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第13章 ⑤ 触れられない心

第13章 ⑤ 触れられない心


「君。ここでなにしとるん?傘は?」


如何にも体育教師ぽい、図体のでかい男が遊具の自分達に屈んで話しかけてくる。


「えっと。雨宿りです。はい。」


「猫もおるんか?飼い猫か?それとも野良?」


「あ、コイツは飼い猫です!マルって言います!」


「ほうか。近所から何やら見慣れない若いのがいるから、見てくれゆうて電話があっての。君、歳いくつかね?見るに中学生ぽいが、うちの生徒に用か?」


傘から覗く男性教師は疑惑の目を向けてくる。


「あ、あのぉ。実はこの学校の生徒に従姉妹がいまして。その子に会いに来たんですが、いかんせん道に迷ってしまって。」


自分は咄嗟にパターン3の系列にあったシュミレーションを頭から引っ張り出す。


「ほうかぁ。それはえらい大変や。」


「そうなんです。出来たら道とか教えて欲しいんですが。」


「そんなら、うちの学校来んしぇ。道案内や親御さんと連絡とるくらいは手伝ってあげるで。」

「ほ、ほんとですか!ありがとうございます。」


「じゃあ、傘使いんしゃい。濡れるといけん。」


男性教師は持ってきたもう一つの傘を貸してくれた。借りた傘をさして、遊具を出ると、雨足はより強まって来ているのを感じる。それに、マルは自分の肩に乗り、頭に手を掛けてくる。余程雨に濡れるのが嫌なのか必死だ。すると脳内にテレパシーで話しかけてくる。


「おい!これじゃほんとにシュミレーション通りじゃないか!どうすんだ!こうなったら、さっさと逃げてズラかるぞ!」


「いや、大丈夫だ、こう言うときこそ冷静になれ。この場合のシュミレーションもしてある。自分に任せてくれ。」


だてにシュミレーションを繰り返して来たわけではない。失敗の中でも最悪のシュチュエーションでも乗り切る方策は考案済みだ。


このパターンはパターン3の42。「災い転じて福と成す。思い切って先生から聞いてしまおうパターンだ!」


「ってな具合だ。だから安心しろ。」


「いやテレパシーと内心がごっちゃになってるからこっちに伝わってないぞ。」


「あっ…そうなのね。やっぱり難しいな。—とりあえず任せといて。」


脳内会話の修練なんてやった事ないのだから、しょうがないと許して欲しいところだ。


とりあえず、パターン3の40と41では保護者の件で詰み。になったので、そこは気をつけねば。


「そういや、君の名前まだ聞いとってなかったね。なんて言うん?」


「中森翔です。14です。」


「ほうか!やっぱり中学生か!ほやったら保護しておいてよかった。近頃は変な奴もおるし。そんならそこで待っといくれるか?猫は流石にそのまま校内に入れるとマズイんや。」


裏門から校内に入って職員玄関前で待たされる。すると、どこで手に入れたのか、野生動物捕獲用の檻を持ってくる。


「飼い猫じゃ、可哀想だが。これに入れておいてくれるか?そしたら、とりあえず中には入れるやで。」


マルの顔を見ると渋い顔をして断固拒否の姿勢を見せていたが、それを無視して少し強引に檻に押し込める。猫らしく嫌がって抵抗を見せる。


まあ、たまにはこう言う思いをするのも悪くないだろう。なんだか割と気持ちがいいのは否めない。しかしマルもテレパシーで抗議してくる。


「ふざけんな!神使を野生のアライグマとかと一緒にするな!」


「なあに少しの辛抱だろ?それに檻に閉じ込められた猫もカッコいいぞ。なんとなく。」


「なんとなく。なんて理由には騙されないぞ!猫を監禁なんて、アニマルウェルフェアの侵害だ!保護団体に電話してやる!シャー!」


檻を前足で描いては暴れるし、テレパシーでワーワーと煩いが気にしない。


男性教師はそんな中でも猫を意に返すこともなく職員室まで案内してくれる。


職員室に入った自分はとりあえず、椅子に座る様に指示される。自分は言われた通りに座って待つだけだが、周りを見るに職員室には日曜日とあって他には誰もいない。


乱雑にされたデスクと綺麗に整えられたデスクと、様々だが、やはりそこには先生の性格も現れていそうだ。数分の時があったが、男性教師は来客用のお茶を入れて戻って来る。


「すまんね。待たせて。んで、従姉妹言うちょったけど、なんて名前なん?ほんとにうちの生徒なん?」


差し出したお茶と交換に情報を引き出そうって腹か。いいでしょう、それも想定内通り。ここぞとばかりにシュミレーションの成果を見せる。


「凪、相田凪って言うんです。昔はよく会っていたんですが、最近連絡も取れなくて、心配で来たんです!初めて来るもんで迷ってしまって。」


どうだ!この演技!俯いていたかと思いきや、渡された紙コップを握りしめて、切々と目で訴える!そしてセリフも、凪と言う名前を言ってからフルネームを言う。


これは、いつもは下の名前で呼んでいて知り合いですアピールをし、かつ最近連絡取れなくて心配してるんです情報を入れている。これで相手は勝手に親族の人間だと思う!まさに完璧な攻略法のはず!だ‥


「ほうか。相田か。相田の家の住所はわかっとうか?」


顎をさすってる反応から見るに、パターン3の42のシュミレーションは悪くないようだ。


「ええ。でも詳しい住所はわからなくて、この市の赤井町のコーポサテライトって所らしいんですが。」


これで、シュミレーションでは地図を取り出して探してくれる。若しくは、彼女の生徒情報を探して教えてくれるはずだ。さあ、さあ!ギブミー!インフォメーション!と目で追い討ちをかける。


「んーん。わからんなぁ。とりあえず交番教えておくから、そこで聞きんしゃい。んで、君の保護者は?県内か?それとも京都とかかのお?」


拍子でずっこけそうになる衝動を抑える。まさかの交番に聞けだと?全く慮外なことを言ってくれる。全く教えてくれないし、しかも保護者聞かれるのは詰み確定じゃん!


やはり自分の演技力では限界が‥。このパターンでの最後は親に電話して貰い、そんで釈放しかない。それが嫌ならば、また権力者に頼るしか‥。


そう観念しかけていた時、さっきからの処遇に心中怏怏なマルが話しかけてくる。



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