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第4章 ⑥ ツトメに挑戦?

第4章の6 ツトメに挑戦?


「あなた‥それ、どこにしまってたの。ねぇ。」


静かに周りを凍りつかせそうな冷徹な声に、怒りが含まれているのは言うまでもない。声の主の方へと体を向けると、熱狂に浸っていたニニギノミコトも冷静さを通り越して、血の気が引いているのが分かる。


「あ、ぇ、とこれはぁ。なんかさー。販売店の人がうるさくてさぁ。今月ノルマがピンチだから、どうしてもって言われてつい‥」

「買っちゃったんだ。ねぇ、そうでしょう。あんなに、神には機械なんて要らない。神への冒涜になるから一つ一つ丁寧に作るって言ってなかったかしらぁ?あれはうそだったのかしらぁ?」


絶対的な力の前にひれ伏すのが人間の役割なら、今がその時だと震える四肢が教えている。


「い、や、そ、そのぉ。働き方改革の一環でして‥」

「ハタラキカタカイカク?何言ってるの?神でしょ。神使でしょ。何を甘えてるの?働き方を改革する前に、貴方の脳内を改革しなさいよ。どうしたら、そんな物をこの精神世界に持ち込んで使う、愚か者がいるって言うの?」


冷徹にあくまで言葉の力でニニギノミコトを真っ二つにしているこのお方はニニギノミコトの妻、コノハナノサクヤビメである。補足すると単なる美人ではなく、超絶美人である。以上!口は禍の元。これ以上を語るのはこわ‥余程の覚悟を必要するため、ここで述べることは控えておこう。


この後、妻であるコノハナノサクヤビメにこっ酷く怒られたニニギノミコトは、すっかりテンションだだ下がりのため、田植え作業は延期となってしまった。


翌日仕切り直して田植え作業を行うも、すっかり廃人と化したニニギノミコトにはヒカルの巫女さんパワーも効かず。そのおかげで、田んぼの上空も曇天模様が続いていた。


「なあ、これってマズくないか?だって、いざとなったらニニギノミコトに成長度合いを調整して貰うのに、このままだと、それも‥」


心配そうにニニギノミコトに目をやるが、体育座りで落ち込んではぶつぶつと呟いている。これは相当重症だ。


「それはそうなんだけど、だってあんなにガッツリ怒られた大人‥てか神様見たことないから、励まし方もわかんないよ。」


頼みのヒカルにも手に持った大幣(おおぬさ)を振って断るほどだ。これ以上の治療は難しく、自然治癒を待つ他無い状態のようだ。それならいっそヒカルにも応援団の一員としてでは無く、少し手伝ってくれよと言いたいが、巫女の格好の彼女にさすがにそうは言えず、深いため息だけが漏れる。


「いやぁ、三上でダメなら俺らが励ますのは到底無理だしなぁ。」


案外まともな事を言うツヨシに賛同すると同時に、(てっきり農機具の歴史、特にケボタの創業者の半生を語り合い、情熱を取り戻そう!とか提案すると思っていたのだ。)こんな重労働をさせても一生懸命なツヨシには本当に頭が下がる思いだ。誰かに見習って欲しいものだが。自分も含めて‥


「おい、あれをどうにかしろ!このままじゃ、この稲もダメになっちゃうぞ!」


マルの神様をあれ発言したのはどうかと思うが、稲がダメになるのは目に見えている。

どうしたものかと、思案しつつ手を動かす。

何せ人手はない上に、広い田んぼを手作業でやるんだから、腰も限界になってきていた。


「あ、もしかしてさ、田植え機もあるんじゃない?」


ツヨシの発言は自分にとってみれば、救いだった。腰を起こして、姿勢を戻すが、確実に明日は腰がやられてるだろうなという音がボキッと鳴る。


「た、確かに。あのトラクターもあるなら。これは‥しかし、あったとしても使えるかは‥問題だな。」


腰の痛みからして、あと30分持つかどうかの勝負だ。もうダメかと諦めかけていたところ、ヒカルが動く。



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