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第2章 ③ 不思議と遭遇

第2章の3 不思議と遭遇


「はい、って三上かぁどうした?」

「何その態度、ざんねーん、って感じ?」

「いや別にそういうわけじゃないけどさ、何か用?今ちょっと立て込んでるんだけど。」


動揺とリビング方向の視線を隠すように話す。


「いや特に用ってワケではないんだけどさぁ。昨日どうだったかなぁと思ってさ。」

ヒカルは後ろのリビングの方を気にする素ぶりを見せる。自分はその視線を紛らわそうと手足、胴体を大いに使う。


「いやいや!昨日!そう昨日はねぇ!特に!何も!なかったよ!」


自分はヒカルが覗くたびに視線の間に入る。これではかえって不信がられてもおかしくない。


「ねぇ、何かさっきからおかしくない?誰か家にいるんでしょ?ねぇ?」


彼女の勘は鋭い。と言うより自分の芝居臭さ故にヒカルの疑念が増しているようだ。


「いやぁ。おかしいなぁ。はは。今日は体の調子が良くてさ。こう、何か素早い動きに反応しちゃうみたいな?」


全く我ながら苦しい言い訳にも程がある。それにも関わらず以外な反応が返ってくる。


「分かった。今日はもう帰るわ。」


ヒカルはその言葉と共に一旦背中を向けて自分を油断させると、帰ると見せかけて華麗なターン!と同時に無駄な動作など一つも無く、瞬時に靴を脱ぐと自分をかわして、家へと入っていく。ラインを突破され見事タッチダウンを奪われた自分は玄関で大の字になっては、這いつくばっていた。


「あれ!何コレ!かわいい!ネコじゃん!」


「ああ、これでさらにややこしくなる。今日はろくな日じゃない。」と内心呟きながらも勝手に入っていったヒカルの靴を揃え、リビングに戻る。


「まったく、勝手に入るなよ。人の家だぞ。」


もっとも、自分が文句を言ってもヒカルが受け付けた試しはないのだから、言うだけ無駄だが。


「なんだぁ。もしかして昨日ってこのネコちゃん見つけただけ?こんなかわいいネコなら何で、はやく言ってくれないの?」


憎らしい事にあの黒猫がネコらしく撫でられている。


「いや別に隠してたワケではないし。それに‥」


と言おうとして止める。それにこの猫しゃべるんです。なんて言ったら絶対笑われる。


「それに?何?」

「いや‥あれだよ。まだワクチンとか打ってないからマダニとかいるかもしれないし。」


苦しいが、この程度の言い訳しか思いつかないのだ。これでは将来営業職には向かないだろう。


「ふーん。そう。」


存外鈍い反応のヒカルは、黒猫のアゴをかいてやると黒猫は気持ち良さそうに身を委ねている。ふざけた奴だ。するとヒカルが


「で?名前は?」

「ぇ?名前?」


正直他の事が謎だらけ過ぎて名前を聞いてなかった。それくらいこの黒猫は謎な存在なのだ。


「いや飼うんでしょ?そしたら名前ぐらいつけたでしょ。」


ヒカルに言われたが全く分からない。こいつの名前を思念で思い浮かぶのでは?と深呼吸をして目を閉じてみるが何も降りてこない。否応なく沈黙の時間続くが、それに耐えきれない。そこでとっさに公共の教育放送でお馴染みの落第忍者の銭ゲバキャラ。彼の名前と見たままを組み合わせた名前を言う。


「ああ、ネコ丸。」

「はぁー。何それ?もうチョット何かセンスある名前ないの?」


ヒカルは盛大に時間を消費したその結果に納得がいかないようだ。


「いや、そんな事言われても。前居た犬が虎丸だったから。それでネコ丸?って感じ?」


この事実に関しては真実だが、ネーミングの由来に関しては前述の通りだ。


「はぁ?それだったら。そうだなぁ‥」


ヒカルは黒猫の顔を覗き、暫し考える。すると黒猫の瞳に映るヒカルの顔が微笑むのが分かる。


「マル!そうだマルがいいよ!なんか顔がマルって感じだし。」


さっきはこっちのセンスを批判しといて、自分は感覚で名付けるのは良いのだろうか?まあそんな事はどうでも良い。とにかく黒猫が余計な事をしないうちにヒカルを帰そうと画策する。


「はい、そしたらもう帰ってもらっていいですか。」

「えぇーもうチョットくらい、良いじゃん。ねぇ。マル君。」


黒猫は命名主に感謝を伝えるように、一般的な猫としてじゃれている。


「そうだぞ。もうチョットぐらいは遊ばせろ!それとネコ丸ってセンスなさすぎ!」


黒猫は嘲笑を浮かべてカケルに話しかけてくる。


「え?ウソ?しゃべった?」


その声にヒカルが驚いたように黒猫を見つめる。というより、あいつやりやがった。余計な事はするなって言ったのに。


「はい、はーい。はい!終わり!さて帰りましょう。ね!帰りましょう!」


抱きかかえていた黒猫を奪い、無理やり、なかった事にして帰そうとする。


「チョット!今しゃべったじゃん!ねぇ!」


明らかに疑ってるヒカルの背中を押して玄関へと追いやる。


「え?何が?なんも聞こえなかったよ!いやなんも!ホラ、バイバーイって!」


自分は抱っこした黒猫に手を振らせる。


「おい、俺は何も悪くないぞ!俺はちゃんとカケルだけに話したはずなのに。こいつ俺の言葉が聞こえてるみたいだ。」


また話しかけてきたので頭の中で黒猫に話しかける。


「どうゆう事かはわからないが後で聞くからとにかく今は黙ってろ!」


脳内会話するもそれでも聞こえるのかヒカルは喜色満面だ。


「ほら!またしゃべってた!いま!」

「いやぁ、おかしいな。俺には聞こえてないけど。たぶんあれだ!空耳!そうだよ空耳。」


無理やりヒカルをリビングから追い出し、玄関へと押しやる。


「え。チョット今絶対しゃべってたって。しかもカケルに話しかけてた。」

「はい、はい。じゃあね。用事があるならスマホでどうぞ!じゃあ!」


ヒカルに靴を持たせ外へと締め出す。鍵をかけて締め出されたヒカルは


「まったく。絶対しゃべってたし。怪しいなぁ」とブツクサ文句を玄関先で言っていたようだが素直に帰ってくれたようだ。玄関前の人影が居なくなったのをしっかりと確認してリビングに戻る。


「ふぅ~。はぁ。で?さっきのは何だよ?」

「わかった。でもとりあえず、降ろしてくんない?」と言われ、

「ああ、ごめん。はい。」抱きかかえていたのを床に降ろす。

「いやはや、普通は俺の声は俺が意図的に話しかけてない限りは聞こえてこないはずなのに。何であの子には聞こえたんだか。」

「え?つまり、お前がワザとやったんじゃないの?」

「当たり前だ!俺だって面倒事は御免だ。わざわざそんな事しない。」

「そしたらなんで‥」

「まあいい、あの子は特別なんだろうし。そういう例外はちょくちょくある話しだ。」

「そういうもんなの?まあいいやヒカルにはテキトーにごまかすとして、話しの続きだけど。」


と話してると玄関からまた音がする。今度は鍵を開ける音がする。爺ちゃんにしては帰ってくるのが速すぎる。とすると、ばあちゃんだ。玄関からスタスタ歩いてばあちゃんがリビングに入ってくる。するといきなり、


「カケルかい?神使とは挨拶できたかぇ?」とばあちゃんが話しかけてくる。

「え?は?なに?ばあちゃんこの黒猫の事知ってんの?」

「知ってんも何も、首飾りには神使が宿ってんのは知っとったが。」

「おお、ここのやっとまともな奴か!全然こいつ話知らないじゃん。ちゃんと話しておいてくれないと困るよ。」


相変わらずの上から目線で話す。するとばあちゃんは


「ずいぶん元気がいいねぇ。」と聞きながす。というか、無視してる。

「いや、まったく話聞いてないし。」と黒猫が呆れているのを見て、自分が代わりに聞く。


「どういう事?ばあちゃん?ばあちゃんこの黒猫の事知ってるの?」と黒猫を指さす。

「まぁのぉ。お前さんにはいつか話さないとはいけないとは思ってたんだがねぇ。どうにもタイミングがなくてね。」

「そしたらコイツはツトメの事も知らずにここまで生きてきた訳か。」


と黒猫は面倒くさそうに話す。


「まあ、なんじゃ、そしたら今日、お前に話す時が来たようじゃな。」

「え?何そのツトメって?」

「そうじゃな。まずうちの神社の祭神は分かっとるな?」

「そりゃ、クグスの森に住む、木の神様だろ。」

「そう、代々クグス様を祀ってきた。だがな、我ら中森家はクグス様を祀る事だけが仕事ではないじゃ、ツトメという数十年、いや数百年に一度の大事な仕事があるんじゃ。」


数十年と数百年はだいぶ差がある気はするがそこはスルーして話を続ける。


「いや、だから、そのツトメって何?」

「まあ、焦るな、ツトメとはな‥」と言ったところで少し間をあける。

「ツトメとは‥?」

妙な間合いに自分にも緊張が走る。固唾を飲んでその次の言葉を待つと、その言葉の続きは意外なものだった。





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