメだぁ。」


「そうですね、私自身もこれは実践で使えるようなものではないですね。少し見栄をはってしまいました。」


「あの、今のはどうやって?」


「今のですか?ヌプルは全ての自然に存在します。この空気にもね。私は空気中の水蒸気のヌプルに干渉して、この現象を起こした。結局自然界で起こる事しか起こせません。故に奇跡の若返りとかはヌイヤ流ではできませんね。自然の流れに逆らうことになりますから。」


「それって、ヤマト流なら奇跡の若返りも可能ってことになりません?」


その言葉に老婆と宮田さんは顔を見合わせる。


「教えてやれぇ。奇跡を求める奴らの話を。」


眉をひそめた老婆はそう言い残し、杖をついて中庭を元通りにすると、建物の中へと戻ってしまった。


「どうやらアペフチカムイの機嫌を損ねてしまったようですね。」


「えっ!何かまずかったですか?」


「まあ、仕方のないこと。誰しもが考えることです。それがヤマトの神、強いては神々を崇拝する人達と願いでもあったわけですから。」


「その、何かすいません。要らないことを言ってしまったようで。」


「いえ、決して悪気があったわけでないことはアペフチもわかってます。だからこそ‥難しいところなのです。中森君、この際だから昔から伝わるお話をしましょう。神と奇跡を追い求める人達の話です。」



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