プロローグ
プロローグ
さっきまでの雨が嘘のように止んだ。
森の木々から上がる水蒸気がまるで呼吸するかのようだ。
その呼吸に自分の息を合わせるように息を吐く。
しばらくすると雲の隙間から太陽が顔を出す。その光の筋は自らの呼吸に合わせるように広がり、地上に虹を架けた。
「ねぇ、ねぇ虹ってさあ、どうしてできるんだろね?」
カケルは私に尋ねた。カケルと繋いだ手の温もりを感じつつ、私は上を見上げてフゥーとまた息を吐く。
少し間があって私は雨上がりに架かる虹を見てカケルに言った、
「どうしてだと思う?お父さんはねえ、こう思うんだ‥。」
「違うよ、虹は空気中の水滴に太陽の光が屈折して虹が見えるんだよ。ホントは昔に調べたから知ってた。」
そう言われた私は、これは一本とられたなと、苦笑しながら空に手をかざしていた。
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何故かあの後、父の言った言葉だけが、イマイチ覚えてない。
記憶にぼんやりと霧がかかっているようで、父さんがなんて答えたのか、わからずに夢から覚める。
優しくて、強かった、思い出の中の父さん。
それを今になって思い出すなんて。
今思えばこれも何かのお告げみたいなものだったのかもしれない。
父が亡くなってもう6年が経つ。それからの生活は一変した。
僕と母さんは母方の祖父母の家で一緒の家に住むようになったのだ。
母方の祖父母の家は代々神社の神職を勤めていた。
父さんは婿養子になったにも関わらず、神社を継ぐことはせずに、サラリーマンとして普通に働いていたし、出張も多いバリバリ系の人間だった。
だから神様とは縁遠い生活をしていたし、もちろん自分もそのはずだった。ここにあいつが来るまでは‥